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#12 「東谷山家事件」福岡地裁小倉支部(再掲)

2003年11月5日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第12号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【東谷山家(以下、H社)事件・福岡地裁小倉支部決定】(1997年12月25日)

▽ <主な争点>
髪の色を元に戻すよう指示されたことに従わなかった茶髪の社員に対する諭旨解雇

1.事件の概要は?

本件は、トラック運転手としてH社に勤務していたXが髪の毛を茶色に染めたことに端を発して、髪の色を元に戻すよう再三にわたり指示、説得されたが、これに従わず始末書も提出しなかったため、同社が諭旨解雇* をなしたことの効力が争われ、Xが従業員としての地位および賃金仮払いを求めた事案である。

*「諭旨解雇」……説得に応じなければ懲戒解雇というような強い圧力をもって退職を迫るもので、退職勧告とは若干趣が異なる。「諭旨」とは、そうすることが本人の身のためであることを思っての取り計らいである旨を言い聞かせること。

2.前提事実および事件の経過は?

<Xについて>

★ Xは、平成3年2月、H社の正規社員として採用され、トラック運転手として勤務していた者である。

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<本件解雇に至った経緯等について>

▼ 9年6月に開かれたH社の安全会議で、出席したXの髪の色がY専務、K課長らの目に止まった(Xはそれまで長めの髪型にしていたが、当日は短めで派手な黄色の目立つ色に染めていた)。

▼ Xの風貌が大切な取引先に悪い印象を与えかねないと懸念したY専務は早速社長と相談の上、Xに対し髪を元の色に戻すよう指導するようK課長に命じた。

▼ K課長はXに対して「先日、(取引先の)M社から電話があり、髪の色を染めた人がいるのはあまり好ましくないとの連絡があった」と述べ、髪の色を元に戻すよう求めた(実際にM社からの苦情の申し出はなかった)。

▼ XはK課長に対し、「髪の色のことで会社が干渉するのはおかしい。M社にも髪を染めた人はおり、他の会社にもたくさんいる。構内ではヘルメットをかぶっていて、あまり見えないから良いのではないか」と反論した。

▼ K課長は「他社はウチとは関係ない。運転手はH社を代表する営業マンとしての立場が大きい。近日中に元の色に戻してくれ」と改めてXに強く要請した。

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▼ 同年7月になってもXの髪の色に変化が見えなかったため、K課長は「不本意だろうから散髪代は会社で全額援助してもよい。2、3日中に元に戻してくれ」とXに申し入れた。

▼ これに対して、Xは「組合の話では髪の色でクビになることはないと聞いた。クビにならないのなら元に戻さない。お金の問題ではない。髪を染めてから女性にモテるようになった。以前は暗い感じだったが、今は明るく見えると友達もみんな言ってくれる」と髪の色を変えるつもりのないことを強調した。

▼ Y専務およびK課長は、同じくH社の従業員であるXの父に事情を説明してXの翻意を促したところ、Xの父は「自分からも元に戻すよう本人に伝える」と答えた。

▼ K課長からの再度の申し入れをXが拒んだため、Y専務はK課長の再三にわたる指導を無視したXの態度は社内の秩序を乱すものであり、社外に対しても悪影響が出ると考え、自ら直接Xに会社の方針を説明し、始末書の提出を求める必要があると判断した。

▼ Y専務はXに対し、髪の色を黒く染め始末書を出すよう命じた。Xは髪の色がそんなに悪いことかと反論したが、同専務は「会社の方針だから従ってもらわなければ困る」と突き放した。

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