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成田山にて

ふと成田山新勝寺にお詣りに行こうと思い立った。
テレビでよく見る有名なお寺だし、まだ一度も行ったことがないし、それに何といっても参道の鰻屋で鰻を食べてみたかった。

京成線で揺られること1時間、京成成田駅に降り立った。
ここ最近は連日だが、今日もじりじりと太陽が照りつけ、参道まで歩いただけで蒸し風呂のような暑さにどっと汗が噴き出る
歩くこと10数分、総門近くの有名な鰻屋に入ろうとしたが、1時間半待ちとのことだったので、番号札をもらって、まずはお寺に参拝することにした。
さすが音に聞く新勝寺で、広大な敷地に数々の立派なお堂があり、順番にお参りしたり見て回ったが、暑さはいよいよ凄まじく息も弾んできた。
敷地の最奥の平和大塔に行き着く頃には、もはや暑さと疲れでヘトヘトだったが、ふと振り返ると森と青空が見えた。

平和大塔から成田山公園を望む

この景色を見たとき、やはり寺院というものは山の中や森の中、いわば現世と隔絶した異界に存在するものなのだなあ、と思った。
だからこそ皆日常とは違う心持ちになるし、何かしら自分の人生を振り返ってみたりする。
いわば、絶えずもがいている現世から束の間逃れて、心安らかに自分を俯瞰できる場所なのだ。
暑い夏の日のこの景色が、今日一番のご褒美になったと思った。

参拝を終えて鰻屋に入り、冷房が効いた座敷でキンキンに冷えたビールを飲んで、鰻重をいただいた。

鰻重

程よい甘さのタレと、ふっくらして柔らかい身、ここまでの疲労がチャラになるほど美味かった。
夢心地で頬張りつつ、やはりこっちが今日一番のご褒美かも、とつい思い直した。
まあ、美味いものを食べているときも、束の間、現世の何やかやを忘れていることは確かだ。
ともあれ、猛暑の最中にここまで来た甲斐はあった気がする。
夏の成田山に感謝。

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