#563 「北日本放送事件」富山地裁
2022年5月25日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第563号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【北日本放送(以下、K社)事件・富山地裁判決】(2018年12月19日)
▽ <主な争点>
定年後再雇用者と労働契約法20条(注:改正前)違反など
1.事件の概要は?
本件は、K社を2016年3月31日に定年退職した後、同社と期間の定めのある労働契約(有期労働契約)を締結して再雇用社員として就労しているXが、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結している従業員(正社員)との間に労働契約法20条(注:改正前)に違反する労働条件の相違があると主張して、K社に対し、主位的に正社員に関する賃金規程が適用される労働契約上の地位にあることの確認を求めるとともに、労働契約に基づき支給されるはずだった賃金と実際に支給された賃金の差額(554万3710円)の支払等を求め、予備的に不法行為に基づき、同差額に相当する額の損害賠償金の支払等を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<K社およびXについて>
★ K社は、放送法に基づく放送事業等を営む会社である。
★ Xは、1979年4月、K社に正社員として入社し、2016年3月31日付で定年退職した者である。Xは同年4月、同社との間で期間を2017年3月31日までとする労働契約を締結して再雇用社員として就労している(その後、XとK社は2017年および2018年に雇用契約を更新している)。
<K社の再雇用制度の概要、正社員と再雇用社員との間における賃金項目等の相違について>
★ K社は、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)9条に基づき、定年退職となった者のうち、所定の条件を満たす者を再雇用制度の対象とし、再雇用社員の労働条件については、対象者の能力、技術、身体状況、経営環境および職場の要因状況等を総合勘案して、個人ごとに同社が提示し、個別に合意を得ることとしている。
★ K社が定める再雇用者就業規則によれば、再雇用社員の労働契約の期間は1年間とされ、基本給は時間当たり賃金をもって個別の労働契約書において定めることとされている。
★ K社の正社員と再雇用社員の間には、労働条件に相違があり、再雇用社員の基本給は個別の合意により定めることとされているが、現在までのところ一律に時給1570円である。
3.再雇用社員Xの主な言い分は?
Xの主位的請求および予備的請求は、いずれも再雇用社員であるXと正社員の各労働条件の相違が労働契約法20条* に違反することを前提として、XがK社の正社員に関する賃金規程が適用される地位にある旨、または不法行為に基づく損害賠償請求権を有する旨主張するものであるから、本件における主な争点は、再雇用社員と正社員の各労働条件の相違が労働契約法20条に違反するか否かである。
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