信じてる⁉︎
どうしてパンはすぐ焦げるのだろう。
パンをトースターに入れ、窓からじっと見つめる。
まだかな。
うーん。まだちっとも焼けない。
そうだ、コーヒーの準備をしよう。
あっ、あとヨーグルトも食べたいな。
なんて、少し目を離すと
あれ?なんかにおっ...!!あーー!
またやっちゃった。
炭と化した真っ黒い物を見つめため息をつく。
パンて、見てる時は焼けないのに
ちょっと目を離した隙に真っ黒になるよね。
それを聞いた友人は
『えっ、焦げる?タイマー使わないの?』
えっ、タイマー?
タイマー。もちろんあるのは知ってる。
でもさ、パンの種類とか厚みとか
その日の温度とか湿度とかーー
そんなので焼き加減変わるじゃない。
『職人じゃないんだから。そんなに気にしなくて大丈夫だよ』
信じていいの?
『信じるも何もみんな普通に使ってるよ。調理時間の目安書いてあるでしょ』
えーー!そうだったのか。
そんなの全く信じてなかった。
あっ、でも電子レンジは時間入れるよ。
うん。タイマー使ってる。
というか、時間入れないと動かないし。
そこで気がついた。
温め自動というボタンがあることに。
番号入れれば全解凍や半解凍、飲み物だっていい感じに温めてくれる。
でも、それらのボタンは使ってない。
そう、信じてないのだ。
自分の目で見て、触った感覚で、あとはなんとなくで調理時間を決める。
そして...
色んなもの爆発させたなぁ。
信じてないといえば、洗濯機もだ。
スタートした後、ちゃんとぐるぐるしてるか
しばらく様子を見てる。
あっ、冷蔵庫も。
開けた時必ず冷えてるか確認する。
冷凍庫は、棒アイスが柔らかくなってないか
ぎゅってしてみる。
実家に帰った時のこと。
父がパンをトースターに入れ、タイマーをぐるっと回す。
そして、なんの迷いもなく居間に戻ってテレビを見出した。
えっ?パンの様子見ないの?
唖然とする私をよそに、美味しそうに焼けたパンにたっぷりピーナツバターを塗る父。
おぬし、なかなかやるなー。
何もかも信じないわけではない。
どちらかと言うと、信じやすいタイプだ。
なんでだろう。家電だけは信用してないみたい。
よし、タイマー使ってみよう。
信じてるからね。
トースターを撫でながら呟く。
でも...
信じてるって言ってる時点で信じてないよね。