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人差し指で、下衆を撃つ。映画『グラン・トリノ』観賞メモ

映画『グラン・トリノ』を見た(グラン・トリノ - Wikipedia)。
構造が素晴らしい映画だった。
しかし、まとまった文章にする労力がないので、適当にメモ書きする。
ネタバレ含む。

キーワード
公権力 警察 宗教 伝統
男性性と女性性(ジェンダー) 人種差別
戦争 生と死
朝鮮戦争 ベトナム戦争

コワルスキー
頑迷・頑固・古臭い・伝統・保守主義 煙草
グラン・トリノという車を大切にしている
妻も乗せただろう(嬉しそうにタオのデートに車を貸す約束をする)
フォードの組立工だったことが誇り
朝鮮戦争経験を拠り所にする一方、深く消えない苦しみを抱き続ける
チンピラどもを戦争も知らないくせして粋がる馬鹿として下に見ている
人種差別・ジェンダー差別は男性性を獲得するためのコミュニケーションでもある
朝鮮戦争の影響から宗教を信じない
妻は宗教を信じ、その姿勢を彼は否定しない
妻は地球上で最高の女であるというので愛していた
モン族の祈祷師には神秘的なものを感じ
モン族の風俗に一部辟易し、一部歓迎する
最後は復讐の対象を殺さないで、彼らに殺されることで、復讐を遂げる
手を広げて磔刑のように死ぬ
男性性の象徴・従軍経験の象徴であるライターを取り出そうとして死ぬ
警察による復讐の達成
殺さない復讐は神父のおかげか?スー、タオとの友情か?一応いとこを殺すことになるから配慮
父親としての接し方が不器用である分、モン族との友情は家族愛にも似ていた

神父
物語において生と死の意義を問いかけて心理描写をセリフとして引き出す役
信心深い亡き妻の遺志として現れる
宗教による救済を試みるも、最終的に公権力(警察)に頼る
冒頭のコワルスキーの「戦争中に警察は呼べない」という宗教の無力を皮肉る場面とリンク

モン族
ベトナム戦争時にアメリカに加担
コワルスキーにとってみれば、日本も(トヨタ・日本車)朝鮮も同じ「コメくい虫」彼らは中国、ラオス、タイの人。でも全部まとめて黄色人種
朝鮮戦争で殺した子供と重ねて見ていると思われる
コワルスキーとの友情が芽生えるスーとタオ
タオはコワルスキーのおかげで男性性を獲得し、グラン・トリノと勲章を受け継ぐ
2人はコワルスキーに父の面影を重ねている
ただし若い世代のみ。同世代は最後までコワルスキーを毛嫌い
葬式の伝統を軽んじるコワルスキーの孫たち、しかし、スーとタオは伝統装束でコワルスキーの死を悼む


宗教と、そうでないものの対比がよかった。
現実的な解決は、宗教ではなく、警察。
けど、心理的な解決は、宗教もある。
直接的に描かれなかったけど、コワルスキーが冷静になれたのは、妻を亡くしてから、ずっと生と死について考えさせるようにしてくれた神父のおかげでもあると思う。
そして、宗教を信じなかったコワルスキーは、宗教を信じた妻を愛し、宗教や伝統の中にいるモン族を愛し、最後は、自らが「無償の愛」の体現のように、十字架に身体を添わせるように手を広げて死んだ。

構造だけでなく、クリント・イーストウッドの演技も素晴らしかった。

人差し指で、下衆を撃つ。

いい映画だった。


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