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湊かなえ『白ゆき姫殺人事件』 感想文

 殺人事件という悲劇によって始まる物語ですが、悲劇に対峙した人々がそこにドラマ性を持たせようとすると、それは途端に喜劇に変化していきます。
 本作は、それがSNSという現代的なツールを軸に進んでいきますが、それはいつの時代も、他者との関係性に関わらず存在しうるもので、本作でもSNSの炎上のみならず、職場の噂、女友達(自称親友)の自己本位な擁護、果ては両親に至るまで、主人公を取り巻く軽薄な人々が勝手に存在しない物語を進めてくれます。
 おそらく作者はこの辺りの軽薄さを意図的に書いたのでは無いでしょうか? もちろんそれだけでは単に不愉快な、コミュニティにおける爛れた人間関係にしかなりませんが、そこにそもそもの主人公の性質自体をごく僅かにずれさせている事で、全体的なこっけいさを愛らしく感じられるようになっています。
 この作品は、読者がどのような視点から物語を理解しようとするかによって、感想が変わってくる作品であるように思えます。ミステリーや推理サスペンスとして見れば盛り上がりに欠ける平面的な作品になるでしょう。
 しかしながら、前述の「悲劇の表裏にある喜劇」として見つめると、登場人物一人一人が憎めなく、人間味を感じる喜劇としてその姿を現してくれることと思います。


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