【小説】D€STRU 〜EP5・EP6〜
EP5
スペイベ二日目。只今の時刻PM5:00。
何故か私はスタジオで踊っている。隣には天羽蓮。本当であれば既に会場入りしている時間。私を除くメンバーはお披露目会の最終リハを終えていた。
『あんたが踊る筈だったステージ観せてあげる』
一旦レッスンを止めて大型スクリーンの電源を入れた。
『これが今の実力よ』
研究生6人の歌とダンスは初々しさはあるものの流石『D€STRU』の合格者だけあって皆個性的で6人でもグループを作れるくらい完成度は高かった。
『どう思う?」』
『凄くいいと思います。初ステージでここまで出来るなんて』
椎名くるみは羨ましそうな眼差しをモニターに送った。
『だから駄目なんだよ』
天羽蓮が怒っている。またスペイベ発令かと思ったがそんな雰囲気ではなかった。何を間違えたのか時間を逆再生してみたが解らない。
『だから研究生で最下位だって言ってんの!』
椎名くるみは必死で天羽蓮の言葉を考察した。
『で、何か感じたの?』
天羽蓮がかわ恐い顔で覗き込んできた。
『やっぱスペイベ♡』
『おい真面目にやれキモオタ野郎!』
椎名くるみは慌てて真剣を装い話し出した。
『研究生の6人は凄く頑張ってました。さっきの感想も嘘ではありません。でも・・・よくわからないんですが物足りなさは感じました。個々のレベルは高いんですが悪い言い方をするとバラバラと言うか』
『まあまあの答えね』
『個々の能力が高いは△。あのダンスがMAXなら今すぐ卒業してほしい。バラバラってのは○。個々のレベルがどれだけ高くても意味がない。集団なんだから個の連鎖の価値を生み出せないグループはTHE END。物足りなさってのは◎。研究生にしてはレベルは高い方だけどCoreが足りない』
天羽蓮の饒舌はまだ続いた。
EP6
『Coreですか?』
『そうよ。オタクも最初は好みの推しを応援するわ。そして最高のパフォーマンス集団の中にいる推しを愛おしく誇らしく思うの。でもね、いくら可愛くたってパフォーマンス出来ないアイドルなんてそこら辺に山程転がってるし直ぐに乗り換えられるのがオチね。集団を最強にするのが私達Coreよ』
『もしかしてそこに私も含まれてます?』
椎名くるみは困った顔をしたが天羽蓮は無視して話を続けた。
『Coreは一部の選ばれし人間しか立つ事を許されない。この【D€STRU】でCoreに選ばれし人間は私を含め三人。一人は「X」神咲芽美(カンザキメミ)。もう一人は椎名くるみあんたよ』
椎名くるみは余計に頭が混乱した。
『ちょっと待って下さい。【D€STRU】No.3の実力者、神咲芽美さんがCoreなのは理解出ます。でも「Y」廣野花梨(ヒロノカリン)さんがCoreじゃないのは何故ですか?それに私がCoreなのも理由が解りません』
『廣野花梨は実力も人気も【D€STRU】No.2に相応しい。でも彼女はCoreに成れないのよ』天羽蓮がニヤリと笑った。
『それからCore3人でダントツ最下位は椎名くるみ、あんたよ。まず神咲芽美に勝ちなさい』
『神咲芽美さんを超えろって事ですか?絶対無理ですよ!』
『私に勝つより簡単でしょ?』
『その選択肢は駄目ですよ。最強の二択じゃないですか。私にとっては天羽蓮も神咲芽美さんも憧れで雲の上の存在です』
『じゃあ廣野花梨にしたら?』
『駄目です駄目です!廣野花梨さんも最強の選択肢じゃないですか!!』
『面倒くさい女。まあ良いわ、どうせこの二人には勝って貰わなきゃならないしどっちが後でも先でも関係ないわ』
天羽蓮はスクリーンの電源を切り解いた長い髪を束ね直した。それはレッスン再開を意味する。