10秒で読めるshort story(1/30のLove)
1.愛の形
『綺麗だね』
最後の打ち上げ花火を名残惜しそうに聴く君の横顔が好き過ぎて…
『紫陽花のような君の方が綺麗だけど』そう言いかけて言葉を呑み込んだ。
僕が知っている女性の中で間違い無く世界一美しい。
緊張しているのは僕の方かもしれない。彼女の右手は僕の汗で湿り出した。いつも冷たい君の右手さえ今日は温かく感じる。
『結婚しよう』
彼女の顔を見つめ僕はプロポーズ。彼女の瞳は閉じたまま。僕は黙って君を抱きしめる。
僕の彼女は盲目アンドロイド。
2.VIRTUAL
『全然可愛くないの』
と拗ねる君は十分に愛おしく
『自分に負けたくない』
と泣く君の側に居てあげたくて
『いつもありがとう』
と微笑む君の笑顔がとても素敵で
『大嫌い』
と怒る君に夢中になって
『早く会いたいな』
と甘える君のことを世界で1番愛してる
スマホに映る小さな君を抱きしめられるリアルな世界で生きたかった
3.既読
彼の誕生日にお祝いLINEを送り忘れた。
最近忘れがちな私。
案の定、彼の態度は冷たい。
絶対忘れてるって呆れられてるし「どうでもいいわ」って思われてると思うけど仕方ないこと。
だって私達そういう関係じゃ無いし、どうせお金渡せば貴方は笑顔になるんでしょ。
『たまには帰ってくるんだよバカ息子』
既読表示はいつまで経ってもつかない。
4.君の長所
『私の事馬鹿にしてるの?』
唐突な彼女の攻撃。昼休み時間に発した『可愛い』がスイッチのようだ。
『あの子はモデル級の容姿端麗!』
『あの子はアイドル級に可愛い!!』
『あの子のぶりっ子は3割増し!!!』
『じゃあ私には何があるの答えて?』
そう言って僕に詰め寄る。
『あるでしょ色々』
軽い返事に彼女が睨んできた。
世界で一番君の良いところを知ってる自信はある。
でも周りの目が気になって言えなかった。
『3ヶ月時間をあげるから私と付き合って答えを出して』
彼女は相変わらず睨んでいたが顔が紅潮していた。
『はい』
今度は真剣に返事をした。
5.配達員
「お届け物です」
扉を開けた瞬間、配達員に殺された。
僕の血でそこらじゅう真っ赤に染まった。
だが痛みはさほど感じない。
配達員が私を刺す瞬間の言葉が印象的で。
「なんで裏切ったの?貴方は私のものって言ったでしょ」
冷静だが腹部に刺さった刃物越しに怒りが伝わってくる。
そしていつの間にか意識が遠のいていった。
意識が戻り辺りを見渡すと飛び散ったはずの血は全て消え痛みもない。
「なんだ夢か。殺されるかと思った」
「大丈夫?魘(うな)されてたよ」
彼女が心配そうに声をかけてきた。
「うん平気だよ」
「よかった。でも今度浮気したらあんなもんじゃ済まさないからね」
殺意の顔が先程の配達員と類似していた。
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