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#624 「オハラ樹脂工業事件」名古屋地裁

2024年10月30日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第624号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【オハラ樹脂工業(以下、O社)事件・名古屋地裁判決】(2023年3月17日)

▽ <主な争点>
労働組合員への減給処分が懲戒権濫用に当たるかなど

1.事件の概要は?

本件は、O社の従業員であるXら3名が同社に対して、2020年12月22日付で行った譴責および減給の懲戒処分が懲戒権の濫用で無効であると主張し、同処分が無効であることの確認ならびに雇用契約に基づき減給された賃金の支払として、Xが2370円およびこれに対する遅延損害金、Yが2541円およびこれに対する遅延損害金、Zが2533円およびこれに対する遅延損害金の支払をそれぞれ求め、O社による違法な懲戒処分により精神的苦痛を被ったとして、不法行為に基づく損害賠償として、それぞれ慰謝料5万円およびこれに対する遅延損害金の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<O社、Xら3名、AおよびBについて>

★ O社は、名古屋市内に本店を置き、自動車用の精密機能部品等の樹脂射出成形加工等を事業内容とする会社である。

★ X・Y・Zの3名は、いずれもO社と雇用契約関係にある従業員であり、同社で働く労働者により2019年12月に結成された労働組合(以下「本件組合」という)の役員を務めている。

★ Aは、2020年4月からO社業務グループの副部長となり、同年10月から同グループの部長となった者である。業務グループは本件組合との対応を含む労務、人事および総務に関する業務を行う部署である。

★ Bは、O社のアルバイト従業員で本件組合の組合員である。


<2020年11月19日の出来事と本件懲戒処分等について>

▼ Bは2020年7月に他の従業員に対し暴力を振るって傷害を負わせたことについて懲戒処分を受けたが、その懲戒手続において、自宅待機の業務命令に反する行為や処分通知書の受取りを拒否する行為があったとして、O社による聞き取り調査を受け、同年11月18日、Aから弁明書に署名と捺印をしてもらうため、翌19日に印鑑を持参して業務グループの部屋に来るように指示された。

▼ 本件組合はBに対する上記懲戒処分について、O社に対して団体交渉を申し入れるとともに、Bに対して行われた聞き取り調査について、抗議をする書面を送付するなどしていたところ、Xらは同年11月19日、呼び出しを受けていたBと一緒に業務グループに同行し、同グループの部屋に入室した。

▼ O社は2021年1月、Xらに対し、2020年11月19日に業務グループ室に押し入り、業務を妨害した行為が、就業規則10章2節3条(37)に定める「会社の行事や会議などの進行を妨げる行為」および同4条(25)に定める「会社が推し進める活動全般において、言動等で邪魔をする場合」に該当するとして、同1条および2条(2)に基づき、譴責に加え減給とし、減給は2021年1月支給の月給から「月額基本給の100分の1」を控除するという内容の懲戒処分(以下「本件懲戒処分」という)をする旨の通知として2020年12月22日付減給処分通知書をXらの各自宅に内容証明郵便で郵送する方法で行った。

▼ O社は2021年1月31日が支払日である同年1月分のXらの賃金において、それぞれ基本給の100分の1に相当する金額(Xについては2370円、Yについては2541円、Zについては2533円)を控除した金額を支給した。


<就業規則の懲戒規定について>

★ O社の就業規則には次のような規定がある。

第10章 表彰及び懲戒
第2節 懲戒

第2条 懲戒には次に掲げる譴責、減給、出勤停止、昇給停止、降格、諭旨退職および懲戒解雇があります。
(2)減給・・・譴責に加え、減給します。ただし、減給1回の額は平均賃金の2分の1を超えず、一賃金支払期において減給できる額は総支給額の10分の1以内とする。

第3条 次の違反行為があったときに懲戒措置をとります。社長が懲戒種目を決定し、または複数を組み合わせて科する場合があります。ただし、懲戒内容や対象者によっては、社長が懲罰委員会を招集し、同委員会において懲戒種目を決定することがあります。
(37)会社の行事や会議などの進行を妨げる行為をしたとき

第4条 次の各号の一に該当する違反行為があったときは、即時懲戒解雇の制裁措置をとります。
(25)会社が推し進める活動全般において、言動等で邪魔をする場合

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