古本さんと宇宙飛行
トリキでホットジンジャーをズズズと飲みながら、全然月なんて行きたくないです。え、古川さんは行きたいんですかって聞いてくる。
私は月に行きたい。現実的なものでまだ叶いそうな範疇だと、世界一周旅行したい。そんなことを私は宙に喋る。
隣の古本さんは、寒そうにコップに手を添えながら、楽しそうですけど日本でいいですかねーと宙に喋り返す。
古本さんは私よりざっくり5歳以上は歳上のお姉さん。
私が大したことないちょっとしたことをやると、え!すごいですね!って幼稚園の先生並みに褒めてくれる。あ、でも幼稚園の先生は幼児に対して敬語では喋りかけないか。私に向かって話してるみたい。
歳の差を感じさせない懐の深さと広大な宇宙空間を心に飼っている古本さんは、たぶん、ただただ私より大人なだけだ。
古本さんと宇宙旅行しても、たぶん、へえ宇宙ってこんなもんなんですねーって達観した返しをしてくる。あ、月ってほんとに青いんですねーと、さほど興味なさそうに言う。
隣で私は、あれが地球で言う何億光年先の星で、今の現在地が地球から何光年離れてるから、と、デタラメな数字に当てはめながらペラペラと喋る。宇宙に行ったら雲に飛び乗れるのかなとか、星に触れることができるのかなとか、しゃぼん玉を機体のなかでやりたいなとか。
これが歳の差の余裕と言うやつか。違うか、宇宙にも私にも興味ないんだった。
わたしがペラペラと喋る隣で、アマプラで寿司が攻撃してくる映画とか、パペットが刑事になる映画があるんですけど、観ますか?あと、ヒトデ型の宇宙人が出てくる映画とかもあるんですけど、とよく分からない映画の話をしていた。
あー、ホットジンジャー冷めちゃったな。
そんな古本さんが出演している四季の沂の公演は、12月にあります。(古本さんと宇宙旅行のお話は架空)