常用外漢字の平仮名表記について反対
「ハリス氏とトランプ氏 支持率「きっ抗」全米対象 最新世論調査」(NHK NEWS WEB2024.07.24.19:47)
アメリカ大統領選について何か言おうとしてる訳ではない。
私はこのサムネイルを見て我慢の限界だったのだ。
でかでかと赤い文字で“きっ抗”?
なぜコロンが付く? タイトルにもなぜカギカッコが付く?
それは「拮抗」の「拮」が平仮名で分かりにくいからではないか。
あるいは強調のカッコであったとしても、なぜ漢字表記にしない?
なぜ本来、漢字表記のみで済むところを平仮名と漢字を混淆して書く?
まるで覚えた漢字と平仮名を併用する小学校低学年の記名欄だ。
小学生が漢字を平仮名で書くのは「まだ習ってないから」だが、メディアが漢字を平仮名で書くのは「常用外漢字だから」だ。
そもそも常用外漢字は義務教育の外という意味である。
ならば義務教育でも何でもないメディアは、常用外漢字を漢字表記すればいい。社会人に「まだ習ってない」は通用しないだろう。
メディアに触れるに連れて常用外漢字の平仮名表記がよく目に付くようになった。最近のNHKのWEB NEWSから実際の使用例を挙げよう。
◯常用外漢字を平仮名表記した熟語
隠ぺい・・・隠蔽(隠・蔽ともに常用漢字)
ごう音・・・轟音
対じ・・・対峙
執よう・・・執拗
帰すう・・・帰趨
焼い弾・・・焼夷弾
急先ぽう・・・急先鋒
復しゅう・・・復讐
急きょ・・・急遽
しのんだ・・・偲んだ
席けん・・・席巻(席・巻ともに常用漢字)
ぶ然・・・憮然
まひ・・・麻痺(麻は常用漢字)
安ど・・・安堵
地下ごう・・・地下壕
ひぼう中傷・・・誹謗中傷
ニュースを読んでいると一瞬、誤字かと疑う。これのどこがいいんだ?
隠蔽の「蔽」や席巻の「巻」などは常用漢字であっても平仮名表記である。もはや意味が分からない。
私がメディアに常用外漢字を漢字表記にしてほしい理由は以下の通りである。
1読みにくい
本来は漢字で表す熟語であるはずなのに平仮名を併用するから、かなり読みにくい。地の文章の平仮名と、常用外漢字の平仮名表記が続いた場合なんかは最悪だ(「両者はきっ抗」など)。上記の例で分かっていただけると思うが、ニュースの内容を理解する頭から、誤字かどうか判断する頭に一瞬切り替わる。それが嫌だ。
2難しくない
上記の常用外漢字は、常用漢字に比べて殊更に習得が難しい訳ではないだろう。難易度はほとんど変わらないものが大多数ではないか。拮抗の「拮」は手偏に吉でかなり簡単ではないか。
3「常用外」ではない
上記の常用外漢字は、現代メディアにおいて一般的に使用されるからこそよく見かける。つまり実際には「常用」している。よく使うのであれば漢字で書けばよいではないか。
4思い出せない
常用外漢字を平仮名表記にするという慣行は、読者の視覚による漢字学習の機会を奪っており、全世代における国民または外国人の日本語教育にとって有害である。
5配慮になってない
常用外漢字を平仮名表記にすることは、それによって分かりやすくなることを意味しない。
平仮名だから声に出して読むことはできるが、意味が分からないという状況が生まれるだけだ。表意文字としての漢字の醍醐味である、部首からの推測という行為すら不可能にしてしまう。
これでは日本語の初学者や外国人に対する配慮になっていない。基本的にメディアにおいて、表記の転換は表現の転換ではない。
だから「障害者」を「障がい者」と書くことにあまり意味はないが、私はそれは認める。配慮としてアリだと思う。だけど常用外漢字は違う。
「拮抗」は使用せずに「同じくらい」とか「張り合っている」とかにすればいい。
まとめ
以上より、上記のようによく使用する常用外漢字は、新たに常用漢字として設定し直す必要があるのではないか?
あるいは、常用漢字を一部でも含む熟語については、常用外漢字が含まれていても漢字表記にする必要があるのではないか?
あるいは、常用外漢字もすべて漢字表記にする必要があるのではないか?
国ごきょう育のプロたちが、情ほうでん達のプロたちが、に本ご研きゅうのプロたちが、かん字表きとそのえい響について本きで考えたその行きつく先がこれならば私はがっかりだ。絶たいにかい善をもとめる。