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かたわれ・あとがき

懲りずに三度目のあとがきである。
桜下鬼刃おうかきじん」と「なりかわり」については、あとがきの方が本編より閲覧数が多い。作者としてものすごく複雑なのであるが、作品にかけた思いを皆様にお伝えできたと思えば、まあいいか。
とはいえ、

あとがききっかけでもいいので、そのあとで是非本編も読んでほしい。

一応、シリーズにするくらいには気に入っているし、頑張って書いたのだ。

…以上、ちょっとした愚痴を終え、今作「かたわれ」のあとがきに入る。
「かたわれ」は「神と人」シリーズ第三作として書いた。「桜下鬼刃」に登場するげん爺さんの若い頃を描いた「なりかわり」に続く作品だ。
時系列としては、前作から少し先の未来。神馬を見送ってしばらく経ったあたり。

今作は、厳のパーソナルな部分に踏み込んだ作品になっている。彼の生い立ちや、友人である土地神のヨモギが、物語に大きく関わる。前作では案内役と化していた厳だが、今作で主人公に返り咲いた。おかえり。
そして、今作は戦闘描写が大幅に増えた。というか、増やした。厳の復讐が作品テーマのひとつなので、戦わねば始まらない。前作では山神との交流を描いたが、今作の相手は山神のように話の通じる相手ではない。だから、戦闘メインにした。
最初から読んでくださっている方は「厳も『奇術』使えんのかよ!」とお思いだろうが、そもそも|平太郎《へいたろう》に教えたのは厳だ。その設定は書いてて思いついた。行き当たりばったりなのは、趣味作家として致命的だが、今回は結果オーライだ。

蒼介そうすけとりんの兄妹は、ストーリーにそこまで大きく関わらない。だが、共にありながら本心を話すことなく、わかりあえなかった刀の神との対比のために出した。また、刀の話するんだったら武士必要だよな、という思いつきも関係している。今作はそもそも構想を練らず書き始めたので、思いつきばかりだ。
りんについては、とりあえず華がほしかったという安易な気持ちで出した。だが、彼女をキーとして物語を動かせたのでまあいい。
蒼介に死んでもらう話にしようか悩んだが、前作で死人の多さを反省したばかりなのでやめた。もう死にばかり頼るのはよそう。

今作のもっとも重要なキャラクターといえば、ヨモギだ。
幼少期の厳のたった一人の友人である土地神。刀の神に殺されてしまうという可哀想なキャラクターであるが、ヨモギの台詞には細心の注意をはらった。
名前のくだりは、僕が思っていたことをそのまま書いた。
とはいえ、実際に名づけた親が子を虐待するニュースも多々目にする。だが、「名前をつける」という最初の贈り物をした時点では、きっと大好きだったはずなのだ。それは、虐待される側に理由があると言っているわけではない。虐待事案は個々の事情も複雑であるし、詳しく語るつもりはない。そして、幸いなことに虐待を受けずに育った僕には、語ることは出来ない。当事者の言葉ではない言葉は、あまりに軽い。
ただ、何かしら人生に思い悩む方に、僕がヨモギを通して届けたいことはひとつ。あなたに名前をくれた人は、きっとあなたのことが大好きだったはずだということ。さまざまな事情で、名づけた人と離れることもあろう。仲違いをすることもあろう。だが、それでもあなたはたしかに愛されていた。願いをその名に込めた人がいた。あなたが生まれてくることを望んだ人がいた。そして、あなたがこれからも生きていくことを望んでいる人間が、ここにいる。
それを伝えたくて、僕はヨモギにこの言葉を言わせた。伝えてくれてありがとう、ヨモギ。
ちなみに、ヨモギの名前候補に「テテ」があった。どこかで聞いて、いいなと思っていたわけであるが、BTSのVさんのニックネームだった。Vさんを好きな友人がいるため、頭に残っていたのだろう。重要なキャラとはいえ、死んでしまうキャラの名前にするにはあまりに申し訳なくて、採用を見送った。Vさんのソロ曲だと「Slow Dancing」「Winter Bear」が好きで時々リピートしている。

刀の神は、少し悩みながら書いた。
人斬り弥太郎のほうは簡単だった。出来る限り悪人にすればいいだけなのだから。神らしい傲慢さと、悪のミックスをすればよかった。こっちはすぐできた。
問題は刀のほうである。台詞もそこまで多くないし、物語にどう絡ませようか悩んだ。あと、名づけないまま終わらせてしまった。最終的に、刀が抵抗して弥太郎が戦意喪失するラストに至った。そして、それにより二人は神の力を失い、死に至る。
弥太郎にとっては、戦闘によって殺されるよりも残酷なラストになったように思う。自身と元々ひとつであった『かたわれ』の本心が、自身のそれとは遠くかけ離れていた。その事実が彼を殺したのだから。

執筆中BGM紹介。ここ書くの地味に楽しい。

B'z「Q&A」
Aimer「今日から思い出」
家入レオ「a boy」

B'zの曲は戦闘シーンで。厳には厳の、刀の神には彼なりの正義があったのだと思いながら書いた。
Aimerさんの曲は、ヨモギとのシーン執筆中に。ずっとヨモギは厳の思い出の中にいる。こんな素敵な声は、他にいないと思う。書いてて泣いた、作者なのに。
家入レオさんの曲はラストにかけてリピート。『奇跡は 巡り巡り 君へと続く』というフレーズが大好き。厳に伝えてあげたくなった。ヨモギが天から伝えているとは思う。名づけられた奇跡、出会えた奇跡。それはきっと、今の自分に繋がっている。どうか、僕もそうでありますように。


以上、「かたわれ」のあとがきを終える。
僕としては「神と人」シリーズの中でも出来のいい方だと思っている。sその割に人気がないので、自分の感覚がおかしいのか心配になってくる。とはいえ、やっと厳が人らしくなってきた。前作ではただの案内役(以下略)。
これからもこのシリーズ、そして厳のことをよろしくお願いします。
ちなみに、ヨモギはこれから先も厳の回想に出す予定。


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ナル
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