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【連載恋愛小説】これを愛というのか、忘れたいと思うのか

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間も無く50歳になる、桜井貴哉。1人の女性の出会いから、心を無くしていた自分に気がつき、心を取り戻していく。愛するほど、憎悪も味わうことを初めて知る。切なく優しい愛のカタチ。
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#家庭

【恋愛小説】これを愛と言うのか、忘れたいと思うのか(4)

【恋愛小説】これを愛と言うのか、忘れたいと思うのか(4)

 それから、3ヶ月。俺たちは、一緒にいる時間が増えていった。
 
 俺の家に来ることも少なくない。一緒にお酒を飲んだり、2人でご飯を作ったり、寄り添いながらテレビを見たり。

 でも、体の関係になることは、なんとなく避けていた。

 SEXまではしていないけれど、手を繋いだり抱きしめたり…。
 唇から伝わる柔らかい感覚とか。それだけで、とても満たされた気持ちになる。

 世間でいう“普通”の価値観

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【恋愛小説】これを愛と言うのか、忘れたいと思うのか(1)

【恋愛小説】これを愛と言うのか、忘れたいと思うのか(1)

 ただ愛しただけ。

 彼女に俺の気持ちを伝えた訳でもない。
 彼女の好きなものも知らない。

 それでも、俺は15年の結婚生活を手放した。

 そこそこ大きい商社の営業部長。大学を卒業してかれこれ勤続30年以上だろうか。

 男が離婚しても誰も気が付かないもんだな。
 手続き上、人事の一部の人だけにしかわからない。

 周りに隠しているつもりも全くない。
 紙切れ一枚でいつもの日常に変わりはなか

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