西條八十「ぼくの帽子」を『名作童謡 西條八十100選』で読む
西條八十の詩に「ぼくの帽子」という詩があります。
森村誠一の『人間の証明』に出てくる詩であり、『人間の証明』は角川映画で映画化もされましたのでご存知の方も多いと思います。
情感豊かな詩であり、ふつふつとイメージが湧いて出てきます。
いかにも自分がその場にいるような錯覚に陥るのですね。そして、母子間の愛情も豊かに描かれており、なにか懐かしささえ覚えます。
暖かみもありながら、切なさも感じさせる素晴らしい詩ですね。
この詩を読んでいくと、本人でもないにもかかわらず、帽子はどこへ行ったのだろうかと思いに耽ってしまいます。
一行目から不思議とこの詩の世界に引き込まれます。
その後、冷静な感じで帽子のことを説明しているところは、知性的な風情を感じさせます。
帽子をなくして悔しかったとの感情もあらわにしながら、帽子をなくしたのは風がいきなり吹いてきたせいであり、どうしようもなかったとしているところなど、諦観した雰囲気もあります。
帽子を探してくれた若い人のことに触れながら、やはり、帽子は見つからなかったと再び諦観の風情があらわれます。
どこかへ行ってしまった帽子と共に、移り変わりゆく夏、秋、冬の季節を情感豊かに美しく述べます。
最後は、「静かに、寂しく」との言葉で、それこそ、静かに、寂しくという感覚を読者に強く印象付けながら、この詩を締めくくっています。
何とも言えない風情、雰囲気、感覚がある不思議な詩です。
魅力的であると共に魅惑的ともいえましょう。そして、美しい日本語です。
日本の中にはこの詩のように美しいものがたくさんありますので、ひとつひとつ見つけていきたいですね。
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最後までお読みいただき、ありがとうございます。