民法の条文でも、目的語の主題化が生じている。
日本語の文章では、
・目的語を文章の先頭に移して目的語を主題化し、
・もともとあった主語が省略される。
という現象がしばしば生じます。
【例文】
お客様は、落とし物を受付カウンターで受け取ることができます。
・落とし物(目的語)を文章の先頭に移して、目的語を主題化します。
・目的語を示す格助詞「を」→主題提示の「は」に変更する。
・お客様(主語)を省略する。
【目的語が主題化された例文】
落とし物は、総合受付カウンターで受け取ることができます。
同じような現象が民法の条文にもあります。
【例文 ※ちょっと強引に作りました】
騙された者又は強迫を受けた者は、詐欺又は強迫による意思表示を取り消すことができる。
・詐欺又は強迫による意思表示(目的語)を文章の先頭に移して、目的語を主題化します。
・目的語を示す格助詞「を」→主題提示の「は」に変更する。
・騙された者(主語)又は強迫を受けた者(主語) ←この主語を省略する。
【目的語が主題化された条文】
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
民法96条1項は、このようにして生まれたと私は思います。
私は、「詐欺又は強迫による意思表示」を主語だと思い込んでいました。間違いでした。
「詐欺又は強迫による意思表示」は主題でした。もともとは目的語でした。そのことに気が付いたら、96条1項をようやく理解できるようになりました。