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掌を合わせる

もう5年は前だろうか、家族と滋賀に行った。初めての琵琶湖を見て、川魚を食し、私は満足していた。しかしこの旅行のメインは神社お寺であった。
神社寺社は好きなのだけれども、私は仏様のありがたみがまだ分かっておらず自分から仏様を見に行くことがない。幾つかの神社寺社を見て回り、そのあと母が見たかった仏様を見に行くことになった。楽しめるのだろうかと正直思ったが一緒に向かった。

訪れた先は少し暗い林の中で、小さなお堂と呼ぶのがよさそうな建物があった。建てられたのも随分前なんだろうと思われた。近くの住民たちが交代で管理しているそうで、そばの家の方に頼んで見せてもらうことになった。
引き戸を開けて畳に座り、奥の木の扉をゆっくりと開くと、そこには小さな仏様がいた。木彫りで本当に素朴ではあったが、あたたかい顔で私をじっと見ていた。思わず涙が溢れてきた。大事に守られてきたその想いが伝わってきた瞬間であった。



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