私的解題-8「變爭篇」 孫子の兵法をプロジェクト マネジメントの観点で翻案したら
「8 變爭篇」プロジェクトを取り巻く状況への対応指針とリーダの意識に関しての部分です。
ここでは、前回の「風林火陰山雷」みたいな、漢字一文字でこんなこと言っています。みたいな「判じ物」は出ていませんので、お気楽に読んでください。
まずは
「何か事象が発生して、何かしらの対応を行うにしても、対応を行ってよい場合と対応を行ってはいけない場合があります。新たにプロセスを展開する場合でも、時と場合に応じて、展開してよい場合と悪い場合があります。ですので、状況への対応の仕方を理解しているリーダは、対応することによって目標に到達するための利を得ることが出来ますが、理解できていないリーダはプロジェクトを消耗させるだけで、たとえ対応パターンを知っていても、うまく使いこなすことができず、目標に到達するための利を得るどころか損失を発生させます。」
→ ここの所はごく当たり前のことというか「対応を行ってよい場合と対応を行ってはいけない場合」のように胸に手をあてて少し考えれば「あ、あの時」みたいにわかるお話を書いているだけなのでそのまま流しますが、続いて「状況への対応の仕方を理解しているリーダは、対応することによって目標に到達するための利を得ることが出来」ると言っています。
ここは「転んでもただは起きぬ」ではなく、対応するにあたり、目先の課題の対応だけではなく、対応策のバリエーションの中から「目標に到達するための利を得ることが出来」るための筋道が表れるものをチョイスするということを言っています。
例えば、プロジェクトで誰かがミスをした。バカの一つ覚えで、感情のまま怒鳴りつけるなりするのは、考えもなくできるので簡単ですが、そのミスからプロジェクト内で状況を読み取り(なぜミスが出るような状況になってきたのか。例えば中だるみ等ですね)、ミスの対応をすると同時に再発防止策を設定してプロジェクトメンバーに教育と注意喚起を行い、再度、プロジェクトメンバーへの意思統一を行い、プロジェクトの意志を強固にする。といった動きができることを「状況への対応の仕方を理解している」と言っています。
さて、次は以下の文書になります。
「賢明なリーダは、ポジティブなリスクとネガティブなリスクを常に考慮しますし、このバランスを見ているのでプロジェクトを前に進める事への恐れを抱きません。また、賢明なリーダには、同じリスクでもポジティブな側面とネガティブな側面が見えるのでサブリーダやステークホルダーにリスクのポジティブな側面とネガティブな側面を使い分けて提示し、彼らが指示通りに動くように誘います。」
→ 「ポジティブなリスクとネガティブなリスクを常に考慮しますし、このバランスを見ているのでプロジェクトを前に進める事への恐れを抱きません。」ですが、まずは、リスクにはポジティブなリスクとネガティブなリスクがあることの理解が必要です。
リスクと言えばネガティブな言葉のようですが、ポジティブな場合もあり、その昔、チョコエッグという玩具菓子が大当たりした際、想定以上の売上げで生産が間に合わず、コンビニからペナルティーを受けたという場合は、ポジティブなリスク(想定以上の売上げ)が発生し、生産が売り上げに追いつかなくなり欠品が発生し、これが、ネガティブなリスク(ペナルティーを受けた)を引き起こした関係と言えます。
この場合は「人間万事塞翁が馬」みたいな話になっていますが、発生する事象に一喜一憂するのではなく、「このバランスを見ている」ことが重要となります。そして「このバランス」が見えているが故に、次に何が起こりえるか皆目見当がつかずにプロジェクトを進めるわけでは無く、次に何が来るかを予測しながら動かしているので「プロジェクトを前に進める事への恐れを抱」かないとなります。
また、チョコエッグの話に戻りますが「「同じリスクでもポジティブな側面とネガティブな側面」があり、それが「見えるので」、賢明なリーダは「サブリーダやステークホルダーにリスクのポジティブな側面とネガティブな側面を使い分けて提示し、彼らが指示通りに動くように誘」う=ポジティブな面を見せて活性をつけさせ、ネガティブな面を見せて抑制させることができるという事になります。
そして
「そうではない、猪突猛進のリーダは自らリスクに飛び込み、リスクを恐れすぎるリーダはプロジェクトを遅延させ、怒りをコントロールできないリーダはリスクに足をとられ、名誉を重んじすぎるリーダはリスクにはまると知りながら自らリスクに向かい、メンバーに甘いリーダは、プロジェクトのコントロールができなくなります。これらは全てリーダの過失です。その結果、このようなリーダはプロジェクトとそのメンバーを潰してしまうのです。」
→ ここも読んでの通りですが、賢明ではないリーダの例えというか、賢明ではないリーダの分類とその行動パタンの列挙になります。そして、このようなリーダだと「プロジェクトとそのメンバーを潰してしまう」と言っています。
「ですから、賢明なリーダは、プロジェクトに障害やリスクが発生しないことをあてにするのではなく、いつ障害が発生しても対応できるバランス感覚とプロジェクト体制を頼みとします。」
→ 「プロジェクトに障害やリスクが発生しないことをあてにするのではなく」、ざっくり言えば、神頼みや運任せでプロジェクトを進めるのではなく、発生するであろう障害やリスクを想定し、そのポジティブな面とネガティブな面を考慮する「いつ障害が発生しても対応できる(リーダ自身の)バランス感覚」と、今までの章で語られてきた「プロジェクト体制を頼みとします。」となります。
この章には当たり前のことが書かれていますが、リスクには「ポジティブな側面とネガティブな側面」があるという事は忘れずに覚えておいてくださいね。
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