「ネクスト シリコンバレー」平戸慎太郎, 繁田奈歩, 矢野圭一郎

「シリコンバレーはもうスタートアップの最先端ではない。」こんなフレーズをウェブブラウザで見つけ瞬間にこの本を購入した。

実は私は現職をあと2年ほどで退職した後にどこかスタートアップが盛んな国で働いて見たいと考えている。特にイメージしていたのはブラジル、インド、ベトナムの3カ国。これらの国々では中国の急成長に負けず劣らずの急成長を起こすポテンシャルがあるのではないかと考えた。

しかし今回こちらの「ネクストシリコンバレー」では三つの国を紹介しておりますがその中にはインドしか入っていない。紹介された国はイスラエル、インド、ドイツ。インドとドイツはともかくイスラエル??なんて思いながら読み進めると「一度はイスラエルに行かねば」と思わせる内容でした。ここでは作中で紹介された3か国のビジネスの特徴を簡単にまとめたいと思う。

①イスラエル

今回のメインとも言えるイスラエルの紹介。イスラエルは次世代のシリコンバレーとして数年前から注目視されているが、その特徴は圧倒的なスピード感だという印象を受けた。それは常に失敗を恐れないマインドを有した起業家たちがそのスピード感を可能にしていると思う。信頼されるのはシリアルアントレプレナー(連続起業家)という部分には日本との差を感じた。

また、イスラエルには秘密主義の傾向があり、そんな彼らが意見を酌み交わす場所がバーとのことだ。情報を得るのが難しい文化の中ではバーで激論を交わし、人脈を作る。日本の飲みニケーションとは若干異なる印象を受けた。いつかはそんなバーに飛び込んでみたいものだ、、、

②インド
ご存知の通りIT大国と呼ばれるインドでは以前はより良い条件を求めてインドから海外に出て行く人材で溢れていたが、現在はインドに還流することが一般化している。IT教育がより発展しているインドではスタートアップも増加している。将来的に中国の人口を抜くと言われており、人口増加に向けたスタートアップが続々と登場しており、2024年までには5万社の設立を目標としているとのことだ。

スマートシティとして有名な都市はバンガロールが有名だったが、実は第二のスマートシティにはハイデラバードが注目されていて(全く知らなかったが、、、)、マイクロソフトやアマゾンも進出している。インドのスタートアップの業種はキャッシュレスやデータ管理など今後伸びる人口で混乱をきたす分野を重点的に開発している気がする。作者はこれらのスタートアップを①国内マーケット向け②海外市場向けの二種類に分類している。

特に海外向けのスタートアップは面白い。特に面白かったのはエビの養殖をエビが餌を食べる際の音を利用して養殖を効率化するというビジネスだ。こんな考えを思いつく人材がいるところはさすがインドだと思った、、、、。ただインドのビジネスでは「ゼロイチ」が少なく、劣化版が量産されているとのことで、逆にこの人口でゼロイチを作る方が不可能に近いだろとも思う。

日本企業とインド企業は自動車のスズキが表すように良好な関係に思える。実際、インドのスタートアップに日本の大手企業も注目している傾向があるらしいいが、一方でアイデアだけをいただいて日本企業はGIVEがないのだとか、、、、

③ドイツ
ドイツ、特にベルリンは次のシリコンバレーの最有力候補らしい。
ベルリンには他のスタートアップ企業とは違う3つの特徴がある。

①ビックテック主導のビジネスではなく、市民や環境のためのエコシステム
②急速な成長を求めないマイクロアントレプレナーが多いこと
(マイクロアントレプレナーとは各国を移動しながらチームを組みプロジェクトベースで起業する価値創造型のハイスペック・ノマド集団。)
③web3.0やブロックチェーンの中心地であること

作者曰く、ベルリンのスタートアップにはアーティストとホワイトハッカーが融合したかのような考えが既存の大企業に屈せず、正面から戦うスタートアップ精神に繋がっている。
特にこの本でもっとも印象的だったエピソードが、日本にも昨年設置されたGoogle for startups Campusをベルリンに設置することを発表したところ住民が地価の高騰と起業家たちの嫌悪から反対を受けて施設の解説を諦めた、という話だ。これを読んだ時私は単に尊敬した。日本に設立されることになったとき、私も含めて多くの日本人が喜んだはずだ。だが、ドイツ人はそれをしなかった。そんな彼らの起業マインドをすごいと思う。

<まとめ>
この本を読んだ際に一言思ったのは「この国まだ行ってない。」

これまで色々な国を周ったが、世界にはもっと知るべき部分があるのだなと感じた。(安直ですが、、、)
特にドイツには惹かれた。これまで海外でドイツ人に会うたびに日本人に近い考え方だなと感じることが多く、将来行こうと思っていた国の一つだが、現状に満足しない若者たちで溢れかえるベルリンでは好きを仕事にっとよく聞くフレーズを自分の手で成し遂げる文化が根付いているのだと思う。