感想 映画「ヘアスプレー」
うーん。やはり、何度見ても面白い。楽しい。お洒落。感動する。かっこいい。
また「ヘアスプレー」を借りて見ている。好きな映画にも繰り返し見たい作品とそうでない作品があるのだが、「ヘアスプレー」は迷わず前者である。
人種差別。容姿差別。古い固定観念の縛り。あからさまな職権乱用。親の七光。
現代と何ら変わらない、というより、遥か古代から何一つ変わっていないであろう問題の数々。重たいテーマを軽やかに明るく描けるのは、どんな困難に直面しても主人公があくまで「白人」だからかもしれない。「黒人」と共にデモに参加し、「歌とダンスを前にして人種なんて関係ない!」と主張する彼女を、偽善者や自己満足と切り捨てる人もいるかもしれない。
だが、彼女は行動した。友達のために警官に立ち向かった。歌って踊って憧れのボーイフレンドやママを変えた。彼女はときに涙しながらも、堂々と自分の言葉を使って大人やライバルと渡り合った。ティーンエイジャーが人生のキャリアを捨てて自分の正義を貫く覚悟をし行動したのだ。フィクションであってもなくても、偽善では収まらないかっこよさがある。
私がこの映画を好きな理由の一つは、きっと主人公が運命を待つだけのヒロインではないからだ。誰かや何かの影に隠れることなく、次々行動していくからだ。あと、「私は私で最高なの!」と全身からにじみ出る堂々とした歌いっぷりとダンス、ステップが大好き。
さて、もっともらしいことは終わりにしてただ「ココが好き!!」という感想に移る。
ファッションがお洒落!!
60年代ファッション好きなので、目の保養この上ない。主人公や親友のブラウスとチェックのスカートというスクールファッションは勿論可愛いし、バービー人形ガール(注:アンバー)はほっそい手足とキュートなドレスが実に似合っている。ウエストから下を膨らませたあのデザインはダンスでターンすると本当に可愛い。
「黒人」の子たちが纏う鮮やかな色合いは肌と服の相互作用で引き立てあっている。サーモンピンクのドレスや真っ赤なシャツ、煌びやかなスパンコールがとてもゴージャス。豊かな色彩感覚。ボディコンシャスなデザインも素敵。
ジョン・トラボルター!!!
なんと言ってもジョン・トラボルタの女装。ママ。そしてダンス!!! あの格好でヒールでよく踊れるなあ?! と感動する。プロはすごい。私は彼の他の作品を見たことが無いので、ジョン・トラボルタといえばママである。だから彼のすっぴんを見てもジョン・トラボルタだとわからない。でも最高であるジョン・トラボルタ。
歌、ダンス、ミュージカル
ミュージカルが映画になったのだから、歌とダンスは必須である。みんなよく歌う踊る。すごい。リズム感。体を思い通りに動かせる喜びや楽しさが伝わってくる。
途中、「白人」と「黒人」の音楽性を対比させるようなシーンがある。「国による音楽性の違い」なんてピンと来なかった私でもわかる両者の違い。優劣なんてない、ただ環境や感受性によって育まれるものの奥深さを感じた。
私の好きな映画には「雨に唄えば」や「メリーポピンズ」などミュージカル映画が含まれる。それらは「繰り返し見たい」映画だ。
欲望に忠実な大人たち
主にバービー人形ガールのママだが。ずいぶんあけすけであからさまで倫理観が少々破綻していてナルシストで侮蔑屋皮肉屋、まあ一言で「超性格が悪い」大人である。わかりやすく徹底した差別主義者であるからこそ、最後にスカッとするので作品の内容としては必要悪である。ヤな奴、なのだが主人公パパを誘惑しようと頑張る場面で笑ってしまい憎みきれない。生き写しのような娘に「ママ、もう1930年代じゃないのよ」と言われてるのも密かなポイント。
楽しめやりきれとことんまで!!!
と、何度も背中を押される。人は何時でも何歳でもいつまでも夢を叶えられる。幸せや自分の価値は誰かに決められるものではない。自分は自分を愛していいし、「自分最高!」は魔法の言葉。頭のストッパーを外して楽しんだもの勝ちなのだ。
パーティーで出される料理がとても美味しそうだったり主人公パパの奇抜センスだったり言葉だったり、ペニーがキュートで最推しだったり。この映画を好きな点がたくさんある。この映画を知るきっかけになったおおたうにさんの著作に感謝を。