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【読書】そして、バトンは渡された

「そして、バトンは渡された」を読んでみた。けっこう気に入ったので個人的に気に入ったポイントをあげてみたいと思う。


優子ちゃんと森宮さんの絶妙な温度差

森宮さんは「親子ってそういうもんだろ?」とか「父親ってそういうもんだろ?」みたいな感じで「親子とは」「父親とは」ということにこだわりがあって、そこがちょっとズレていてユニークな人。優子ちゃんに元気がなければ大量に餃子を作って食べさせたり、始業式にはなぜか朝からカツ丼を食べさせたり。

一方の優子ちゃんはお父さんではなく森宮さん呼びを崩さなかったり、ピアノの件では本当の親子ならもっと上手に喧嘩できるのかなみたいな感じで悩んだりするものの大きな不満を抱えることなく平和で幸せに過ごしている。

良い関係なのだけど親子関係への熱量というかこだわりの強さに差が感じられて、森宮さんの空回りっぷりが面白おかしく感じられる。それでも優子ちゃんはそんな森宮さんに感謝しているのも伝わってくるから非常に温かみのある関係性がわかって物語に温かみを感じさせる要素になっている。

梨花さんの異常さ

優子ちゃんと梨花さんは実の親子ではないが、実の父親が海外で働くことになった時に優子ちゃんを引き取り、自分が病気になったことを知ると優子ちゃんに悟られないように安心して託せる父親を見つけて結婚しちゃったりと異常な行動力がある。

行動力の源泉は優子ちゃんへの愛なんだけど、そこまでの愛情の強さを発揮する異常性がより梨花さんのパワフルさを際立たせている。血は繋がっていなくても愛情を注げるということは理解できるけど、それでもピアノを弾きたい優子ちゃんのために金持ちの人と結婚したり(実際には最終的に梨花さんはその金持ちの泉ヶ原さんのところに戻るが)シングルマザーとして働きながら育てたりと優子ちゃんが一風変わった生活というか人生を送るのに一役を買うことになる。

それだけの愛情の理由が具体的に描かれないことによって愛情の深さというか異常さが強調されるのがこの作品のいいところだなと思う。映画では病気で妊娠できなくなってしまったという設定になったが、「なんでそこまで出来るんだろう?」を読者に委ねてくれているので、そこを想像するのも読み手の楽しみ方のひとつと思う。

優子ちゃんの変化

3人の父親と生活をしてきて、どの父親も良い人だったから他人から不幸そうに思われても困ったことに全然不幸じゃないという風に思っていた。ただ親子関係というものに、もっとこうあるべきみたいなこだわりもなくてちょっとクールな感じの印象があった。

結婚に向けて泉ヶ原さんに挨拶に行ったり実の父親からの手紙に触れることで優子ちゃん自身が父親はみんな良い人だったと感じられた正体、つまりそれぞれの父親の愛情の形に気づく場面があって、優子ちゃんが本当の意味で父親の愛情を受け取ることが出来たことが非常に印象に残った。

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