【短編】それは鮮やかなまま
若葉色のスカートが、風にそよいでいる。陽子さんは、鼻歌を歌いながら僕の数歩先を歩いていく。
数年前に来た盛岡とは、少しだけ変わった。陽子さんが好きだと言っていた、あの柳は伐採されていた。
「寂しいが、仕方ないね」
少し俯いた後、陽子さんは「私たちが暮らした場所へ行こう」と言って歩き出した。秋風が肌に冷たい。陽子さんが歌っていたのは、僕が好きだったバンドの曲。鮮やかな赤をまとった唇が、寂しげなハミングを続けている。
「どうして、最近はこのバンドを聴かないの?」
陽子さんは突然