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弁護士が見たCOP28inドバイの様子
喜多啓公(弁護士)
1 気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28ドバイ)への参加報告
2023年11月30日から12月13日まで、アラブ首長国連邦のドバイにて、気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)が開催されました。この会議は、1992年の最初の国連気候変動協定(リオ会議)以来、毎年開催されています。
この度、日本弁護士連合会 公害対策・環境保全委員会 気候変動対策プロジェクトチームから、和田重太弁護士(大阪弁護士会)、青木良和弁護士(兵庫県弁護士会)、喜多の3名がドバイに派遣され現地にてCOP28に参加しました。
COP28では、開催前から、産油国であるアラブ首長国連邦のドバイでの開催ということから批判的な声もありましたが、最終的に「化石燃料からの脱却(transition away from fossil fuels)」を合意するに至りました。化石燃料の段階的削減(phase down)や段階的廃止(phase out)の文言を成果文書に盛り込むか否かにつき厳しい交渉が行われ、会議が延長された結果でした。「化石燃料時代の終わりの始まり」等一定の評価がなされている一方で、気候変動による影響を受けやすい島しょ国からは十分な進展ではないと落胆が示されました。
2 COP会場の雰囲気
COP会場では、期間中に日ごとに健康、金融、エネルギー、建設、若者、自然、食糧などテーマを設けており、国際会議だけでなく各所でセミナーが開催されていました。健康のテーマは今回初めて設けられています。
COP会場には、登録者のみ入場できる「ブルーゾーン」と、誰でも入場できる「グリーンゾーン」がありました。成果文書交渉などの国際会議や各参加国のパビリオンなどはブルーゾーンで行われ、グリーンゾーンでは企業展示が多くされていました。
喜多は、いくつかのジャパンパビリオンでのイベントに参加しました。青年会議NGO、環境省や経済産業省が主催のセミナーで、日本の気候変動対策の現状と海外から見た課題を実感できました。「日本の若い世代から脱炭素の取組みを発信して国際的に貢献するポテンシャルがある」とコメントされていたことは印象的でした。日本が世界に向けて発信している内容について、自信を持っていきたいところですが、海外の登壇者から「テーマは素晴らしいが、内実が伴っているのか」という意見も出されていて今後に期待したいところでした。
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3 サイドイベントへの参加
COP開催期間中の2週間には、会場だけではなく、会場外でもイベントが開催されていました。ミドルセックス大学ドバイ校やパレスダウンタウンという高級ホテルの会議場で行われた世界の法律家が集まるイベントに参加しました。
ミドルセックス大学ドバイ校では、「Climate Law and Governance Day」と題して、世界中から法律家が集まりセミナーが開催されました。それぞれテーマが設けられており、関心のあるセミナーを受講してきました。将来世代の権利保護やグリーンウォッシュと情報開示、法律家に求められる最低限の心得など、世界の最先端の議論に参加できました。日本の弁護士にも還元したいと感じました。
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4 日本の弁護士にとっての気候変動問題
日本に戻った後、COP28について話す機会に何度か恵まれました。弁護士が集まる場であっても、気候変動に対する認知はまだまだです。たとえば、COP28へ参加したことを話すと、聞き手は、「弁護士業務とは離れた突飛なことをしている」という表情になることがあります。COPで議論されていた「近い将来、弁護士が有するべき基本的な知見になる」といったことを言うと、「やりたい人がやればいい」という反応をする人もいます。
社会の中でも、一部の関心のある人が動いていて、他の人は「我、関せず」の雰囲気があります。もっとも、私自身も、気候変動問題に関わることになったからこそCOPに参加したのであって、関わることがなければ無関心な一人だったかもしれません。
しかし、世界から気候変動に関心のある人達が集まるCOPに行けたことは、世界の潮流に身を置くことで関心を高めることができ、大変良い機会でした。
日本の対策だけでなく関心さえも遅れていることを嘆くだけでなく、少しでも現状を改善できるように行動することが必要です。日本特有の問題もありますが、人権を守るという司法の役割を果たすべく行動することは弁護士の使命であると改めて考えています。