#290 「佐川急便ほか事件」仙台地裁
2011年7月20日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第290号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【佐川急便(以下、S社)ほか事件・仙台地裁判決】(2010年4月20日)
▽ <主な争点>
自殺した派遣社員のうつ病発症と業務起因性等
1.事件の概要は?
本件は、派遣社員であったXが派遣先会社であるS社で恒常的に長時間の深夜労働を余儀なくされ、うつ病に罹患したため、自殺するに至ったとして、Xの母であるYが派遣先会社(S社)および派遣元会社(H社)に対し、安全配慮義務違反による債務不履行または不法行為に基づき、損害の賠償(逸失利益、慰謝料、弁護士費用など約9300万円)を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<H社、S社およびX、Yについて>
★ H社は、施設内における宅配貨物等の仕分け等の請負事業や労働者派遣事業を主な目的として設立された会社である。
★ S社は、貨物自動車運送事業を主な目的として設立された会社である。
★ X(昭和52年生)は、平成12年7月に短期アルバイトとしてH社の東北本部営業所に採用され、S社の東北支社仙台店に配属となり、13年6月にはH社の契約社員となった。
★ Yは、Xの母であり、唯一の相続人である。
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<Xの勤務形態、本件自殺後の経緯等について>
★ Xは遅くとも平成15年以降、S社仙台店の構内において、貴重品係として顧客が貴重品として指定した荷物の仕分けを担当していたところ、その勤務形態は常夜勤勤務であり、所定労働時間は午後7時から翌午前4時まで、所定休憩時間が午前零時から午前1時まで、所定休日が週休1日制であった。午前4時以降は時間外労働となるが、Xは実際には午前7時まで行われる夜勤業務を担当していた。
▼ Xは18年3月27日、仙台市所在の自宅内にて首を吊って自殺(以下「本件自殺」という)しているのを発見された。
▼ Yは仙台労働基準監督署長に対し、Xの本件自殺は業務上の事由によるものであるとして遺族補償一時金および葬祭料の請求をしたが、同監督署長はXの本件自殺は業務上の事由によるものとは認められないとして、20年1月10日付で労働者災害補償保険法による遺族補償一時金および葬祭料を支給しない旨の処分(以下「本件不支給決定」という)をした。
▼ Yは本件不支給決定を不服として、宮城労働者災害補償保険審査官に審査請求したが、同審査官は20年8月29日付でこれを棄却した。
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