【卒業論文噛み砕き解説】Part 2 大学4年生による国民性のわかりやすい解説。
Part 1 では、私の卒業論文から「組織文化」について解説しました。
読んでいない方は、Part 1 から読んでいただくと理解が深まると思うので、まずはそちらから是非!
ざっとおさらいすると・・・
「会社の雰囲気」や「従業員の働き方」の根本で、メンバー間で当たり前と認識されているもの、それが「組織文化」でしたね!
その組織文化に大きく影響を与えているものが、今回のテーマである「国民性」です。
日系企業は日本の国民性の影響を受けた組織文化になっているし、米国の企業は米国の国民性の影響を受けた組織文化になっています。
しかしみなさんご存知の通り、日本にも米国の企業はあるし、米国にも日本の企業がありますよね?
結論から言うと、このように海外進出をするような外資系企業は、その都度進出先の国民性を意識した組織文化に考え直す必要があるんです。
つまり先程の例に挙げたような日本にある米国の企業の場合、「本社(米国)の組織文化」と「日本支社の組織文化」は少し違うものになっているということ!
日常生活でも、日本人同士では当たり前のことが外国の人からは全く理解されない、なんてことはザラにあります。
今回はそんな身近でもありビジネスにおいても重要ポイントである国民性について深掘りしていきましょう!
1. 4つの指標で見る各国の国民性
まずは社会科学者ヘールト・ホフステッドによる素晴らしい先行研究の紹介から。
この先行研究の何が素晴らしいかと言うと・・・国の文化や国民性というなんとも輪郭の無い、比較しづらいものを指数化してくれたんです!
この調査は1967年から1973年にかけて、65ヶ国のIBM(多国籍企業)の営業部門・管理部門の述べ117000名を対象に行われました。
ここでは「ホフステッド指数」と、その構成要素として4つの指標が出てきます。
簡単に説明すると、4つの指標が国民性を数値化する為のもの。
そして、その4つの指標の数値が最終的に計算された結果が「ホフステッド指数」であり、国の文化を指数化したものです。
以下の4つがホフステッド指数の構成要素であり、国民性の判断項目になります。
1 Power distance index:権力格差
2 Uncertainty avoidance index:不確実性の回避傾向の高さ
3 Individualism:個人傾向主義の強さ
4 Masuculinity:男らしさを求める強さ
では、指標ごとに国別の数値のグラフを見てみましょう!
1 Power distance index:権力格差
2 Uncertainty avoidance index:不確実性の回避傾向の高さ
3 Individualism:個人傾向主義の強さ
4 Masuculinity:男らしさを求める強さ
(Platinum Date Blogより引用)
・・・さてみなさん、この4つのグラフを見てどのような印象を持ちましたか?
4つのグラフに共通して言えることとして、最大値と最小値の差がかなり大きいことが挙げられます。
これは、各国の国民性の特徴に大きな違いがあるということ。
わたしの卒業論文では日本・米国・台湾・スイスの4ヶ国にフォーカスしたので、表を用いてもう少し深掘りしていきましょう!
このように指標ごとの数値の差を見たり、国ごとに数値のバラツキを見たりすると様々なことが見えてくると思います。
例えば、日本は不確実性の回避と男性らしさに関して圧倒的に高い数値が出ていること、反対に台湾は個人主義の数値が圧倒的に低いことなどがわかりますね。
ということで、日本人の国民性の特徴はなんとなく掴めてきましたか?
個人的に、日本の不確実性の回避と男性らしさの数値が高く表れたことは納得の結果でした。
2.「空気を読む」も国民性?
「空気読めない」の略である「KY」という単語、みなさんも使ったことありますよね?
日本では、そんな単語が流行るくらい「空気を読む」ということは当たり前だという認識。(出来るか出来ないかは別として)
しかし、この空気を読むという言葉自体を理解出来ない国が存在するんです!
・・・「コンテクスト文化」って知っていますか?
コンテクストは、言語・文化・価値観などのコミュニケーションの共通の基盤のこと。
コンテクスト文化にはハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化があります。
・ハイコンテクスト文化:メッセージを解釈するときに、言葉として語られていること以外も手掛りとして重視する。
・ローコンテクスト文化:明確なコミュニケーションの決まりがあり、意味されることは語られていることである。
つまりハイコンテクスト文化では、聞き手はコミュニケーションが行われている状況や相手の話し方など、口にしないことも含めてメッセージを読み取ります。
反対にローコンテクスト文化では、伝達者が口にしたことしか意味を持たないので、「空気を読む」ということは行われないのです!
では、コンテクスト文化の分布を見てみましょう。
ご覧の通り、日本は最もハイコンテクストな文化を持つ国!
まさに、空気を読むということが得意なわけですよね。
ちなみに、コンテクスト文化には歴史が大きく影響していると言われています。
ハイコンテクストな文化圏は、その国で共有してきた歴史が長いのが特徴です。
例えば日本は、単一民族の島国社会で数千年に及ぶ歴史を共有していて、その歴史の大部分が他の国から閉ざされた状態でした。
人との繋がりというネットワークが代々受け継がれていく中で、コミュニティのメンバー間にコンテクストがどんどん共有されていくので、全てを言葉にしなくてもコミュニケーションを取ることが可能になったと考えられます。
対照的にローコンテクスト文化のアメリカは、世界各国の移民で成り立っておりそれぞれが別々のバックグラウンドを持っています。共有する歴史が数百年しか無い為、ローコンテクスト文化に分布されると考えられるのです。
3.国民性と組織文化の特徴が似ている・・?
私の卒論では、
①国民性の特徴には大きな差があることについて説明
②組織文化と国民性の関連性について説明
③実際の企業での現状調査
という流れで結論付けました。
その中でも、最重要ポイントである組織文化と国民性の関連性の証明を最後にしましょう!
お気付きの方もいるかもしれませんが、証明のための材料はもうすでに揃っているのです。
今回は日本を一例として用います。
一緒に思い出してみてください!
まず日本の組織文化の特徴です。
これは前回の記事で「チームワーク意識」と「保守的なアプローチ」と定義づけましたね。
次に日本の国民性を数値で表した表をもう一度確認してみましょう。
日本の国民性の「個人主義の数値の低さ」と「不確実性回避の数値の高さ」、組織文化の「チームワーク意識」と「保守的なアプローチ」に関連性があることがわかったと思います!
個人主義が弱いということはつまり、集団意識が働きやすいということ。
「チームワーク意識」という組織文化の特徴に繋がります。
不確実性の回避とは不安を感じやすくリスクを事前に回避しようとする傾向のことなので、保守的なアプローチとほぼ同意義と考えて良いでしょう。
このように企業の組織文化には、無意識のうちに国民性が反映されているんです。
日本人同士で働いていたら何の疑問も抱かないようなことでも、外国の人が働く際にはコンフリクト(衝突)の原因になり得ることも。
なので実際に、外資系企業は進出先の国の国民性を反映した新たな組織文化を浸透させているのです。
ということで、卒業論文の噛み砕きはこれにて終了です!
将来外資系企業で働きたいという思いがあった為、このようなテーマで卒論を執筆しました。
自分が実際に気になっていることや興味のある分野をテーマにする方が、辛さは軽減されるなと感じましたね。大変なのは変わりませんが(笑)
卒論がまだこれからという方は、大学生感を味わえる行事だとポジティブに捉えて頑張ってください!
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。