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不毛な思いは、夢うつつで。

 タイムマシンができたとしても、未来には行けるが、過去には戻れないんだって。それから、人間が想像したことは、必ず実現できるんだってさ。そして、この2つは矛盾に満ちているようでそんなことは無い。みんな未来に本気で行きたいけど、過去に行くことに本気になれる人の数が少い、それだけなんだ。

 時間を移動することは、ある時間を構成する成分を限りなく同じ状態で、他の時間で再現すること。この時間というものだって、誰かが思いついた考え方に過ぎない不確かなものだけど、その時間があるものとして考えたときに生まれるのが、過去と未来だ。
 とりあえず、できるできないの話に戻ると、ボクにはどちらもできるように思うんだ。だけど、どうしても未来がポジティブに見える要素が多すぎて、そちらのほうが魅力のある世界であるように思えるのだから、本気になれる人も増える。それで未来は行けると言っているんだ。
今、勉強したことが未来で花開く。
今、投資したのは未来の自分のため。
今、出逢えたから未来がある。
未来は並走する「今」の恋敵のように、無視される。恋愛感情を持ってもらえない幼なじみは、微笑んではもらえてもそれ以上になるのは、稀なことのようだ。

 そして、過去。
 みんなちょくちょく過去に戻っている癖に、それを認めたがらない。
 たとえば、直したい癖を気がついたらしてしまっていたり、駄目だと思っていてもついお菓子に手が伸びてしまったり。明日やろうは、馬鹿野郎だってさ。
 でも、こんな風に無意識に行うことは過去と同じ状態をかなり完璧に再現しているのに、それを喜ぶ人は少ない。特に未来に本気になる人にとっては、無駄で屈辱的なことなのだろう。しかも、同じ時間に繰り返す習慣をどうにかプラスに考えて、それが良いことだと説明付けできれば、瞬く間に成長だと言い換えてしまうんだ。
 成長とは未来への一歩で、かなり未来よりの考え方で間違いない。とりあえず、成長だと認められれば、当面は安泰だ。習慣として繰り返し過去を再現していたはずなのに、いつの間にか未来の仲間入りができるから驚きだ。

 人間は、ほとんど毎日眠る。恐らく、同じ場所で眠る。時間も同じくらいの人が多いだろう。
 過去にタイムスリップすることにいちばん近い人間の活動は、睡眠じゃないだろうか。頭の中にあるものも、呼吸の大きさも、体中の筋肉の使い方も。全部、過去のことで満たされていく。疲れがとれるのも、なんとなく過去に戻っているような気さえする。

 しかし、やっぱり何の答えも出なかった。こんなことを考えるのは二度寝に誘う睡魔のせいだ。ぼくが考える悪魔は、バイキンマンをリアルにしたような恰好では無くてもっとカラフルな優しい色をしていると思う。丁度、いま部屋の中を漂っているパステルカラーの春風のように。
 

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雨音ムッツ
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