私的解題−11「九地篇」 孫子の兵法をプロジェクト マネジメントの観点で翻案したら

「11 九地篇」プロジェクト オペレーションの章ですね。

残り三章になりました。さっそく本文に入ります。
「プロジェクトの状況は様々です。プロジェクトがまだ始まっていない状態。まだプロジェクト全体が動ききっていない状態。プロジェクト内でぐずついている状態、プロジェクト全体が危機に瀕している状態。リーダは各々の状態に合わせてプロジェクトをコントロールしないといけません。」
→ 各々のプロジェクトの状況の例示を行い、そういう状況の中でもリーダは各々の状態に合わせてプロジェクトをコントロールしないといけ」ないと言っています。ここでも「コントロール」が出てきました。

話しが少しそれますが、個人的には、孫氏の兵法の基本は「コントロール」に尽きると思います。ゴール到達が可能になるために、何が出来ていなければならないか、何が必要でどう考え、どう動く、どう動かすのか、ということ=「コントロール」を中心に置いて語っているのが孫氏の兵法であると考えています。

話しは戻って
「したがって、各タスクを進めるに当たってリーダは対象と状況をコントロールし、有利な状況になれば進め、そうでなければ機会を待つということを理解しないといけません。とはいえ、プロジェクトをできるだけ早く進めることは重要です。そうすることで、障害やリスクが顕在化する前に対処することができるからです。」
→ リーダは(今までの章で何度も言われてきましたが)「対象と状況をコントロールし」、利益と損失を考え、「有利な状況になれば進め、そうでなければ機会を待つ」という事を「理解」=『実行する』ことが必須だ言っています。
しかし、「待つ」と言っても、やはり「プロジェクトをできるだけ早く進めることは重要です。」という事で、進めることは忘れてはいけませんよ、早く進めることでタスクの新たな地平に至ることができるので、その分、「障害やリスクが顕在化する前に対処することができ」ますと言っています。
この話の軸をまとめるとすると、基本は早く進める。でも闇雲に急いで進めても意味がない。状況を見て待つときは待つ。待つというコストの無駄遣いに繋がることができるのは、今まで早く進めているから、余裕があって、待つことが可能になっている。という事を言っています。

次に進みます。
「もちろん、次の一歩を踏み出すたびに、メンバーは、やり切れるかどうか不安でいっぱいになりますが、「後には引けない」と宣言し、明日の見通しを明確に示すことができれば、メンバーは自発的にプロジェクトに貢献します。」
→ ここは、孫氏の兵法にとって、プロジェクト運営の意識面での重要な部分になります。
いまだかってだれもやったことのないプロジェクトはもちろんのこと、そうではなくても、誰しも「次の一歩を踏み出す」=経験したことのない新しい一歩は、リーダでさえ不安になるのです。ですからリーダは「「後には引けない」と宣言し、明日の見通しを明確に示す」必要があります。たとえ、自分自身に不安があったとしても、です。
孫氏の兵法は「策(謀)」の書でもありますが、その背骨には、必ず意志の強さがあるのです。これは蛮勇ではなくCool Head but Warm Heartに裏打ちされた意志の強さが必要になるのです。

また、
「プロジェクトマネジメントの得意な人は、プロジェクトチームを蛇の「率然(常山の蛇)」のように組織全体を束ねて運営します。
リーダはプロジェクト会議体、コミュニケーションルール、エスカレーションルールなどの運営ルールでプロジェクトの動きを標準化することで、スキルに関係なく、メンバー全員が力を発揮できる状況にします。その上で、「率然(常山の蛇)」のように組織全体が一体となってプロジェクトを進めることができるのは、リーダが進めるしかない状況下にプロジェクトを置くからです。」
→ ここで大切なのは「リーダはプロジェクト会議体、コミュニケーションルール、エスカレーションルールなどの運営ルールでプロジェクトの動きを標準化すること」、「スキルに関係なく、メンバー全員が力を発揮できる状況に」すること、「リーダが進めるしかない状況下にプロジェクトを置く」ことですね。
「運営ルールでプロジェクトの動きを標準化する」のは、標準化に意味があるのではなく、標準化の裏に存在する整流化に意味があるわけです。標準化すれば、連動して整流化していきます。そうすると、滞ることなく情報が全体に連携されコミュニケーションロスが軽減されます。業務改善での標準化は、ステークホルダーの関係が多く何かと難しいですが、プロジェクト内は狭い世界なので、ルールを定め、守ってもらだけで一気に高みに上ることが可能になります。また、こうやって標準化できると「スキルに関係なく、メンバー全員が力を発揮できる状況」が黙っていても整備されてきます。そのうえで「リーダが進めるしかない状況下にプロジェクトを置」き、今までの書かれていた内容を実施すれば、プロジェクトは一体化して進み始めます。「率然(常山の蛇)」→「常山の蛇勢」のようにですね。「常山の蛇勢」は一度、自ら調べてみてください。

とは言ってもリーダがポンコツだとうまくいきません、なので、
「リーダは、何事も深く考え、静かに行動し、対応は公平に行い、メンバーには目の前の仕事に集中させ、やるべきこと以外のことに気を取られないようにします。ですので、リーダは、自他の立場からのプロジェクトの状況の理解、組織の一体感と柔軟な運営、人の心の動きなどを十分に考慮しなければなりません。
また、メンバーにはプロジェクトを進めるためには成果の見える仕事だけを与え、余分な思いに走る可能性のある事は知らせてはいけません。プロジェクトを成功させるためには、メンバーに対してメンバーの成功時の利益だけを教え、失敗で発生する損失の可能性は教えてはいけません。」
→ この通りですね。ここで記載分されたすべてが重要なのですが、この中で最も大切なのは、「対応は公平に行い、メンバーには目の前の仕事に集中させ、やるべきこと以外のことに気を取られないように」することです。まずリーダはプロジェクトのルールに基づいて「公平」に対応を行い、メンバーには「やるべきこと以外のことに気を取られないように」する=メンバーにはいろいろな問題があります。普通に生活していても、家庭内の問題、持病の問題等、ありとあらゆることが襲ってきます。家族が病気なのに「気を取られないように」することなんて不可能です。もし、そうであれば早く家路につかせ、心理的安定性を確保する等の細かなケアを行なわないといけません。そのことも含めてンバーに対してメンバーの成功時の利益だけを教え、失敗で発生する損失の可能性は教えてはいけません。」と言っているのです。

そして
「プロジェクトが進めばメンバーは障害があっても対応できるようになりますが、浅いうちは障害が出れば浮ついて対応できません。そして、進めるしかない状況に追い込まれれば自発的に活動し始め、あまりにも大変な状況に入れば、メンバーはリーダの指示を仰ぎ従うようになります。
そんな中でも、リーダはメンバーの思いがわからなければ、プロジェクトを一体化することは出来ません。リーダがプロジェクトのスコープを明確に提示できなければ、メンバーはプロジェクトを、どれだけ、どの方向に進めてよいのわからなくなります。また、リーダが作業の対象を明示できなければ、メンバーは何を手がかりに進めてよいのかすらわからなくなります。これらのことすべてを把握し指示できないのであれば、プロジェクトの達人とは言えません。」
→ プロジェクトマネジメントを経験された方は、よくお分かりかと思いますが、プロジェクトの深化とはこういうものです。「そんな中でも、メンバーの思いがわからなければ」いけませんし、「プロジェクトのスコープを明確に提示でいなければ」いけませんし、「リーダが作業の対象を明示できなければ」いけません。これらができないと「プロジェクトの達人とは言えません」といっていますが、これらのことは「達人」以前にリーダとしては、あたりまえのことではと思います。

そして
「リーダにとって重要なのは、対象と状況を正しく理解することです。そこで初めて、プロジェクトを遂行し、遠い目標に向かって目的を達成し成果を出すことができます。このように運営した結果を、プロジェクトの巧みな運営による成功と言います。」
→ 「リーダにとって重要なのは、対象と状況を正しく理解することです。」と言っています。耳タコ状態かもしれませんが「遠い目標に向かって目的を達成し成果を出す」のが「プロジェクトの巧みな運営」=コントロールによる「成功と言います」。

最後に
「最初は静かに進め、プロジェクトの全体が明確に見えてきたら一気にゴールを目指します。そうすれば、障害はもはや障害ではなくなり、プロジェクトが達成され、成果がもたらされるのです。」
→ ここは、「始めは処女の如く、後は脱兎の如し」の私によるプロジェクトマネジメントへの翻案ですが「最初は静かに進め」=最初は様子を見ながら静かに進め、「プロジェクトの全体が明確に見えてきたら一気にゴールを目指」=ゴールまでが曇りなく見えれば、プロジェクトの持つ勢いをエネルギーにして進めろ。と言っています。
そして、経験された方も居られるかもしれませんが、勢いのついたプロジェクト程、恐ろしいものはなく、多少の「障害はもはや障害ではなくな」るのですね。

さあ、あと二章です。「脱兎の如」く進めましょう。

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