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#311 「日本化薬事件」神戸地裁姫路支部

2012年5月23日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第311号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【日本化薬(以下、N社)事件・神戸地裁姫路支部判決】(2011年1月19日)

▽ <主な争点>
派遣先会社との間における労働契約の成否など

1.事件の概要は?

本件は、T社(派遣会社)に雇用され、同社とN社(派遣先会社)との間の労働者派遣契約(当初業務委託契約)に基づき、N社工場での稼働を開始したXが同契約は偽装請負であるから無効であり、X・N社間には労働契約が成立している上、その後のN社による解雇は無効である等として、同社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、解雇後の賃金、慰謝料の支払い等を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<N社、T社およびXについて>

★ N社は、火薬類および発火装置等の応用製品の製造および販売、労働者派遣事業等を業とする会社である。

★ T社は、電子機器、自動車部品等の各種製造会社のライン請負業務、一般労働者派遣事業、民営職業紹介業等を業とする会社である。

★ Xは、平成17年6月、T社に雇用され、同月から21年1月までN社の姫路工場において業務に従事していた者である。

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<本件派遣契約、Xが雇止めされるに至った経緯等について>

▼ N社は平成16年7月、T社との間で業務委託基本契約を締結し、同社に対し、姫路工場で生産する製品の製造業務を委託した。そして、N社は上記基本契約に基づき、17年6月、T社との間でXにつき、自動車安全部品の製造および付帯業務に関する業務委託契約(以下「本件委託契約」という)を締結し、同契約は18年10月まで更新・継続された。

▼ Xは17年6月、T社との間で「就業場所:姫路工場、業務内容:自動車安全部品の製造および付帯業務、賃金:時間給1200円・時間外1500円」などの条件で、雇用契約(契約社員。以下「本件雇用契約(1)」という)を締結した。

▼ N社は18年8月、T社との間で労働者派遣基本契約を締結し、上記業務委託から労働者派遣に切り替えた。そして、N社は上記基本契約に基づき、同年10月、T社との間でXにつき、上記の業務に関する労働者派遣契約(以下「本件派遣契約」という)を締結し、同契約は21年1月まで更新・継続された。

▼ Xは18年10月、T社との間で就業場所および業務内容等につき、本件雇用契約(1)と同様の条件で雇用契約(派遣労働者。以下「本件雇用契約(2)」という)を締結し、同年11月から派遣労働者として姫路工場に派遣され、従前と同様の業務を継続した。

▼ N社は自動車用部品の受注が減少し、特に20年12月以降の売上高、生産数量が落ち込み、姫路工場では主要製品の生産数量が減少したため、21年1月以降、同工場の派遣労働者につき、派遣期間が満了する者の打ち切りを実施することとした。

▼ N社およびT社は本件派遣契約につき、Xの協調性や作業の取り組み等といった就業状況等を総合的に勘案した結果、20年11月1日から21年1月31日までの3ヵ月間をもって更新しないこととし、Xは同日をもって、本件雇用契約(2)を打ち切られた。

▼ N社は同年4月、兵庫労働局から、3年を超える派遣労働者の受入れを禁止した労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣法」という)に抵触していたとして、是正指導を受けた。

3.派遣社員Xの言い分は?

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