星を狩る者たち
かつてあった、でも存在しない記憶たちのために。
会いたいとそっと願った感情は褪せることなく本物だった
最後だと知らないあなたの笑顔だけ刻もうとした刻みたかった
なにひとつ悟られぬよういつもより少し優しくあなたを抱いた
語り得ぬ昼の逢瀬のきらめきが時おり胸で光って消える
まだ夢の中のあなたを置いたまま新宿という闇へ出てゆく
悔恨も孤独も乗せてまた今日も山手線は廻り続ける
僕もまた孤独のひとつと知っている みぞれは線路へゆっくり溶ける
改札を抜けて静かに振り返る東京駅はオレンジの海
ここ以外ならばどこでも構わない 五分後に出る寝台列車
行くあてがある訳じゃないだとしても鉄路はきっと明日へと続く
サンライズ出雲の窓に頬を当て雪の流れる街を見ていた
四件の着信はみなあなたから裏切りという優しさもある
米原を過ぎた頃降るぼた雪は初めて出会った頃の雪だね
絞り出すようなあなたの「わかった」が心に深く記憶を刻む
泣き声を隠してくれた東京へ向かう石油の輸送列車が
罵倒などしない人だと知っていたその優しさに耐えられなかった
夜明けまでただ懸命に生きてゆく僕もあなたも星を狩る者