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好きなものを好きなように表現するということ:夏祭り×JITTERIN'JINN

らむです。今日は予定が詰まっていたので、昼間にサクッと走ってきました。少しでも走ると頭がスッキリするのと、がんばってよかったって気持ちが生まれます。そのため今後もなるべく、仮に、もっと短い隙間時間でも走ったり、歩く習慣は大切にしたいなと思いました。

海の彼方の雲が一直線に、長々と伸びているのが、
めずらしくて一枚撮りました。
そんな雲を、波がまるで真似をするかのように、
横一直線でゆっくりと雲と平行して流れる。
とても美しくて、素敵な光景でした。

昨日に引き続き、今日も好きな音楽の紹介へ。JITTERIN'JINNの「夏祭り」について、自分の観点なども織り交ぜ、綴っていきます。

冬に夏らしい曲のご紹介となり、季節はずれな気もしますが、冬だからこそ、夏っぽい曲で寒さを乗り越える。そんな日があっても良いと思うのです。

まさに今日のランニング。天候は恵まれていましたが、相変わらず寒くて……これは気持ちが高まって、走るペースを上げてくれそうな曲を持っていこう。そう思って、「夏祭り」を楽曲プレイリストに入れました。

効果は抜群。

ノリやすい少し早めなテンポのドラム、ストレートにどこまでも伸びていきそうな歌声とそこから生まれるメロディ、間奏の痺れるほどにかっこいいギターの音。それらが寒さを忘れさせてくれ、気持ちの良い走りをサポートしてくれました。

また、真冬に「夏祭り」を大音量のイヤホンで聴いて、海沿いを走っているのは、きっと私しかいないのではないか?そんな希少性に、ちょっとだけおもしろみを感じて、一層、楽しいランになりました。

「夏祭り」はWhiteberryの歌うものもあるかと存じます。私はWhiteberryが歌っていたのを聴いて、「夏祭り」を知った世代です。JITTERIN'JINNもWhiteberryも、どちらも素敵で大好きな「夏祭り」なのですが、私にはあと一つ、忘れられない「夏祭り」があります。


数年前、私がまだ20代の頃、当時勤めていた会社の同期と旅行に行きました。人数は私含めて4名。東海地方で働いていたときに、同じ支店に同じタイミングで配属された同期です。

秋頃に、三連休で休みの取れる日があったので、一泊二日でそこまで遠くない、温泉のあるところが候補に上がりました。全員、名古屋近辺に住んでいたため、そこからアクセスの良い温泉地。場所は岐阜県にある下呂温泉に決まりました。

移動手段は、同期が持っている自動車でした。助手席に乗る同期がDJとなり、色んな音楽をかけて2時間程度のドライブが始まりました。途中でサービスエリアに寄って、ソフトクリームや飲み物を賭けて、じゃんけんで勝負をしたり。いつもの仕事の忙しさを忘れて、些細なことではしゃいで、笑って、楽しい時間を過ごした、素敵な思い出です。

下呂温泉に到着しました。旅館は風情があり、ロビーには綺麗な中庭もあって、入った瞬間からテンションが上がったのを覚えています。受付でチェックインを済ませて、最初に私たちは中庭を散策しました。そこには足湯があり、これがまた絶妙な温度感で気持ちが良かったのです。

サービスエリアで始まった賭けじゃんけんは、まだ終わっていません。足湯でビールが飲みたいと一人の同期が言って、賭けじゃんけんが再開しました。この足湯で数回のビールじゃんけんが繰り広げられ、私もそこそこに負けて、同期分のビールを買わされました。でも足湯とビールは最高だった。

旅館の足湯の後は、明るいうちに街中をぶらつきました。そこでも都度、お酒を賭けてじゃんけんをして、みんな飲んでばかりいたもんですから、それなりに早い時間から酔いが回っていました。

旅館に戻り、食事を済ませ、ひとっぷろ浴びて、寝る。いいえ、元気な20代はまだまだ眠りません。浴衣に羽織りを着て、またまた外に繰り出しました。趣のある射的屋さんで本気になって遊んだり、ほのかに灯りの着いた、温泉街を歩いたり。もちろんビールじゃんけんも継続中。

そんなこんなで、さらに酔いを回した私たちが、最後にたどり着いたのはスナックでした。とても夜っぽい、ネオンカラーのライトが私たちを引き込んだのです。建物はある程度、年季が入っており、店内は外からでは全く見えません。わずかにカラオケ音が聴こえており、怪しい雰囲気を醸し出してました。

数分間、4人で協議をした後、なかなかない経験になるかもしれないぞ、ということでお店に入ることを決意。最初は恐るおそるでしたが、扉を開けると、優しそうなママと、50代かそれ以上に見える男性のお客さんが一人いるだけで、とても居心地の良さそうな雰囲気がただよっていました。

4人ということもあり、カウンターではなく、テーブル席に案内されて座りました。私たちは焼酎のボトルを頼み、再び飲みなおし始めました。

私たちのような若者が来るのがめずらしかったのか、ママは色々と話を振ってくれました。そのおかげで緊張が次第にほぐれ、私たちも気軽にコミュニケーションが取れるようになっていきました。

また、一人で来ているおじさまも、私たちの受け答えがおもしろかったのか、会話に混じり、笑みを浮かべたり、ツッコミを入れてくれたりしていました。

そんな心地の良い空間では酒が進みます。ボトルの焼酎は底をつき、いつの間にか二本目に突入していました。同期のうち二人は、うたた寝を始めてしまっていました。

そろそろ頃合いかなと思い、私がタイミングを見て、お会計をもらおうとした時、

「兄ちゃん、一曲歌っていきな」

一人で来ているおじさまが、私にそう告げたのです。

私はそこまで歌うのが得意ではないので、もう一人まだ意識がある同期に目配せして助けを求めました。しかし、同期もそれなりに酔ってしまっていたようで、何も言わず親指を上に立てて、まるで頼んだ!というかのように、私にボールをそのまんま返しました。

私は、お店に入る前にあった緊張が再び込み上げましたが、ここは断るわけにもいかないなと思い、テーブル席からおじさまの座るカウンター席に移動しました。

曲を入力するデンモクをママから渡されました。私は急いで、酔って処理速度が大幅に遅くなっている、ちっとも今この場では役に立たなさそうな、自分の脳みそをフル回転させて考えました。

今の雰囲気に合う曲は?
誰もが知っていそうな曲は?
おじさまが好きな曲は?

そんなことを考えていると、おじさまが私に、

「早よ入れえな」

決して冷たくではなく、遠慮なく歌いなさい、と言ってくれるような声色で私にひとことかけました。

とはいえ私は、自分がボールを持ってしまっているので、焦る一方です。

そこで私は、

「お好きな曲やアーティストはいますか」

おじさまにそう問いかけました。私もカラオケは得意な方ではないですが、社会人になって、それなりに今接しているおじさまくらいの年齢層の方とカラオケに行ったことがあります。そこで、どんな曲がウケるのか、歌って喜んでもらえるかは、ある程度の感は働くようになっていました。

幾人かアーティストの名前を言ってもらえれば、もしかしたら歌える曲があるかもしれない。そんなことを考え、そして良かれと思って。おじさまに問いかけたのでした。

「バカ言うんじゃないよ、好きな歌、うたわなきゃつまらんよ。おれは兄ちゃんの好きな歌聞きたいんよ。もう、すぐに決まらないなら、おれがおれの好きな歌うたうわ、その間、考えときいな。」

そう言って、おじさまは私のカウンターの前に置いてあるデンモクを手に取り、迷わずものの数十秒で一曲入力しました。

JITTERIN'JINNの「夏祭り」でした。

その時、恥ずかしながら、JITTERIN'JINNはまだ知らなかったのですが、「夏祭り」はWhiteberryが歌っていたのを聴いていました。そのため、曲のタイトルが映し出される画面を見て、わずかなイントロが流れた瞬間に「夏祭り」であるのはわかりました。

「夏祭りだ。でも、結構音程が高い曲だぞ……」

「夏祭り」は、男性にとって原曲キーで歌うには難しい、そう私は捉えております。いったい、おじさまはどのように歌うんだろう、と自分の歌う選曲はそっちのけに、そんなことを考えてました。

君がいた夏は 遠い夢の中
空に消えてった 打ち上げ花火

曲のキーなど関係ない。おじさまの低く少しかすみのかかった地声が、夏祭りの歌詞を纏い、マイクを通して、スナックの店内に優しく響いた。おじさまの地声は、歌手の吉田拓朗さんをイメージさせる優しい声色だった。

また、「夏祭り」は曲の運びが早いため、息継ぎもそれなりに必要な曲だ。それを見越しているのか、曲の一節一節の終わりでは、最後に声がかすみの中に消えるような息の出し方で歌っていた。次の一節に入る前に、十分に息を吸えるようにするためだ。

おじさまの歌う「夏祭り」は、JITTERIN'JINNやWhiteberryの歌うものよりもゆっくりと聴こえ、より侘び寂びのようなものを感じられる、これまで聴いたことのない唯一無二の「夏祭り」だった。

ママ、私、かろうじて意識のある同期は、おじさまが静かに、少し体を左右に揺らしながら、心ゆくままに歌っている姿を、音の出ない、ただのジェスチャーの手拍子をしながら、見守った。

好きな曲を好きなように歌う。その姿はとても煌めいて見えた。

誰かに合わせて、その場を適当にそこそこ良い雰囲気にできたら良いや。なんて考えていた自分が恥ずかしくなり、酔いが一気に覚めた。そういえば帰ろうと思い、会計をもらうはずだったのだが……

二本目の焼酎のボトルが空くまで、意識の失った同期はそのままに、私も私の好きな曲を、好きなように表現することを意識して。思い切りよく歌った。最後はおじさまとママと歌い、語らう素敵な時間を過ごした。


「夏祭り」は、多くの方が知る、夏の定番曲。もちろん冬にも気持ちを高めて、寒さを和らげてくれるおすすめ曲です。合わせて、好きなものを好きなように表現することを教えてくれた、私にとって大切な一曲です。







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