シェア
無風帯
2021年3月5日 07:08
あれは抑うつの最中。どこまでも沈んでいきそうな心地で、何もできずに座っていた頃。ふと思い立って、本棚からのろのろと、一冊の写真集を取り出したことがある。ばさりとページを開いて、また固まって。再び動けなくなって座り込んだまま。気づけば涙があふれていた。わたしは、うつしいその景色を濡らさないように、自分の顔をそっと後ろにずらした。あざやかな色が、目にまぶしすぎたのかもしれない。そ