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国立西洋美術館のミレイ
明後日4月9日(土)、国立西洋美術館がリニューアル・オープンするのですね!
美術館の facebookに、
こちらの作品とともに皆様のお越しをお待ちしております
と 2020年に新収蔵した作品が紹介されていました。
ジョン・エヴァリット・ミレイ『狼の巣穴』1863年
うわーーっ、赤い!。ただ 第一印象は実際に作品を見ないとわかりません。
『狼の巣穴』ってどういうこと?と思ったのですが、赤茶色の背景に目を凝らしていたら画面の左後方にグランドピアノの脚らしきものが見えてきました。子供たちがグランドピアノの下の部分を “狼の巣穴” に見立てて遊んでいることから、この題名になったそうです。
実際に狼は “巣穴” を作って生活しているのでしょうか?。
調べてみると野生の狼は、4−6頭の子供を産んだ母狼が 子育てのために巣穴を作るのだそうです。父親や群れの仲間も子育てを手伝い、子供たちは8週間ほどで巣穴を離れていくとか…。ふむふむ、自立前の子供たちが敵から身を潜めている秘密の場所なのですね。
絵画作品『狼の巣穴』に描かれているのは、ミレイの実際の子供たち。
左から、長女エフィー、長男エヴァレット、次女メアリー、次男ジョージ。
最終的に8人兄弟姉妹となる子供たちは、狭い空間に身を寄せ合って「秘密基地」のように遊んでいたのです。
そういえば、ミレイが自分の子供をモデルに描いた他の作品を見たことがあります。
国立西洋美術館・浅野菜緒子先生の論文『モデル、ミューズを超えて : ジョン・エヴァレット・ミレイをとりまく女性たちと その貢献』によると、
母親エミリーにはじまり、妻 エフィ、グレイ家の姉妹たち、そして娘たちに至るまで、一族の女性たちの面々 は、様々なかたちでミレイの制作に関わり、寄与した。その役割は、一般的に知ら れ る モ デ ル とし て の み な ら ず 、資 料 収 集 や モ デ ル や 小 道 具 を 調 達 す る 制 作 助手、ひいては依頼主と交渉する代理人まで、多岐にわたる
のだそうです。ミレイの成功には家族の存在が欠かせなかったのですね。
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ミレイが『狼の巣穴』を描いた1863年、彼は最初のファンシー・ピクチャーを手がけます。ファンシー・ピクチャーとは、
「空想的な絵」という意味で、18世紀の後半に英国で流行った風俗画の一種。特にジョシュア・レノルズやトマス・ゲインズバラは、愛らしい子供や若い女性を仮装させるなどして空想的に描き人気を博した。風俗画の中でも、深みのある物語よりも情緒を優先させる絵画と呼んでよいだろう(アリソン・スミス先生)
先日も<メトロポリタン美術館展>でレノルズのファンシー・ピクチャー『レディ・スミスと子どもたち』を観てきました!。オーディションを勝ち抜いた子役が空想の物語を演じているように 度が過ぎるほどの可愛らしさでした(笑)。
ミレイが手がけた最初のファンシー・ピクチャーがこちら。
左)初めての説教(1863年)
右)二度目の説教(1863-64年)
いずれも長女エフィー(1858-1911年)が5歳の頃にモデルを務めました。
左)厳かな礼拝にふさわしい振る舞いをしようと背筋を伸ばし、一生懸命に気を張っているエフィー。
右)二度目の説教では、服装は同じですが、箱型の使徒席にもたれかかって居眠りするエフィーの様子が描かれています。
あどけない表情や仕草が微笑ましく、親しみが持てる可愛さです。
エフィーの魅力を知り尽くした父親の強みでしょう。
とは言え、「初めての説教」→「二度目の説教」と連作にしたこと、またこれらの小さな作品を数多く制作したことから、やはり流行のファンシー・ピクチャーが顧客を惹きつけ人気を博することを察知し、その狙いのもとに描かれたのだと思います。
では『狼の巣穴』はどうでしょうか、もう一度見てみましょう。
『初めての説教』と同じ年に描かれていますが、ファンシー・ピクチャーとして市場の需要に応える狙いがあった というより、無邪気に遊ぶ自分の子供たちを純粋に描いた!という印象です。
まだ画像でしか見ていないので断言できませんが。。。
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さて国立西洋美術館が所蔵するミレイ作品といえば『あひるの子』(1889年)。
描かれたのは『狼の巣穴』の26年後になりますが、こちらは空想の物語に登場する子どもを愛らしく描いたファンシー・ピクチャー。
こちらの作品とともに皆様のお越しをお待ちしております
というのですから、二つのミレイ作品は横に並んで展示されているでしょう。
『あひるの子』は121.7 × 76 cm、『狼の巣穴』は83.8 x 114.3 cm。
同じくらいの大きさですね、こんな感じでしょうか?
とてもとても、楽しみです。
<終わり>