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「海をなくした星」
こんにちは、ティーよ。おぼえてる?
遠いところから来た、リーナちゃんのお友だち。
今日は、私が船で旅をしていた頃に見た星のお話をするわ。とうぞお時間ある時に読んでね。
その星はね、灰色の砂の星だったの
地面もお家もその砂で作られていて、なんでも四角でカチコチで、すべてがキレイに並んでいたわ。
海は、ないの。川も、湖も。
ううん、あったのだけれどね、かくしてしまったのよ。灰色の地面で覆ってしまったの。
だから船の窓から見ても、まあるく灰色の星だった。
灰色の地面の上には、灰色の建物と灰色の道が、どこまでも格子に並んでいたわ。
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私はその星の住人に姿を変えて、別の町から越して来た人のように、あちこちで何人もの人に聞いてみたの。
どうですか、この町は。
暮らしやすさはどうですか?よいおしごとはできていますか?
ああ、そうだね。
ここはわりといい所ではないかと思う。
しごとは、まあまあだね。とくに不満はない。
食べるものにも困ってないし、医療教育もまあ十分なのではないか。
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そうですか、それはお幸せですね。
休日も楽しく過ごしてらっしゃるのでしょうね。
楽しい・・・楽しい?たのし・たの・たのし・たのし・のしのしのし・・・・・
あらゴメンナサイ、休日は何をしてらっしゃるのですか?
休日は、テレピシヨンを見る。
テレピシヨンはなんでも知らせてくれる。
何時間でも楽しめる。
そのとおりにしていればいい正しいことを、おしえてくれる。とても安心だ。
それに無料(タダ)だ。
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まあそれは便利ですね。最近はどんなことをおしえてもらったんですか。
いつまでも元気でいられる方法だ。
どんな?
これさえ飲めば、100%の健康と安心と自由が保証される、カンペキにすばらしいクスリだ。
もちろんすぐに手に入れた。
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ここにはそんなすごいものがあるのですね。
おいくらだったんですか?
無料(タダ)だ。
まあ。
ここはパラダイスですね。
そのとおり。ここではすべて、そのとおりにすればいいのだ。
そのとおりであることは、もっとも安全で、もっとも人として正しいことなのだ。
すばらしいそのとおりだ。
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それはすばらしいですね。
ところでそんなすばらしいものが無料(タダ)ということですが、きっと多くの方に配られたと思うのですが、そのおカネはどこから。
知らん。
考えられたことは?
ない。
なぜそこまでしてくれるのでしょうか。
知らん。考える必要はない。
考えてはいけないいのだ。私はそのとおり、その・その・そのと・そのとお・そのとお・その・そのとおりのその・とお・とお・・・・・
![](https://assets.st-note.com/img/1661428279019-7qcGsYrORG.jpg?width=1200)
どこの町へ行って、何人に聞いてみても、だいたいこのようだったわ。
灰色の四角いパラダイスに暮らす、正しくそのとおりな人たちは、みな安心で幸せだと、私の向こうのどこかを見ながら、言ったの。
船へ戻り、私はその星を見続けたわ。
海をなくした星は、あまり生きてる星には見えなかったけれど。
覆われた水はもう、ただ水分。水分があれば、人は死ななくてすむのではあろうけど。
なぜ海をかくしたのでしょう。
海は源。海は心。海はほんとう。
海はたましい。海は命。
海をなくせば人は人形。
私にできることは、なかったわ。
私の星にも、連絡のとれた他の星々にも相談したけれど、その星の人々がそれを望むかぎり、どうすることもできないと。
海よりも前に、土から切りはなされていっていたその時も、彼らはそのままにそのとおりでいたではないか。
彼らはそれを望んだの?土から切りはなされたいと、海をかくてしまおうと、ほんとうに思ったの?
そうではなかったと思うわ。
なのになぜそうなってしまったの。
そうして灰色の星は、止まってしまった。
人がほとんどいなくなった頃、私は一度降りてみたの。
人がいなくなったことで、壊れかけた灰色の地面のすき間からは、小さな緑がのび、海も端の方から、見えはじめていた。
空気にも害はなく、ただ、人がいないだけ。
町もきれいに残ってた。
人はいなくて、でも人の数と同じだけいっぱい、四角く黒く光るものが落ちていた。
人を切りはなしてきたもの。
切りはなし小さく無力にさせた人々を、安心させてくれたもの。
そのとおりの教えを、広めたもの。
イン プット イン プット
オシテ イレル ウケイレナサイ
ソウソノトオリ ソレガ アンシン
ソレガ タダシサ ソレガ ヒト
さようなら。
私は、時間を超えて、還ってくるわ。
今は何もできなくても、私には何もできなくても、もう一度。
あなた方は何を望んだのですか。
あなた方は、何を捨てたのですか。
海と、ほんとうの地面と、あなた自身の心を、思い出して。
あなたの心はあなたのものであることを、忘れないで。
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私は今はここにいる。
ここに地面をしっかり感じ、このやわらかな光と、どこまでも軽やかに伝わりゆく風の中に、緑と水と、星のリズムの中に、こうしてみんなの心とともにあるこの今を、あの星に伝えるの。
すべてはまわりめぐるのだから。
私もみんなもすべての時も。
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そんなふうで、えっと私は、ソラソラ野原のとなりの小さな町に住みついて、それから、ソラソラミュージアムに引っぱりこまれて、それから1年たったとこだったのよね。
当分ここで楽しく暮らすつもりよ。
私が楽しく生きていれば、宇宙も楽しい宇宙になるの。
私がほんとうを感じていれば、星にほんとうが伝わって、海も地面も緑も風も、みんなにほんとうを伝えてくれる。
生きている。
自分をね、大事にね。
自分の心を、自分の中心に、返してあげて。みんなよ、みんな。
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