[9/6]ポストコロナ期の記憶が労働市場の軟化を抑制(ウェルスファーゴ)
8/6(金)に発表された失業率は予想の4.2%にとどまりましたが、雇用数は予想を下回り、市場予想の16.5万人増に対し14.2万人増でした。
この投稿では、ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのグローバル・マーケット・ストラテジスト、ゲイリー・シュロスバーグ氏へのYahoo Financeのインタビュー・コンテンツを通じ、雇用統計の解釈と9月の株式市場の見通し、企業の雇用トレンドと生産性、同氏が考える安心度の高い投資先についての見解を共有するものです。
[主なトピックス]
雇用統計は労働市場の減速を示唆するが、景気後退の兆候は見られない
雇用の伸びは鈍化しているが、総労働時間は増加
労働確保の難しかったポストコロナ期の企業の記憶が従業員解雇を慎重にさせている
生産性向上が企業成長の鍵だが、短期的な経済不確実性から、企業は新規雇用を抑制し、急激な生産性改善は見込めない
経済減速局面ではディフェンシブなセクターや質の高い企業へ投資
(1)インタビュー
[マディソン・ミルズ](Yahoo finance)
さて、今朝の株式市場はまちまちの動きを見せています。これは、今週の様々な経済データが市場を上下に揺さぶった結果であり、今日発表された雇用統計でその動きが最高潮に達しました。
では、9月の市場は、8月と同様に一時的にボラティリティが上昇した後、月末に向けては落ち着きを取り戻すのでしょうか?それとも、今後さらに不安定な動きが続いて行くのでしょうか?
まず、この点について、我々一週間を通してストラテジストたちに意見を伺いました。彼らの見解をご紹介します。
[マディソン・ミルズ](Yahoo finance)
本日こちらには、ウェルズ・ファーゴのグローバル・マーケット・ストラテジスト、ゲイリー・シュロスバーグさんをお迎えしています。ゲイリーさん、本日はお越しいただきありがとうございます。
それでは、市場の反応についてお聞かせください。ウォール街では、25ベーシスポイントか50ベーシスポイントの利下げについて意見が分かれているようですが、本日の雇用統計おデータからは、彼らが期待していた明確な確認は得られなかったようです。ゲイリーさんはどうお考えですか?
[ゲイリー・シュロスバーグ](Wells Fargo)
決定的な要因は見当たりませんでした。確かに雇用統計のレポートにはいくつか弱い部分がありましたが、全体的に見ると、雇用統計が強い部分を考慮すれば、依然としてソフトランディング、つまり緩やかな経済減速に向かっていると考えられます。
経済が確実に減速しているのは明らかで、この時点で景気後退の可能性を否定することはできませんが、まだそれを示す十分な証拠が出揃っていませんし、今後もデータが発表される予定ですし、8月の雇用統計が景気後退の証拠を提供したとは言えないと思います。
[ブラッド・スミス](Yahoo finance)
それはどうしてですか?
[ゲイリー・シュロスバーグ](Wells Fargo)
雇用の下方修正があり、そこが注目されました。雇用の伸びは鈍化しているものの、労働週(Workweek)や雇用の先行指標である派遣労働者の雇用は依然として減少しているものの、その減少幅は大幅に緩和されました。また、平均労働週が増加し、製造業の残業時間も増えました。
総合的に見ると、労働市場での総労働時間、つまり働いた時間の合計は実際に増加しています。目立つ報告ではありませんが、経済成長が緩やかに減速している状況と一致しており、少なくともまだ景気後退に陥っていないと言えるでしょう。
[マディソン・ミルズ](Yahoo finance)
特にU6、つまり広義の失業率(※)に注目しています。これは、人々が自分の望む仕事や希望する労働時間を得られているかを示す指標です。この数値が少しずつ上昇していて、前月比で1ベーシスポイント上回りました。これは、企業が大規模なレイオフに踏み切る前に、慎重に調整を進めている兆候と言えるのでしょうか?
[ゲイリー・シュロスバーグ](Wells Fargo)
そうですね、企業が従業員を解雇することには慎重になっていると思います。ポストコロナ期の影響、つまり労働力不足や労働者の確保が難しい状況がまだ残っているため、これが現時点では雇用市場の鈍化をある程度抑える要因になると考えています。ただ、雇用市場が徐々に軟化している兆候は明らかです。求人件数は減少していますし、あなたが指摘したように、広義の失業率も解雇を避けたい企業の姿勢を反映しているようです。これらの点から、今後も浅い雇用サイクルを経て、堅実な着地が期待できるのではないかと考えています。
[ブラッド・スミス](Yahoo finance)
興味深い点だと思います。先ほど、RSMのチーフエコノミストであるジョー・ブルスエラスさんと数字を分析していた際、彼が生産性について触れ、それが企業の収益成長にどのように反映されているかという話をしていました。この生産性について、ゲイリーさんはどのように評価していますか?また、企業が投資家に対して、揺らぎのあるマクロ経済見通しにもかかわらず、自分たちの強みをどのようにアピールしているのか、生産性の観点から見えているものはありますか?
[ゲイリー・シュロスバーグ](Wells Fargo)
そうですね、今後の経済サイクルを通じて、各従業員の労働時間を増やし、生産性を向上させようとする動きが出てくると思います。もし経済成長が持続すれれば、生産性向上が期待できると思います。AIや経済のデジタル化、その他の技術進展の恩恵が生産性の数字にまだ現れていませんが、長期的にはその影響が見えてくると予想しています。ただ、今のところ、特に今後1年ほどは、経済の見通しが不安定なため、企業は新規雇用を控えるでしょう。生産性の急激な成長は見られないかもしれませんが、企業は少なくとも生産性の低下を防ぐために最善を尽くすと思われます。
[マディソン・ミルズ](Yahoo finance)
そのような不確実性の中で、投資家がどのような分野で安全の確保ができるのでしょうか?
[ゲイリー・シュロスバーグ](Wells Fargo)
経済が減速する局面では、ディフェンシブなセクターが一般的に強さを保つことが多いです。我々は、そのようなセクターを注視しつつ、ファンダメンタル的に強い分野や見通しの比較的良好な分野に焦点を当てています。たとえば、素材セクターは現在厳しい状況にありますが、市場のファンダメンタルズを考えれば、しっかりと持ちこたえるはずです。また、工業セクターも減速を見越しており、経済が回復する過程で金融サービスも期待できるでしょう。ディフェンシブな戦略としては、質の高い企業に注目することです。財務体質やバランスシートがしっかりしている企業は、経済の減速期にも耐える力があります。大型株の流動性が高い企業や米国市場への投資は、投資家にとって一定の安全策になると考えています。
[ブラッド・スミス](Yahoo finance)
ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのグローバル・マーケット・ストラテジスト、ゲイリー・シュロスバーグさん、本日はお時間をいただきありがとうございました。金曜日のこの時間にご出演いただき感謝しています。
(2)オリジナル・コンテンツ
オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご覧になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。
Yahoo Financeより
(Original Published date : 2024/09/06 EST)
以上です。
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だうじょん
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