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[リーガル翻訳]Accuracy and/or Fluency

商品を「選ぶ基準」はさまざまであり、どの「選ぶ基準」を重視するかも購入者ごとに異なります。

例えば、「自動車」であればエンジン、燃費、外観、内装のどれを重視するかは異なると思いますし、「飲み物」であれば値段、味、容器、量、インスタ映えのどれを重視するかは異なると思います。また、「メーカー」を重視する人もいるでしょう。

お客様(または翻訳会社)が翻訳者を「選ぶ基準」、言い換えれば翻訳者が「選ばれる基準」も「専門分野」「単価」「品質」「速度」などさまざまです。

ここでは「品質」について考えてみたいと思います。

「翻訳の品質」とは何か?そして「リーガル翻訳の品質」とは何か?

翻訳には「LQA」(Linguistic Quality Assurance)という品質保証プロセスがあります。私には「LQA」を受ける側(自分の翻訳の評価を受ける側)、「LQA」を行う側(他の人の翻訳を評価する側)のいずれの経験もあります。

翻訳会社やプロジェクトごとに異なる場合はありますが、一応LQAにおける「品質の評価基準」というものがあります。代表的なものとしてはMQMがあり、日本翻訳連盟(JTF)も翻訳品質ガイドラインを公開しています。

まず問題となるのが、各評価項目の具体化です。分かりやすい基準として「Accuracy」について考えてみたいと思います。

「Accuracy」は「正確さ」ということですが、「翻訳が正確である」とは具体的にはどういうことなのか?皆さんはどう考えるでしょうか?逐語訳や直訳が最も正確と考える人もいるでしょう。

リーガル翻訳では「Accuracy」が重要であると言われることが多いです。まさにそのとおりなのですが、私はリーガル翻訳において逐語訳や直訳が必須とは考えていません。「法律文書の解釈」に著しい影響が及ばなければ「Fluency」との兼ね合いで読みやすくするために原文に厳格に忠実にする必要はないと考えています。たとえば、原文が受動態である場合に、能動態にすることはよくあります。果たしてこれは「Accuracy」に関するエラーになりうるでしょうか?

私はケースバイケースという立場です。先ほど出した「Fluency」という評価項目もリーガル翻訳では重要であると考えているからです。

そして、次に問題となるのが各評価項目の優先順位です。たとえば「Accuracy」と「Fluency」のどちらを優先すべきか?ということです。どちらも完全に満たしている訳文がベストではありますが、実際にはどちらかを優先することが多いと思います。

私は、リーガル翻訳においては、「Accuracy」を追求すると「Fluency」が下がってしまうという印象を抱いています。誰が読み手であるか?によっても異なってきますが、難しい法律用語を駆使して「Accuracy」を追求すると、「Fluency」が下がる(=読みにくくなる)というのは想像しやすいと思われます。もちろん難しい法律用語を駆使して立派な訳文を作り上げることが悪いということではなく、そのような訳文の品質が高いと評価されることもあります。つまり、これまた、ケースバイケースです。

Legal Person+Linguist = Legal Linguistとして、この「ケースバイケース」を見極めながら「Accuracy」と「Fluency」のバランスを検討し、品質の高い訳文(翻訳された法律文書)を作り出すというのが腕の見せどころだと私は思っています。

さて、タイトルにある「and/or」。リーガル翻訳に携わる人の多くが厄介だなと思う表現だと思います。あえて、タイトルに入れてみました。どのように訳すと品質は高くなるでしょうか?「Accuracy」や「Fluency」の観点で考えてみると良いかと思います。

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