#405 「国際自動車事件」東京地裁
2016年2月17日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第405号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【国際自動車(以下、K社)事件・東京地裁判決】(2015年1月29日)
▽ <主な争点>
定年後の再雇用に関する労使慣行の有無など
1.事件の概要は?
本件は、K社と雇用契約を締結し、タクシー運転手として稼働し、64歳の定年を迎えたXが定年後も同社による雇用が継続するとの労使慣行、または黙示の合意の成立、もしくは合理的な雇用継続に対する期待があるにもかかわらず、合理的な理由なく再雇用を拒否されたこと、のいずれからの事情の下、K社に再雇用されていると主張し、主位的に同社における労働契約上の地位の確認を求めるとともに雇用契約に基づき、再雇用後の賃金等の支払いを求め、予備的に当該再雇用の拒否が権利濫用もしくは不当労働行為であり、不法行為に該当すると主張し、損害賠償請求の一部として500万円等の支払いを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<K社、Xおよび各労働組合等について>
★ K社は、タクシーによる一般旅客自動車運送事業等を業とする会社である。
★ X(昭和24年生の男性)は、平成17年に現在のK社と同一商号の別会社との間で期限の定めなき雇用契約を締結し、21年4月、会社分割により、当該別会社とXとの間の雇用契約がK社に承継された。なお、XはK社において、タクシー乗務員の業務に従事した。
★ K社はいわゆるユニオン・ショップ制度を採用しているが、同社の従業員が組織している労働組合はタクシー乗務員約700名のうち約600名が加入する国際労働組合(国労)、全国自動車交通労働組合総連合会km労働組合(km労組)および全国際自動車労働組合(全労)の3つである。
★ このうち、全労は22年11月に結成された労働組合であり、上位団体である首都圏なかまユニオン(Nユニオン)に加入している。Xは入社当時、国労に加入したが、その後km労組に加入し、km労組在籍中に全労の結成に関与し、結成後はその委員長を務めた。
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<K社における定年等の定めについて>
★ K社は就業規則において、定年等について次のとおり定めている。なお、同規則における「従業員」とは、同規則の定める手続によって会社と労働契約を締結したものと定義されており(同規則2条)、乗務員は除外されていない。
(定年、再雇用)
第25条 従業員の定年は、満64歳に達した当該月の賃金締切日とする。ただし、本人が満60歳に達する1ヵ月前までに60歳から64歳までの定年年齢を選択し、選択した年齢の誕生日に属する賃金締切日に退職したときは、定年退職とする。
2.前項の他、定年を経過した従業員にして、会社が必要と認めた者については、嘱託または要員として1年以内の期間を定めて雇用することがある。
(退職)
第26条 従業員が次の各号の一に該当するときは退職とする。
(3)定年に達したとき。
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<労働者供給に関する基本契約、Xが定年に至った経緯等について>
★ K社では従前乗務員について、就業規則の定めに基づき、嘱託という形式で定年後の再雇用を行っていたが、平成10年、定年に達したタクシー乗務員について、労働者供給事業を利用する形で供給されたタクシー乗務員を雇用する仕組みを採用することとした。
★ K社は労働者供給事業(職業安定法4条6項)を行うことができるとする厚生労働大臣の許可(同法45条)を得た国労およびkm労組との間で、国労については平成10年9月、km労組については18年2月、労働者供給に関する基本契約を締結した。なお、当該各基本契約は労働協約(労働組合法14条)として締結されたものではない。
▼ Xは24年11月頃、K社に対し、定年後に就業規則25条2項に基づく再雇用するよう求めた。これに対し、同社は「Xは労働者供給事業の許可を取得している労働組合に所属していないので、再雇用することはできない」と回答した。
▼ XはK社の就業規則の定めにしたがい、25年1月、定年に達した。
3.タクシー乗務員Xの主な言い分は?
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