読書感想文『玩具修理者』
最近知り合った知人からの勧めで本書を読みことになった。
彼は中学生の頃にふと立ち寄った本屋で本書を手に取ったそうだ。
彼は本を読む習慣はないらしいのだが、本書は売ったり買ったりを3度繰り返すほど手放せない一冊だと言っていて、今も時間があるときに読み返すらしい。
私は、1人の人間をそこまで魅了する本を読んでみたいと思ったし、彼と出会っていなければこの本を読むチャンスもなかったかもしれないと思った。
40ページほどの短編で、文も読みやすいのであっという間に読み終えた。
ホラー小説ということだけあって、グロテスクな表現がリアルに書かれていて、読み手の想像力によっては、ものすごく恐ろしい小説になると思った。
話の内容は「わたし」と「彼女」の喫茶店での会話を書いたもので、「彼女」がいつもサングラスをかけている理由が明かされていく。
自分と他人の溝を埋めるために、他人の過去というのはどうしても気になってしまう。
しかし、時には触れない方がいい過去や、自分が受け止めることのできない事実を突きつけられることがある。
人の歩んできた人生を覗き見るのと同じであるから、それなりの覚悟を持った寛容な人間でなければ、自分も相手も傷ついてしまう。
長い時間同じ環境で過ごしてきた家族ですら理解に及ばないのに、全く別の環境で育ってきた他人をすぐに理解することは不可能だと思う。
あらゆる場面でスピードが求められている現代だからこそ、落ち着いてじっくりと時間をかけることに意識を向けたいと感じた。
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