#217 「日本マクドナルド事件」東京地裁(再掲)
2008年10月1日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第217号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【日本マクドナルド(以下、N社)事件・東京地裁判決】(2008年1月28日)
▽ <主な争点>
ファーストフード店の店長の管理監督者性
1.事件の概要は?
本件は、N社が全国展開しているファーストフード店の店長であるXが、労働契約上、労働基準法(以下「労基法」という)第36条に規定する労使協定が締結されるなどするまで、法定労働時間(労基法第32条)を超えて労働する義務を負っていないことの確認(以下「請求の趣旨第1項」という)、未払いの時間外割増賃金および休日割増賃金の支払いならびに付加金の支払い等をN社に対し、求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<N社の概要およびXについて>
★ N社は、全国に展開する直営店等で自社ブランドのハンバーガー等の飲食物を販売することなどを目的とする会社であり、平成17年12月末日現在の店舗数は3802店(そのうち直営店は2785店)である。
★ N社の営業ラインのランク付けは、(1)マネージャートレーニー(入社時からセカンドアシスタントマネージャーに昇格するまでの身分)、(2)セカンドアシスタントマネージャー、(3)ファーストアシスタントマネージャー、(4)店長、(5)オペレーションコンサルタント(以下「OC」という)、(6)オペレーションマネージャー(以下「OM」という)、(7)営業部長、(8)営業推進本部長(代表取締役の兼務)からなる。
★ 19年9月末日現在のN社の従業員数は、店長より上位の社員が合計277人、店長が合計1715人、アシスタントマネージャーおよびマネージャートレーニーが合計2555人、アルバイト従業員であるスウィングマネージャーが合計1万9870人、クルーが合計10万1152人である。
★ Xは、昭和62年2月、N社に社員として採用されると、同年7月にセカンドアシスタントマネージャー、平成2年11月にファーストアシスタントマネージャー、11年10月には店長にそれぞれ昇格した。
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<店長の権限および職責等について>
★ 店長は、前年度の実績を基に作成した店舗の損益計画を考慮しつつ、店舗のアルバイト従業員であるクルーを採用して、その時給額を決定したり、クルーのスウィングマネージャーへの昇格を決定したりする権限を有している。また、店長は、クルーやスウィングマネージャーに対する人事考課を行い、その昇格を決定する権限も有している。
★ 他方、社員の採用権限は店長にはなく、社員の昇格についても、一定の基準を満たす社員を店長が推薦し、OCがこれを決裁することで決定されている。
★ 店長は、毎月、店舗従業員の勤務シフト表を作成してN社に提出し、この作成に併せて店長自身の勤務スケジュールを決定している。
★ 店長は、N社から送付された協定書の雛型に則り、同社を代表して、店舗従業員の代表者との間で、時間外労働等に関する協定を締結したり、就業規則の変更に関する店舗従業員の代表者の意見を受領し、労働基準監督署長に就業規則を変更した旨の届出をしたり、従業員代表との間で賃金控除に関する協定書を締結したりする権限を有している。
★ 店長は、本社が店舗の前年度実績から作成した売上予想に基づき、次年度の店舗の売上予想や予算等を記載した損益計画を作成し、これを本社に提出する。なお、店長が作成した損益計画は、自ら定めた努力目標という位置づけであって、ノルマというものではなかった。
★ 店長は、店舗の支出のうち、食材の仕入れ原価、食材を廃棄した分の費用、アルバイトの人件費、電気代、ガス代、水道代等に関し、決裁権限を有している。また、店舗の販売拡大のため、自店舗の商圏や競合データの収集、分析等を行う職責を負い、販売促進のため、20万円未満の範囲で、他社社員向け優待カードの発行、イベントの協賛、クーポンの配布、ポスターの掲示、金券の発行等の販売促進活動を実施する権限も有しているが、その実施に当たっては、あらかじめ本社に企画書を提出し、その承認を得る必要がある。
★ 以上のほか、店長は店舗や商品の衛生管理、店舗の安全管理、店舗の金銭や原材料の管理、近隣の商店街との折衝等を行う職責を負っている。
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<店長の勤務態様等および就業規則の規定について>
★ 店長は、OMエリアやOCエリアごとに開催される店長会議に参加するが、これらの会議では、N社の営業方針、営業戦略、人事等に関する情報提供が行われるほか、店長から各店舗の成功事例の説明がされたり、互いの店舗経営について意見交換が行われたりすることもある。
★ N社は、出退社時刻・時間外勤務一覧表あるいはパソコン上の勤務表を用いて店舗従業員の労働時間を管理してきたが、上記出退社時刻・時間外勤務一覧表や勤務表には、店長も自身の出社時刻や退社時刻を記載、入力する運用がされていた。
★ 16年4月に導入されたN社の報酬制度によれば、管理監督者として扱われている店長には、管理監督者として扱われないファーストアシスタントマネージャー以下の従業員とは異なる勤務体系が適用されている。
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