YNKダイバーシティセミナー「生理用品設置から考える働きやすいオフィスとは?」を実施しました。
こんにちは!わたしの暮らし研究所の沢田です。
東京建物がオフィスビルの運営・管理をしているYNKエリア(八重洲・日本橋・京橋)で、2023年6月から3物件(東京建物八重洲ビル・東京建物日本橋ビル・東京スクエアガーデン)で生理用品の設置が開始されることになりました。
この度、東京建物とビルテナント向けの事前説明会を共催させていただきました!今回はその様子をレポートします。
題して、「(八重洲・日本橋・京橋)YNKダイバーシティセミナー①
生理用品設置から考える働きやすいオフィスとは?」。
ビルマネジメント第一部 部長 園部さまよりご挨拶
この度の会は、東京建物が管理される八重洲・日本橋・京橋にある3棟のビル運営に関わるビルマネジメント第一部 部長の園部さまよりご挨拶いただきました。
生理用品の設置について、以前は思いもよらなかったことだが、今では快適にビルをお使いいただくために設置が必要だと認識していることや、今後の働く環境には生理用品が必要だと考えられている旨をお話いただきました。
中尾さまより応援メッセージ
日本バイオデザイン学会特別顧問であり、元テルモの会長も勤められた中尾浩治さまからも応援メッセージをいただきました。中尾さまには、昨年登壇者としてご一緒したTEDxKioichoがきっかけでLAQDAの活動を応援していただいています。
猪俣さまより、この度の設置について
猪俣さまからはこの度の施策について改めてご説明いただきました。東京建物八重洲ビルでは、4月から全女性トイレ・多目的トイレに生理用品の設置を行っていること。追加して、6月からは京橋の東京スクエアガーデン、東京建物日本橋ビルにも設置する旨、ご説明いただきました。
セッション(1)なぜ今、フェムテックなのか?
令和3年、4年度と、経済産業省「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」の運営事務局でプロジェクトマネージャーを勤められていた林さまよりセッションいただきました。
登壇者紹介
林さまからは、昨今のフェムテック市場の概要と、LAQDAプロジェクトも採択されていた経済産業省の補助金事業の全体概況をお話いただきました。
月経・PMS・更年期などは、少し前までは個人で解決するべきものだと思われてきましたが、昨今では企業が問題解決に着手しようとするようになってきたという変化があること。また、月経・PMSは悩んでいる層が多い一方で、「どれくらい困っているか」「その困りごとの解決にフェムテックを活用した際どのような効果が現れるのか」が見えづらい状況があるという課題があったことについてご説明いただきました。
そのため、経済産業省の補助事業では、「プレゼンティーイズム(労働生産性)」と「自分のキャリア形成においてどのように意識変容・行動変容があったか」という2つの指標でエンドユーザーのフェムテック活用前後の変容を測定されたそうです。結果、どちらの指標においてもフェムテックを活用することによって状態が改善する傾向が確認できたとのことでした。
林さまからの話はとても興味深く、ご参加のみなさまも熱心にメモを取られていました。
セッション(2)オフィストイレの生理用品設置をきっかけに企業のDE&Iアクションを考えよう!
続きまして、令和4年度、経済産業省「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」に採択されていた、LAQDAプロジェクトについてセッションを行いました。LAQDAの事業は「女性活躍を推進するための生理用品設備設置とコミュニケーションをデザインする教育事業」。
代表沢田より、なぜオフィス環境において、トイレに生理用品が必要なのか、をお伝えし、また、なぜ単に設置するだけでなく「関係者を多く巻き込み、みんなで考えること」が重要なのか、DE&Iにつながるのか、お話させていただきました。
登壇者紹介
2019年から行なっている生理用品設置の実証実験の結果、「生理用品が使いたいときに使えず、困った経験がある方」が95%もいらっしゃることや、「生理用品を使わなければいけないときに手持ちがない場合の調達時間」が15分にも及ぶことをお伝えしました。
実は男女間だけでなく、女性同士でも会話できてこなかった生理の話。レクチャーだけでなく、インタラクティブにお伝えし、クイズでは会場のみなさまにもご参加いただきました。
実証実験参加企業によるパネルディスカッション
続いては、令和3年、4年度と、経済産業省「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」事業でLAQDAが展開していた「女性活躍を推進するための生理用品設備設置とコミュニケーションをデザインする教育事業」実証実験にご協力いただいた企業さまによるパネルディスカッションです。
パネラー紹介
・ 生理用品設置にご興味をお持ちいただいた理由について
まずは、昨年度事業でなぜ生理用品設置の実証実験にご協力いただけたのか、みなさまにお伺いしました。
東京建物 猪俣さま(以下、敬称略):最初は管理しているビルのテナントさんから、沢田さんを紹介されました。その後「生理用品がトイレにないと働く人が困る」という沢田さんの話を聞き、驚きました。オフィスに生理用品が必要と考えたことがなかったので、家に帰ってパートナーに聞いてみたら、「(生理への対応は)本当に大変だよ」と言われ、「そうなんだ」と知りました。
LAQDAの実証実験には2021年のスマホで動く筐体の他、スチール製の躯体でも実証実験をし、今年4月から東京建物八重洲ビルの全ての女子トイレ・多目的トイレで生理用品設置をしています。
最近、大学での設置が増えています。彼らが大学を卒業し、企業に勤め始めたときに、ビル側の設置がなかった『え?社会に出たら、オフィスには生理用品がないの?』となると思います。彼らが企業で働き出す前に、大学と同じようにトイレには当たり前に生理用品がある環境を提供できるようにしたいと考えています。
また、沢田さんからは『テナントが置きたいという希望を寄せても、ビル側が置いてはいけない』と断る例があると聞きました。生理用品の設置は、必要な人たちにとって大切な取り組みであり、社会みんなでやっていくべきことなのではないかと思いました。
東京建物 園部さま(以下、敬称略):沢田さんのデータを見たときに、単純に「15分」という時間がもったいないと思いました。自分の部下が、ずっと不安に思いながら仕事しなければいけないとしたら、変えたい、と。彼らには働きやすい環境を用意して、全力で仕事に向かって欲しいと思いました。
また、多くの企業で働く女性の数が増えてきている状況があります。この度の生理用品は、今まで気づかれなかったことにも問題があります。設置すれば終わりではなく、なぜ女性たちに生理用品が必要なのか、本人たちの能力が十分に発揮されるために社会がどうサポートしていく必要があるのか、理解していくことも必要だと思っています。
三井不動産 山田さま(以下、敬称略):
最初のきっかけは、あるテナントさまのお話でした。その企業さまが一部で生理用品の設置のお取り組みをされていて、それがとても良かったので全社に広がったというお話でした。同じ頃、外資系企業からは「グローバルでは置いているので、日本でも置いてもらったほうがいい」との声があがり、事業者側からのサービスとして検討するようになりました。
LAQDAの実証実験では、本社に設置しました。自分たちが使っているオフィスに置いてみることになり、利用者として安心感が生まれることがわかりました。今まで、会議と会議の間に、自分のロッカーに立ち寄ることができないときがあり、生理の時は不安がありました。しかし、トイレに生理用品を設置することによって、そういった不安感がなくなりました。
本社で実施してみてよかったので、今後はミッドタウン八重洲でも生理用品を設置する予定です。
INDUSTRIAL-X 横田さま(以下、敬称略):実は、わたしの前職では女性社員率が75%で、当時は当たり前にトイレに生理用品がありました。今回の実証実験の話は、広報から相談があったのですが、そのときに「そういえば、うちの会社でやっていなかった」と思いました。当社はDX推進を行なっている企業でもあり、新しいことは取り入れたいです。また、生理用品設置は必要な設備で、実証実験をやらない理由がないと思い、すぐ決断しました。
実際に設置して、社員からも「とても助かる」といった前向きなコメントが多く寄せられました。
・ これからの「働く環境」はどうあるべきか
猪俣:今回の実証実験での生理用品の設置をめぐっては、テナントさんから「東京建物さん、すごいですね。こんなことまで考えてくださるんですね」とも言われました。
これから、宗教や国籍が違う方など、多様な人材が同じ職場で働くことが増えてくる。そんな時代に、働く人たちのバックボーンを理解して、その人たちの力をいかに引き出していけるのかをオフィスの提供側から考えたいと思いました。包摂的に多様な人をサポートできる環境がある、そういうオフィスが選ばれていくのだろうなと思います。
園部:今は、働く環境が家もオフィスもあるという状態かと思います。オフィスが家とは違う別の良さがあると思ってもらえるようにしたいです。そのためにはスピード感よくいろんなことを試していきたいと考えています。
今回のことを経験して、社内で明らかに変わったのは、このセンシティブな話題に対して、うちの部署だけ「生理」という言葉が飛び交うようになったことでした。セクハラになりそうで話しづらい話題でしたが、部内ではそういう会話ができるようになったし、他の部署から変な目で見られることもなく『あの部署は、そういった会話をしているんだなぁ』と自然に受け止められるようになりました。
また、不動産会社では、防災関連など「いつか」のために大きな予算が動いています。生理用品は、コストで考えると他の施策の比ではないくらい小さい上に、「いつか」必要になることではなく、定常的に困っていることです。社会に必要な取り組みとして、どんどん広めたいと考えています。
山田:働く環境が、オフィスだけではなく自宅もあるという状況になった今、オフィスを提供する事業者としては、「オフィスに来てもらう」ことを意識しなければならなくなったと感じています。ビル事業者としては「来たくなるオフィス」を考えていく必要があります。
生理用品があるからといって、オフィスに来たくなるわけではないとは思いますが、ネガティブなことを少しでもつぶしていけると良いと思いました。
横田:山田さまのご意見にもあったように、コロナ禍でリモートワークが当たり前になりました。どこにいても仕事はできるのですが、会社の成長フェーズに合わせてみんなで顔を合わせて仕事をすることも大事だと思っています。そんな中、生理のときに出社する際に感じるマイナスの気持ちを少しでも楽にしてあげたいと思っています。なるべく快適に安心感をもって過ごせるオフィスを目指していきたいと思います。
今回の実証実験を通し、社員から「急なときに助かるのはもちろんのこと、社員を大事にしている会社ということがわかり、ありがたいと思いました」との声があがってきたのは、とても嬉しかったです。人事総務冥利につきると思いました。
登壇者同士の掛け合いもあり、終始笑顔の絶えないパネルディスカッションとなりました。社会の課題をいろんな立場の人たちでともに考えることで、「みんなで解決する」ことに一歩進めそうです。
ご参加のみなさまもこの笑顔。時折、メモを取る方も多く、これからのあるべき働く環境について考える機会になったのではないかと思います。
イベント後はご参加のみなさま同士での名刺交換会を行いました。園部さまからは「イベントを実施することは他でもありましたが、こんなに参加者の方が残ってお話されていることはとても珍しい」とのこと。今までタブーと思われて話ができなかった話題であるだけに、熱気に包まれる会場となりました。
最後は会場に残っていただいていた方々と写真撮影を行いました。
みなさま、お忙しい中、ご参加ありがとうございました!
今までオフィスになかった生理用品設置。その当たり前を変えていくことは簡単ではありません。でも、わたしたちは、お互いのことを知って助け合うことで、もっと生活が人生がゆたかになると信じています。
これまでも、これからもオフィスの「困った」を解決する仲間として、継続してイベントを行なっていきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します!
<おまけ>東京スクエアガーデン設置の様子
6月から東京スクエアガーデンと東京建物日本橋ビルで、生理用品の設置が開始されました。DE&Iを体現する施策として実施する旨説明するボードとともに、生理用品を提供しています。
📎 主催・協力・会場
主催:東京建物株式会社
共催:わたしの暮らし研究所株式会社
会場提供:東京建物八重洲ビル
📎 参考
・令和4年経済産業省フェムテック等サポートサービス等実証事業特設サイト
https://www.femtech-projects.jp/
・東京建物のみなさんと「せりぽん」を組み立てたレポート記事:
YNK(八重洲・日本橋・京橋)のエリアからDE&Iを! 東京建物さんでYNKエリアに設置する「せりぽん」組み立て会実施!
・生理用品設置のパネルにて展開したnote記事
生理用品のトイレ設置でDE&I Action!ーー設置検討をきっかけに、ダイバーシティ&エクイティ&インクルージョンを考える。