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『#The Great Escaper』邦題:2度目のはなればなれ

約1年ぶりの映画館。
こういう映画が見たかった。
マイケル・ケインの引退作であり、グレンダ・ジャクソンの遺作となったこの作品は、老人ホームで穏やかに余生を送る老夫婦に訪れたある出来事をめぐるお話。

バーニー(マイケル・ケイン)は、英国海軍の退役軍人。
90歳の彼は、外出時には歩行器が欠かせないし、2階まで階段を昇る足取りは重く、やっとのことで部屋にたどり着くと息切れが酷い。

彼は、フランスで行われるD-Day(ノルマンディー上陸作戦)70年記念式典ツアーに参加したいと思っていたが、このところ体調が優れない妻のことが心配で躊躇しているうちに、応募期間が過ぎてしまい諦めざるを得なかった。それを知った妻レネ(グレンダ・ジャクソン)は、自分は大丈夫だから、なんとしても行くべきだと背中を押す。

そしてバーニーは、早朝にこっそりホームを脱け出し、ドーバー海峡を渡るフェリーに乗ってフランスへ向かう。

ホームではバーニーがいつまで経っても帰ってこないので警察に捜索を依頼する騒ぎに。
妻レネは仕方なく、バーニーは1人でD-Dayの記念式典に行ったと白状。
警察にも連絡が行き、事件や事故ではないと知った1人の警官が、SNSでバーニーの目撃情報を募ろうと“The Great Escaper”#ハッシュタグを付けて発信したことで…。
(あのスティーブ・マックイーン主演の名作、『大脱走』The Great Escapeをもじったと思われる)


これは実話を元にした物語とのこと。

90歳のおじいさんの1人脱走旅は、「はじめてのお使い」の子どもを見ているようでした。
早々にバスに乗り損ねるし、フェリーの出発時間が迫っているのに、歩行器だから危なっかしくて。転ばないように気をつけて~、体調は大丈夫?なんてハラハラしたりして…。

イギリス人らしい皮肉と少々品のないジョークや高齢者ならではの不健康自慢が散りばめられた会話の中に描かれるのは、
退役軍人たちを蝕むPTSD/
心の奥底に抱えた、何年経っても癒えない心の傷や消えることのない後悔、虚しさ、怒り/
相手に対する優しさや思いやり/
そして家族に対する深い愛/

マイケル・ケインは、何も言わずにそこに居るだけで台詞以上に多くの複雑な心情を表現する。
グレンダ・ジャクソンは、誰に対しても歯に衣着せぬストレートな物言いでありながら、気持ちの温かさを感じさせる。
二人ともとってもチャーミング。さすがオスカー俳優

そして、物語の終盤に流れるJAZZの名曲
『You'd be so nice to come home to』が心に沁みます。

第二次世界大戦中に作られて、
「あなたが待っている家に帰ることが出来たなら、なんと素敵なことでしょう」という歌詞が当時のアメリカ人の心を捉えて大ヒットとなったのは当然ですね。


とっても、心がほどける映画だと思います。
もし、興味が沸いたら是非、ご覧になってみてください。

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