3Dプリンターを直して調整してある程度使えるようにした話
購入検討している方、理系出身ですか?理系出身でなくても粘り強さや考えるの好きな人はいますか?
「3Dプリンター興味ある!中古でも安く出てるし買おうかな?」と思って相談してくれた人もいますが「いやー無理無理」となったのでその内容をここで備忘録として載せておきます。
Ender3を中古で買った
proでもなく2019年くらいのモデルのものをジモティーで譲ってもらいました。
価格は激安の¥6000です。
わーいわーいと思ったのも束の間、出力が及第点になるまで苦労します。
何がそんなに大変なのか?
初心者向けに言語化している記事が少ないので3Dプリンターの使用を検討するにはこのあたりのことを手を動かしながら知っていく・経験していく必要があるというのをお伝えします。
キャリブレーション
レベリング
3Dプリンターの拡張性
各場所の名称と機能の理解
スライサーソフト
フィラメント材質と保存状態
3Dプリンターの種類
仕組みを理解
Blenderなど3D図面ソフトの使用
これらの要素を網羅して実験手法的に組み合わせて検討していく必要があります。
故障の原因を分解してく必要があるからです。
Blenderなんかは設計のソフト面なので故障とは関係ありませんが、ソフトをおおよそ使えたほうがいいでしょう。じゃないと作りたいモデルも無料のネットに落ちてるサンプルのみになります。
最近はipadで子供向けにモデリングできるソフトもありますね。
まず条件の洗い出しが大変
論理的思考力がないと厳しいです。そして故障の原因を追及するには手作業で解体する必要もありますが、検索するときは各部位の名称や言語化も必須となります。
知り合いはこの時点で「気が遠くなりそう」、とコメント。
理系でも気が遠くなったよ。でも買ったからには活用したいからね。
例えば、私が持っているこのEnder3は積層タイプのプリンターです。(すごく簡単に伝えると1層ずつモンブランみたいに材料が積み上がっていくことで出来上がる)
そして最近の流行は光造形タイプのものもあります。仕上がりが綺麗なんだそうです。
さて今回私が出会した故障は「フィラメント詰まり」です。状態は一つでも原因は複雑に絡み合ってあるんですね。
全部洗い出してみるとこんな感じです。
チューブ径がフィラメント径と合っていない
射出ノズルのつまり
ヒーター部分の詰まり
冷却ファンのタイミング遅延
フィラメント送り出しの引っ掛かりが弱い
フィラメントが湿気ている
スライサーのデータとノズルがマッチしていない(出るタイミングスピードとZ軸への移動スピードなどが違っている)
まだ他にもありますがこれをしらみ潰しに見ていくしかないんですよね。トホホ。
フィラメントが湿気てたら乾燥剤とで密閉保管するなど方法もあります。
最初のうちはこのうちの3つくらいを疑って一つずつ潰していくようにします。
例えば射出ノズルつまりなら分解して見てみる、フィラメントを熱して通し直す、ピアノ線などで通して通りを良くするなどです。
けれども185°くらいで溶けるフィラメントはヒーターで熱すると大抵外に出てるんですよね。うーんと悩む。
地味に面倒なキャリブレーション
レベリングとも言いますが、台の水平具合をこちらで調整しないといけなんですね。そもそも射出されていたけれど1層目が台と接着してなくてあまり出てないように見えた。なんてこともありますから。
そのレベリング調整も4点の台裏面のネジの締め付け具合でコントロールします。自動ではないです。射出ノズルと台が0.1mm程度になるように自分の手先で紙を噛ませて調整します。
レベル調整のバネが弱かったら部品なども自分でこさえないといけません・・・。
このレベリングが杜撰だとノズルが台と接触してこんな悲惨な削れ方をします。
ヒーター部分の詰まりと機構チェック
今回の場合はヒーター部分はあまり関係なかったのですが、ちょっと劣化してるかもという予想もあったのでパーツをAmazonで購入し直しました。
ヒーター部分はノズルの付け直しも必要ですし、一度フィラメントを引き抜く必要もあります。加えてヒーターのセンサーも一度抜きます。
全部付け直してです。面倒・・・
実際に付け直した直後は締め付けの度合いがキツすぎて上部分から漏れていました。この場合はヒーターはつけっぱなしでヘラなどで漏れたフィラメントを取り除くようにします。
埃が開けてみるとすごかった・・・
ちなみに取り替える前はこんな状態です。
ヒーターの下にノズルをつけます。
原因はなんだったのか?
上記の写真の白いチューブがあるのはわかりますか?
このチューブがおそらくフィラメントの径と絶妙にあってなかったか、あるいは熱で収縮してしまったので部分的に通らなくなっていたのが原因かと思います。
実際溝もついてしまっていますね。
写真では外していますが、赤い部分にチューブが刺さっているところは固定ネジ(ボルト?)がついてます。
ちなみに私の小指近くにある黒い物体は冷却ファンです。
モデリングした後にスライサーソフトの設定をいじるのですが、ノズル径の設定をミスるとファンの冷却スピードも変わりますので全部台無しです。
自動でやってくれる3Dプリンターはないのか?
レベリングまでは自動でやってくれる3Dプリンターもあります。例えばダヴィンチとか有名なのですが、自動であること→拡張性がないともいえます。
修理するには業者頼みにもなりますし、高額です。(送料などかかるから)加えて中古で買ったものだと修理対応してくれるかよくわかりません。
結局新品で買うより痛手を負いやすいのも自動のものです。
拡張性があるプリンターというのは上記のようにヒーターやノズルパーツ、チューブなども自分で公式品以外のものでも付け替えて修理できるという利点があります。
業者修理だと忘れた頃に戻ってくる可能性もあります。
何より自分で修理すると知識や経験が蓄積されます。
光造形のものはどんなもの?
ざっくり(間違ってたらごめんなさい)お伝えすると、積層タイプがモンブランであれば、光造形は液体からのゼリーを作るイメージです。
専用液の入った水槽に3軸方向から光が入り硬化していくのですが、出来上がるとZ軸上方向に台があり、モデルは上下反対方向で液体から出てきます。
気になる人は検索してください。
積層のタイプよりも綺麗に出力されるので人気ですが、なんせ掃除が液体だから手間というのと、変なところで硬化すると液体なので非常に厄介です。
積層であれば熱を通せば溶けるので溶かしながら除去が可能ですが、光造形は変なところで硬化されたら力技でガリガリ削るしかないのかなと・・・
ちょっとリスク孕んでるしまだお高めなので様子を見てます。(当分買わないけど)
スライサーソフトって何?
代表的なソフトではcuraがありますね。
3Dプリンターの奥の深いところは、モデルを全部フィラメントで埋める設定もできれば中はある程度空洞にして外壁をしっかりしたもので出力することも可能です。
そういった細かな設定ができるのがスライサーソフトです。
イメージとしては.stlで3Dモデリングしたデータをcuraにかけて1層ごとのデータとして.gcode出力します。
このデータをプリンターに取り込んでプリント開始!となるわけです。
そしてざっくりとですが、設定や確認事項をここに書いておくと、
ノズル径のサイズを確認し設定
フィラメント射出スピード(基本自動)
外壁厚み
内部密度
1層目厚み
最上層厚み
フィラメント材質
こんな感じです。
特に1層目がしっかりと台(ステージ)とくっついてくれないとそのままノズルは動くのでモジャモジャの髪の毛みたいなものが出来上がります。前の層とくっつくのが条件です。
またノズルは0.4がよく使われるサイズですが、積層が汚いと外壁がこんな感じになるので、
積層をノズルの半分の厚みサイズにするなど工夫が必要です。
そういったことを駆使してできたのがひとまずこちらです。
塗装したら細かいところは気にならないと思う。
ちなみに一層目がどうしてもステージとくっつかない場合はスティックのりがよく使われています。
ここまで読んでトライしようと思う方にはおすすめです。
とはいえ自分の創造物が出てくるのは面白いよ
原因追及を複合的に見ていかないといけないので、全然楽しくない!という人も多いと思います。なのでメルカリでよく売りに出されています。
そしてフィラメントもしっけると出が悪くなるので天気も左右するのかよ・・・とね。
私は前職がこれと似たことを手探りでやっていたのでカンコツの部分もありつついじってました。
でもこうして成功するとよっしゃ〜〜〜とドーパミンがでます。
嬉しいものです。
そして原因の切り分けで書いていて思ったのが、プログラミングのエラーやデバック作業でもこの考え方はあるあるです。
よく質問さいとなどで「動きません、どうしたらいいですか?」と初学者の人も抽象的な聞き方をしています。答える側としてはかなり詳細を聞かないとこの3Dプリンターのごとく答えようがないので(問題が複雑化・多い)、もっと言語化してください。詳細を・・・ということになります。
そしてそれに答える親切な人も多くはないので「何がしたいの?」「ググれ」と一言で済まされることもよくあります。
プログラマー目指してたけどやめたって人の多くはここで辛抱や探究的な部分が続かず、面白くない・うまくできないとなり辞める人も多い印象です。
論理的思考と粘り強さが大事になってきますね。