Le yusée

7年前から美術鑑賞が趣味になり、仕事を辞めて6年間美術館で働いていました。現在は美術と…

Le yusée

7年前から美術鑑賞が趣味になり、仕事を辞めて6年間美術館で働いていました。現在は美術とは関係のない普通の会社員に戻ったばかりです。 2019年に滞在したパリのこと、美術に関する情報や日々のアレコレを投稿しています。

マガジン

  • 日々のアレコレ

  • 画壇の明星

    古本屋さんで見つけた 1950年代の月刊誌『国際文化画報』。戦後成長期の日本から見た世界の文化と、特集記事 “画壇の明星” を中心に 当時の美術界を覗いてみました。

  • 美術のアレコレ

    美術に関するアレコレを、思いつくまま書いていきます。ルーヴル美術館「日めくりカレンダー」の作品に関する情報も書いています。

  • 美術展

    美術展に行った感想、気になった作品や作家について書いています。

  • パリ滞在記

    2021年9月から約3週間滞在したパリについて書いています。帰国後 興奮冷めやらぬうちに一気に投稿しました。

最近の記事

『海馬の夢』 とヴェネツィアの俳句

古本屋さんに並んでいた一冊の本、 『海馬の夢』(深夜叢書社)。 「私の本だ!」と即 購入しました。 実は「海馬」という単語、いえ、その “字” に執心していたので、ろくに内容を確かめることなく持ち帰ったのです。 *************** どうして私が「海馬」というタイトルだけ見て、即購入したか・・・については本筋から離れるので、この記事の最後に書きます。お時間ある方だけお読みください。 *************** 何について書いてあるのかよくわからないまま

    • 画壇の明星(23)② ・ <ムリーリョ展>

      先週に引き続き 70年前の月刊誌『国際文化画報』1954年1月号の特集【ルーヴル博物館案内】です。 前回は ① ディーリック・バウツ(右のページ)について書いたので、今回は ② ムリーリョ『聖家族』(左のページ)について投稿します。 70年前の記事に簡単な解説があります。 ふむふむ。何となく言いたいことは伝わってきます。 ++++++++++ バルトロメ・エステバン・ペレス・ムリーリョ(1617-1682年)は、17世紀スペイン黄金時代の【バロック】の画家。ムリーリョ

      • 画壇の明星(23)・ネーデルラントの「バウツ」

        古本屋さんで見つけた1951-1954年の月刊誌『国際文化画報』。その特集記事【ルーヴル博物館案内】や【画壇の明星】についてシリーズで投稿しています。 美術界の巨匠たちは 70年前の日本でどのように紹介されているのか、そして70年前、日本という国はどんな様子だったのか・・・。 前回、1954年2月号を投稿したのですが、1月号を飛ばしていたようです。 というわけで、今回は1954年1月号です。 ******************** 今月号の特集【ルーヴル博物館案内】は、

        • 緑の中で

          森の中で緑に囲まれて一日中ボーッとしていたい。 眼精疲労のせいなのでしょうか、目を閉じると まるで無数のデジタル時計がチカチカ数字を点滅させているような・・・そう、宮島達雄氏のアート作品が脳内に埋め込まれているような感覚に襲われます。 私の体が緑を求めているようです。 緑色の絵画を思い浮かべてみましょうか。 まず思いつく作品は、東山魁夷『緑響く』。 私が好んで鑑賞する絵画作品(例えば、イタリア・北方ルネサンス絵画)とは全く別物の、まるでデザイン画のような作品。『緑響く』

        『海馬の夢』 とヴェネツィアの俳句

        マガジン

        • 日々のアレコレ
          70本
        • 画壇の明星
          27本
        • 美術のアレコレ
          113本
        • 美術展
          78本
        • パリ滞在記
          41本
        • Agenda 2020
          10本

        記事

          白い世界

          最近仕事でPC画面をずーーーっと見ているため、眼が辛い・・・視力が少し落ちたのかしら 遠くのモノに焦点が合わなくなり、頭痛・肩こりも頻繁に起きます。眼精疲労回復のドリンク剤、頭痛薬と湿布は常にバッグとロッカーに常備しています。 仕事以外の時間にiPadの画面をみるのが辛くて、noteもあまり開けませんでした。 先月の終わりには軽いギックリ腰に襲われ、二日間寝込んで・・・。私、大丈夫かしら(笑)。 加えて最近は真夏の太陽が眩しくて・・・。 昼休みに外出したら、目の前で突然フラ

          白い世界

          『二枚の絵』③・大空に舞う鳥

          『二枚の絵』の中で私が見どころNo. 1に選んだのがこちら。 日本の文学者・比較文学者である芳賀徹(はが・とおる)氏が選んだ二枚です。 描かれた時代も国も違うこの二枚・・・ただ漂う空気感には共通点がある予感がします。 左)ブリューゲル『絞首台の上のカササギ』は知っていましたが、右)小野田直武はお名前さえ知りませんでした。 ちょっと調べてみます。 小田野直武(1750-1780年)は、江戸時代中期の画家。 平賀源内から簡単な陰影法や遠近法を学び、また平賀源内所蔵の洋書挿画(

          『二枚の絵』③・大空に舞う鳥

          … からの『二枚の絵』 ②

          前回からご紹介している『二枚の絵』。 各界の著名人50名が、世界中の名画から二枚の絵を選び、比較しながら絵に隠された物語を読み解いていくという、毎日新聞・日曜版(1995年〜1998年)の連載を編集・再構成した本です。 ◉1ページ目 … それぞれの著名人が二枚の絵を選んだ理由は、選者の個性と世界観がドーーンっと出ています。新鮮な驚き、共感、納得もあれば、「そうかなぁ」「私とは違うかも」といった、ちょっとした反発を感じるところも面白いのです。 ◉2、3ページ目 … 見開きで左

          … からの『二枚の絵』 ②

          <TORIO展>・・・からの『二枚の絵』

          <TORIO展>の会場。共通のテーマで描かれた三作品をセットで鑑賞しているとき、ふと思い出したのが、我が家の本棚に眠る本、『二枚の絵』。 二枚の絵を紹介してくれる「各界の著名人」には、 建築家の安藤忠雄氏、哲学者の梅原猛氏、詩人の大岡信氏、作家の高樹のぶ子氏、詩人の俵万智氏、作家の陳舜臣氏、美術家の横尾忠則氏、などなど総勢50名。 4年ほど前、古本屋さんの隅っこで見つけた、ちょっと古めかしいこの本。発売当時の定価は2,800円とありますが、確か800円で売っていました。め

          <TORIO展>・・・からの『二枚の絵』

          <TORIO 展> からの・・・

          職場から頑張れば歩ける距離にある東京国立近代美術館。 金曜日の仕事を終えて <TORIO展> に行ってきました。 ********** 「TO」kyo(東京)、Pa「R I」s(パリ)、「O」saka(大阪) の文字を組み合わせた<TORIO>なのですね。 超目玉作品があったわけではないのですが、 「なるほど」「そう来ましたか」「おーーっ、これはイイですねぇ」 など、三つの作品をセットで鑑賞しながら、展示室で一人つぶやいておりました。 今回は鑑賞時間が限られていたこと

          <TORIO 展> からの・・・

          レイレイとハオコ。動物園と美術館

          前の職場を辞める直前にLINE交換をした元同僚のNさん。 その時 初めて彼女が熱心なパンダウォッチャーであり、上野動物園の年間パスポートを持ち、動物園に通うために最寄りの職場=美術館を選んだことを知りました。 「動物」と「西洋絵画」・・・対象こそ違えど私と似てる(笑。 「えーーーっ!双子ちゃんをまだ見ていないのですか?二人が別々の部屋に移ったことも知らないのですか?」と驚いたNさん。 「ご案内するので、ぜひご一緒ください!」とスケジュールを決めてくれました。 ******

          レイレイとハオコ。動物園と美術館

          画壇の明星(22)②・ピサロらしさの発見

          古本屋さんで見つけた1954年2月号『国際文化画報』。 前回は、特集記事[ルーヴル博物館案内]について投稿したので、今回は本題の[画壇の明星]です。 ********** 特集[画壇の明星]、今回はフランスで活躍した【印象派】【新印象主義】のカミーユ・ピサロ(1830-1903年)です。 70年前『国際文化画報』は、ピサロ作品をこんな風に紹介しています。 おそらく翻訳の問題と、70年前は西洋美術の作品を上手く伝える日本語の成熟が足りなかったせいでしょう、「技法上の激し

          画壇の明星(22)②・ピサロらしさの発見

          画壇の明星(22)①・ジェリコー

          古本屋さんで見つけた1951-1954年の月刊誌『国際文化画報』。その特集記事【ルーヴル博物館案内】や【画壇の明星】についてシリーズで投稿しています。 美術界の巨匠たちは 70年前の日本でどのように紹介されているのか、そして70年前、日本という国はどんな様子だったのか・・・。 今回は1954年2月号です。 ********** まずは特集【ルーヴル博物館案内】。 今月は、テオドール・ジェリコー『メデューズ号の筏』、1816年実際に起きた事件を題材に描いた作品です。 以前

          画壇の明星(22)①・ジェリコー

          デ・キリコとルノワール

          まさか単独の美術展が開催されるとは思わなかった画家=デ・キリコのことを以前 noteに投稿しました。 ジョルジョ・デ・キリコ🇮🇹(1888年-1978年)。 ◉美術史上に名前を残すことになった1910年代に描いた【形而上絵画】のデ・キリコ ↓ ◉【古典回帰】したデ・キリコ ↓ ◉晩年、自身の以前の作風に戻ってきた【“新”形而上絵画】 それぞれの時代のデ・キリコに想いを馳せながらも、やはり1910年代の「叫びたくなるような不安」に駆られるデ・キリコ【形而上絵画】作品が観たい!と

          デ・キリコとルノワール

          【その一枚】 ルノワールのアルジェリア②

          ルノワールといえば、明るく柔らかい光の中で、少しふくよかな女性が楽しそうに微笑んでいる作品を思い浮かべます。 美術展で出会っても「そうそう、ルノワールね」と、知ったかぶりしてじっくり鑑賞しないこともあったのです。 <印象派〜モネからアメリカへ〜ウスター美術館展>で出会った「ルノワールらしくない」作品。強く惹かれたので【その一枚】に選びました(前回より)。 今回は、ルノワールのあゆみ、そして『アラブの女』が描かれた背景について深掘りしたいと思います。 *********

          【その一枚】 ルノワールのアルジェリア②

          【その一枚】 ルノワールのアルジェリア①

          前回の投稿で、 「画家の作品から一枚を選んで記事にする =【わたしの一枚】を、新しいマガジンで投稿していきたい!」 と意気込んでおりました。 しかしまだ絵画鑑賞歴が浅いため、 “わたしの” というほど多くの絵画を観てきた訳ではありません。そしてマガジンを作ってシリーズ化するのは少し荷が重いことに気がつきました。 そこで、その時に出会った 気になる一枚について考察してみました…という気楽なテイストで  【その一枚】 と題して、時折り投稿することにします。 *********

          【その一枚】 ルノワールのアルジェリア①

          幻想の肖像・デューラーの一枚

          古本屋さんで見つけた澁澤龍彦氏の『幻想の肖像』。 澁澤龍彦・・・お名前と作風だけは知っており、普段はスルーしていました。 今回は題名に惹かれて手に取ったところ、澁澤龍彦氏が選び出した作品がなんともわたしの好みにピッタリ。 最初の3–4篇をパラパラめくってノックアウトされました。 この三作品は以前からとても気なる作品で、すでにnote記事にも登場いただいております。 (注意:書籍の名画は、残念ながらカラーではなく白黒印刷です) たとえ紙に印刷された白黒のコピーだとしても、思

          幻想の肖像・デューラーの一枚