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ウォーキング、それは旅

写真は、「Voyage autour de ma chambre わが部屋をめぐる旅」という、グザヴィエ・ドメストル著のブックカバーです。自身の部屋に6週間監禁された若い役人が、部屋を大海原に喩え、思考の中で「旅」を続ける、という、18世紀末に書かれた話です。

監禁ではありませんが、フランスでは、長いこと外出が制限されています。
今日まで53日間、殆ど家から出ない生活をしてきました。買い物は7~10日に一度、散歩は3日に一度程度だったかな。
来週より外出制限が徐々に緩和されますがしばらくはこのペースを続けるつもりです。

日本は、もう少し自粛生活が続くようですね。
そこで、今回は、外出自粛中の心身の健康のためにもウォーキングを勧めたい、という文章を載せます。横浜時代に書いたものです。

グザヴィエではありませんが、ウォーキングは何を見る、よりも、何を考えるかが楽しい、という話。
ご参考になると良いのですが。

ご無沙汰しております。
午前10時、気温は23℃の横浜です。
今週から劇的に涼しくなりました。

今朝は余りに涼しいので、近くの公園にウォーキングに行ってきました。
公園は遊具エリアが端にあるだけで、その殆どは、芝生に覆われたグラウンドとなっています。芝生を縁取る小径を一周すると、400メートルくらいでしょうか。そこを歩くのです。
散歩より少し早足に、腕もしっかり振って、ひたすら歩きます。

いつもは夕方に歩いています。
いつから始めたのでしょう、気づくと日課になっていました。
最初は夫と2,3周歩いてたかな。
それが彼が仕事で遅いときが続き、一人で歩くようになりました。
それでも、夫が仕事で早いときは、時々一緒に歩きます。
また、気まぐれな子猿たちが、時折一緒に走ります。
でも、そうじゃないときは一人。
公園内をぐるぐる。目指すは10周歩くこと。

音楽も聴きません。
鼻歌は時々。
「飽きない?」
「全然!」

最初の一周は、唯々、気持ちいい。
新鮮な空気が美味しくて、夕風が心地よくて、公園の緑が美しくて、
唯々気持ちいい。

二周目辺りから、公園の静寂さに気づきます。
風の音しか聞こえない。
一日中、子猿たちのおしゃべりやケンカがBGMでしたから、この静かさが染みいります。
何というのでしょう、脳みそがストレッチを始めている、そんな感覚です。

三周目辺りから、徐々に瞑想に入っていき色んな方向に考えが飛びます。

木陰に入り、草葉の匂いがする風が吹けば、何故か、昔聞いた、松山千春の歌が思い出されます。
この歌、同年代の方は分かるかな?

うつむきかけた貴方の前を
静かに時は流れ
めぐるめぐる季節の中で
貴方は何を見つけるだろう
(季節の中で)

この歌に出てくる「貴方」のように、多感だった頃を思い出します。
ほんと、時は流れていきました。
あの時の高校生は、今、ここで歩いている私だなんて。
息が少し詰まったのは、ウォーキングのせいではないね。

また、木々の葉っぱを揺らすような風が吹くと、この季節に亡くなった友達のことを思い出し、「元気?そっちはどう?」なんていう会話を心の中で勝手にしたり。

夕露の匂いが風に乗ってくると、突然、ノスタルジックな気持ちになります。
子供の頃を思い出しているのだど、具体的な想い出は浮かばない。
唯々、とてつもなく懐かしい気持ちになる。

公園は軽い勾配があり、高いところから下り坂に入るとき、視線を少し上げると、今まで気づかなかったきれい夕焼けが目に入ります。
同じ所をぐるぐる回っていたのに、何故、このときまで気づかなかったのだろう。人って不思議。

時間にすれば40分ほどのウォーキングタイム。
この40分の間に、私の心は自由自在に旅します。
山や高原に行かずとも、この400メートルぐるぐるで、十分旅気分です。
近くだし、見晴らしも利くから、安心な分、自分の世界に入れるというメリットもあり、今はこの「ぐるぐるウォーキング」がお気に入りです。

今では、この夕方の40分が楽しみで、この時間を確保すべく、午前中から段取っている感あり。
そういう意味でも生活にメリハリをもたらしてくれています。

……ということで、ウォーキングの喜びをシェアさせて頂きました。また行きます!

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