マガジンのカバー画像

今宵のひとくち日記

10
1000文字未満の軽く読める記事です
運営しているクリエイター

記事一覧

残暑こそ本を読みたい。夏の終わりのサマーリーディングリスト

日本にも「読書の夏」を 台風が過ぎ、ようやく「残暑」と呼べるような日々がやってきた。 欧米には夏季休暇にビーチなどで本を読んだりする「サマーリーディング」の習慣があり、著名人が「夏に読む本リスト」を公開している(有名なのはオバマ元大統領)。 日本では秋に「読書週間」が存在するが、そろそろ「夏も本を読む」キャンペーンを大々的に打った方がいいように思う。「読書感想文のために読む」子どもたちだけではなく、大人にも。 理由として、日本の夏は暑すぎる。 2024年はそもそも外出す

たらい舟のロマン~夢の中の佐渡島

前回の記事で柏崎について書いて、或いは佐渡金山世界文化遺産登録のニュースに触れるうちに、子供時代をいろいろと思い出した。 柏崎の小学生の修学旅行といえば佐渡島だ。柏崎の子供はなぜかここで必ずたらい舟に乗せられる。 そして柏崎と佐渡の繋がりで全国的に有名なのは「佐渡情話」で知られる「藤吉とお弁」の民話だろう。 これがよく知られているあらすじなのだが、別バージョンでは番神堂の僧侶に拾われた後その僧侶に惚れ込んでしまい、今度は板切れに乗って泳いで柏崎へ通い詰めるエピソードも追

今日の読書『にほんのうた 音曲と楽器と芸能にまつわる邦楽通史』

私の実家は(私を除いて)とにもかくにもガチガチの音楽一家、というのは何度かnoteに書いたとおりです。 とくに母はたいへんなビートルズのファンで、今もポール・マッカートニーが来日するとなれば空港で出待ちするという(ガチ恋…)オタク精神を発揮しているのですが、そんな母が「若手の音楽批評で唯一信頼できる」と数年前から太鼓判を押していたのが「みのミュージック」でした。 そんなみのさんが出した「通史」がこの本です。 私は音楽専門ではないにせよ史学科の人間でしたので、「通史」にカテ

内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙 開幕!いろどりの中世宗教世界へ

国立西洋美術館に2015年~2020年にかけて寄贈された、中世ヨーロッパの装飾写本リーフを中心とする内藤コレクション。 今まで常設展のなかで少しずつ展示されてきたが、コレクションの全容を辿ることのできる企画展が2024年6月11日(火)より国立西洋美術館で開催されている。期間は8月25日(日)まで。 中世の修道院で作り続けられた彩飾写本。獣皮紙・インク・絵具など高価な材料を惜しみなく使って編まれた書物の世界のなかでは、現代ではその多くが失われてしまったゴシック~初期ルネサン

今日の読書『ボドイ:哀しき兵士』

ヘッダーはベトナム・ニンビンにある東アジア最大の仏教寺院・バイディン寺。ビエンチャン在住の友人が以前旅行で足を運んでいたが、とてもいいところだと聞いた。 ハノイからなかなか距離があるが、仏教好きとしては絶対に一度は行ってみたい。 「ボドイ」(bộ đội)とはベトナム語で兵士を意味する語だ。 しかし、日本で「ボドイ」と呼ばれる存在は基本的に軍属の人間のことではない。 かれらは技能実習制度などを利用して来日したものの、なんらかの理由で犯罪行為に手を染めるようになったベトナム

フェルメール(帰属)《聖プラクセディス》が撮影可能に! 国立西洋美術館に行ってきました

上野動物園を楽しんだ帰りに久々に国立西洋美術館へ行ってきました。常設展の展示が多少変更されており、新展示・初展示作品も。 企画展のない時期は空いていて見やすいですね。 アムステルダムのフェルメール展に貸し出されていた《聖プラクセディス》が戻ってきました。さらに撮影可に。 帰属、という表記ではありますが、近年の国外でのフェルメール展では真作として扱われることも多いです。西洋美術館じたい「フェルメールが見られる美術館」と紹介されることが増えていますね。他に誰もいない状態でゆっく

今日の読書『文明交錯』

こんなに興奮する読書は久しぶりだった。 読むのをやめられない。ページを繰る手が止まらない。 そういう中毒にも似た面白さを持った本に出会えるのは、私にとっては年に一回あるかないかである。 『文明交錯』はインカ帝国の君主であるアタワルパが「逆に」欧州を侵略する架空の歴史物語だ。 この小説はもともとローラン・ビネがジャレド・ダイヤモンド『銃・病原菌・鉄』に衝撃を受けた体験から構想が始まっている。 まさしくインカ帝国が滅んだ原因であるこの三つをアタワルパがどう克服したかというと

マックスコーヒー、千葉から見るか?水戸から見るか?

マックスコーヒーが好きだ。 マッ缶が好きだ。マックスが好きだ。 マックスコーヒーの全てを愛している。 理由はひとつ。 わたしが茨城にルーツを持つ人間だからである。 マックスコーヒーは地元の誇り? 茨城といえばマックスコーヒー。マックスコーヒーといえば茨城。 マックスコーヒーになじみのない地域の読者に軽く説明すると、これは乳成分がすべて加糖練乳……知る人ぞ知る激甘缶コーヒーである。 以前は茨城・千葉・栃木限定で販売されていた「北関東の名物」だったが、今はかなり広い地

今日の読書『原爆初動調査 隠された真実』

「オッペンハイマー」の公開に併せてこの記事を書く予定だったのですが、かなりズレ込んでしまいました。 広島・長崎に原爆が投下された際、米軍とソ連によって秘密裏に調査された「残留放射線の測定」と隠蔽の事実を明らかにし、それが被爆者と核保有国どう影響したのかに迫っています。 「原子爆弾を高空(広島・長崎に投下された高度)で爆発させれば地上での残留放射線はほぼ一切ない」――こう主張したのはオッペンハイマーです。しかし当然そのようなことはなく、爆発の被害を地形などで逃れた一部地域で

今日の読書『ケーキの切れない非行少年たち』

(かなり今更)読了。 もともと少年院に入っていた青年も指導する教育福祉の仕事に携わっていたので、書かれていることに目新しさはなかったです。 少年が犯罪に及ぶ要因に「発達の遅れ」を挙げるキャッチーな冒頭だけでこの本を「読んだ」気になるのは厳禁です。 大切なのは「では、犯罪抑止のためにどうするか」です。 教科学習だけではキャッチアップできない児童の社会性や身体機能(認知機能・身体の連動性など)にもっと目を向け、とりこぼさないよう支援していく(コグトレという具体例まで示されてい