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「Google vs. 米司法省」投資家が少なくとも知っておくべきこと(10/9)


 本日の米国株式市場では、アルファベット(GOOG/GOOGL)の株価が1.53%下落し、先週高値からマイナス3.93%で推移しています。この株価下落は、司法省がGoogle検索事業の分割を示唆したことが大きな理由に挙げられます。司法省は、Googleがインターネット検索市場で違法な独占状態にあると認定し、反トラスト法に基づく複数の救済措置を検討していましたが、昨日10月9日、Googleの反トラスト法違反に対する救済措置案として検討中の枠組みについてのドキュメントを公開しました。
 司法省が検討する措置には、契約制限やデータ共有義務、検索アルゴリズムの公開、ChromeブラウザやAndroid OSの分割など多岐にわたっており、Google側はこれに対し反論を行っています。今後、司法省からは、11月20日に最終救済案が発表される予定となっていますが、既に株価にも影響を与えている本件、現状と今後のスケジュールや見通しについて、メディアでの討議やインタビューが行われていましたので、以下、BloombergとYahoo Financeのプログラムを紹介したいと思います。ご参考下さい。

 尚、今回公開されたドキュメントに掲載されている米国司法省が検討している主要な救済措置は以下の通りです。

  • 検索配信と収益分配の制限:Googleのデフォルト契約や事前インストール契約を制限し、検索エンジンや関連製品の収益分配に関する取り決めを禁止することが検討されている。

  • データの蓄積と利用:Googleに対し、検索に使用されるインデックスやデータをAPI経由で公開すること、または検索結果や広告のランキングシグナルを共有することが求められている。

  • 検索結果の生成と表示:Googleが契約やその他の手段を使って、競合他社がWebコンテンツにアクセスするのを妨げないようにする対策や、人工知能関連の機能に対するオプトアウトの提供が検討されている。

  • 広告の規模と収益化の是正:広告の透明性を高め、広告主がGoogleの機能からオプトアウトできるようにすることが考えられている。

  • 回避および報復防止措置:Googleが救済措置を回避したり報復したりするのを防ぐための追加措置が検討されている。

  • 構造的および行動的措置:GoogleがChromeやAndroidなどの製品を使って検索関連市場で優位に立つことを防ぐための構造的・行動的な対策が含まれる。これには、Google検索を優先するような設定の禁止や、新興技術(例: AI機能)への優遇の制限が含まれる。

  • 教育啓発キャンペーンの支援:ユーザーが自分に最適な検索エンジンを選べるようにするための教育キャンペーンを支援することが検討されている。

  • 監視およびコンプライアンス体制の整備:救済措置の実施を監視するため、Googleに対して技術委員会の資金提供や定期的な報告を義務付けることが考えられている。また、違反が発生した場合の是正措置や罰則の導入も検討されている。






(1)現状と今後スケジュール


[キャロライン・ハイド](Bloomberg)
 
リアさん、8月に司法省がこの件を裁判官に提案するかもしれないと報じていましたが、その後の進展について教えていただけますか。

[リア・ナイレン](Bloomberg)
 これから救済措置のフェーズに入ります。昨晩、司法省が最初の提出書類を提出しました。これは、救済措置案の作成にあたり、現在検討中のさまざまな内容の枠組みを示すものでした。正式な提案は11月20日に行われる予定で、その際にはGoogleに対して求めるすべての内容が具体的に示されることになります。しかし今回の書類は、いわば「これが現在検討している案の一部です」といったものです。そして、最も注目されるのはやはり、企業分割に関する案です。

[エド・ラドロー](Bloomberg)
 スケジュールについて詳しく見ていきましょう。11月20日を挙げていましたね。まず、提案内容が固まる段階です。その後、Googleが反論の機会を得ます。来年の4月に裁判が予定されていて、2025年8月頃には何らかの判決が出るかもしれません。この流れを説明していただけますか。

[リア・ナイレン](Bloomberg)
 司法省は、「これが私たちの求める具体的な内容です」という提出書類を出す予定です。それが会社の分割であれ、データ共有であれ、さまざまな措置が含まれます。その後、Googleにはそれに対する返答の機会が与えられます。そして、これから数か月にわたり、再び多くの証拠開示が行われます。Googleの関係者へのインタビューやさらなる資料収集が行われ、すべては来年4月下旬に予定されている2週間の救済措置に関する審理に向けて進められることになります。この審理では、特定の措置がGoogleのビジネスにどのような影響を及ぼすのかについて、証人が裁判官の前で証言します。そして、裁判官は来年8月に、この裁判での決定を正式に下すと約束しています。
 その後、Googleは控訴を開始することができます。控訴には約18か月から2年かかるため、まず8月が最初の大きな節目となり、それから18か月から2年の期間にわたり控訴審が続く見込みです。

[キャロライン・ハイド](Bloomberg)
 次に、Google自身の反応を見ていきましょう。司法省は、Googleのディストリビューション契約が一般的な検索サービス市場のかなりの部分を排除し、競合他社の競争機会を妨げていると指摘しています。一方、Googleは、これを非常に過激な見解だと言っています。

[リア・ナイレン](Bloomberg)
 Googleは、「裁判官が違法と判断したのは特定の契約であって、司法省はその契約に焦点を当てるべきだ」と主張しています。司法省が提案している措置は、それらの契約をはるかに超えるものであり、会社の分割や、Chromeの売却といった内容が含まれています。特にChromeに関しては、Googleが所有するブラウザであり、裁判の中心的な争点ではなかったため、Googleはこれらの救済措置、特に分割に対して強く反発しています。
 もう一つの論点として、司法省はAIが非常に大きな問題であるとしています。Googleが検索結果の生成に使用するデータは、AI製品の開発にも使われているため、検索市場における違法行為からAI市場で利益を得るべきではないという立場です。そのため、AI分野での制限を設けることを求めています。しかし、Googleは「今回の議論は検索に関するものであり、AIは別の分野だ」として、この分野での制限を設けることに反対しています。来年、裁判官がこれらの問題についてどのように判断するかが注目されます。



(2)ディスカッション


[リア・ナイレン](Bloomberg)
 
Googleに対してChromeやAndroid、またはPlayを売却させるような措置を取らせる可能性があるとされています。特にAndroidの場合は、AndroidとPlayの両方を対象にするかもしれません。なぜなら、AndroidはOSであり、Playはそのアプリストアだからです。これは最も厳しい選択肢です。
 中間的な選択肢としては、Googleに対して、検索結果の元となるウェブ上の情報を他の検索エンジンやAIスタートアップと共有させるように強制する案があります。政府は、こうしたデータを他の企業が利用することで、独自のモデルを作成するのに役立つと述べています。
 最も軽い選択肢は、違法と判断された契約を終了させることです。これには、Googleが他の企業、たとえばSamsungやAppleに対して、自社の検索エンジンをデフォルトにするために数十億ドルを支払っていた契約が含まれます。
 これらの選択肢について、正式な要請は11月に提出される予定です。その後、裁判所はGoogleに対して、これがどのようにビジネスに影響するかを尋ねるために、さらなる調査を許可します。そして来年4月にミニトライアルが行われ、来年8月までに判決を下すとしています。このプロセスが完了するまでには、まだ8〜9か月かかる見込みです。

[ケイティ・グライフェルド](Bloomberg)
 確かに注目すべき点がたくさんありますね。さて、今のGoogleの株価に目を向けてみましょう。現在、約2.4%下落しています。今朝の段階ではほぼ変わらずの状態でしたが、今は下げ幅が広がっていますね。この動きの背景について教えてください。もちろん、実際の動きが見えるまでにはまだやるべきことが多いですが、この下落がAlphabetやGoogleにとってどれほどの影響を与えるのでしょうか?

[マンディープ・シン](Bloomberg)
 提案されている救済策の中には、AndroidやChromeブラウザといった事業の強制売却がありますが、正直なところ、それが実現する可能性は極めて低いと思います。なぜなら、Googleの運営方法を考えると、YouTubeやブラウザ、クラウドビジネスなどがすべて共通のインフラで支えられているため、そこから一つの事業を切り離すのは非常に難しいからです。
 また、別の訴訟としては、アドテク事業に関する反トラスト法の訴訟が進行中です。

[マット・ミラー](Bloomberg)
 本当に多くの訴訟が進行していますね。アドテク市場に関する訴訟があり、いくつかの州はブラウザに関して訴訟を起こしています。もちろん、EUも関与していて、特にマルグレーテ・ベスタガー氏(欧州委員会の競争政策担当委員でEUにおける競争政策の主要人物)が年末までに判断を下す予定です。彼女は「分割することが唯一の解決策だ」とまで言っています。他にもいくつかの訴訟が進行中ですが、すべてを挙げるときりがないほどです。

[マンディープ・シン](Bloomberg)
 共通の指摘事項は、特にアドテクに関するものです。ここでは、Googleがサプライサイドの広告プラットフォーム、デマンドプラットフォームの市場をすべて有しており、さらに価格面での優位性を持つ点が問題視されています。これは、2007年に買収したDoubleClickに端を発するもので、元々自社でゼロから構築したものではなく、買収によって得た事業を徐々に強化してきたものです。
 AndroidやYouTubeも同様に、買収された後にチューニングされてきましたが、その中でもアドテクの問題が最も説得力のある事案だと思います。他の救済策と比べても、特に強く主張できる分野です。一方で、Androidやその他の製品を売却するというのは考えにくいです。これらはGoogleの大規模言語モデル戦略にとっても不可欠なものであり、まさに将来の中核を担うものですから。

[マット・ミラー](Bloomberg)
 リア、どう思いますか?まず、アメリカで大企業の分割が行われたのは、私たちが生まれる前のことです。AT&Tが解体されて以来、大きな分割はありません。そして、今回の件は国家安全保障の問題でもあります。グーグルは検索で圧倒的なシェアを持っているだけでなく、米国のグーグルが世界中でも支配的な立場にあるのです。これまでの取材で『グーグルはチャンピオンだし、どうやって分割するんだい?』と言っている人に会ったことはありますか?

[リア・ナイレン](Bloomberg)
 その点はGoogleが主張している点です。「分割することで競争力が低下し、特に中国に対して不利になる可能性がある」と主張しています。但し、反トラスト法の執行者たちはこの主張にあまり納得していません。彼らは「米国のチャンピオン企業だから支援すべき」という考え方を好まず、むしろ米国の競争政策は「競争する企業が多ければ多いほど、消費者や他のビジネスにとってより良い製品やサービスが生まれる」という理念に基づいています。そのため、たとえGoogleの競争力が少し低下することになっても、「他の企業が台頭することが重要だ」というのが彼らの立場です。



(3)元FTC委員へのインタビュー


[マディソン・ミルズ](Yahoo finance)
 
グーグルの解体の可能性が浮上しています。米司法省(DOJ)は、検索エンジン市場での競争が健全でないことを理由に、会社の分割を検討しています。DOJは訴状の中で、「ChromeやPlay、Androidなどの製品を利用してGoogle検索を有利にすることを防ぐため、行動的で構造的な措置(behavioral and structural remedies)を検討している」と述べています。これに対しGoogleは、政府は、消費者、企業、そして米国の競争力に意図しない重大な結果とともに多くの産業や製品に影響を与える包括的なアジェンダの追求している可能性がある、と反論しています。
 
 この問題について議論するため、元FTC(連邦取引委員会)委員のモゼル・トンプソンさんにお越しいただきました。モゼルさん、本件が市場にどのような影響を及ぼすのかについてお聞かせいただけますか?

[モーゼル・トンプソン](元FTC委員)
 最初にお伝えしたいのは、どうやっても時間がかかってしまうということです。現在は裁判の第2段階、いわゆる救済措置の検討フェーズに入っています。すでに裁判所は、Googleが独占企業であり、競争を阻害する行為を行ったと判断しています。そして今は、その行為による問題を解決するための具体的な措置が何かを議論する段階です。このようなケースでは、通常かなりの時間がかかります。長い期間というのは、1年や3年、場合によってはもっとかかることもあります。マイクロソフトの過去の事例を思い出しても、非常に長い年月がかかっています。ですので、市場が理解すべきなのは、その間にも市場やイノベーションは前進し続けるということです。

[シーナ・スミス](Yahoo finance)
 最も可能性の高い結果は何でしょうか?

[モーゼル・トンプソン](元FTC委員)
 それは難しい問題です。解体というのは簡単なことではありませんし、極めて稀な救済措置といえます。実際、このような手段がとられることはほとんどありません。過去を振り返ると、数十年前のマイクロソフトの事例や1984年のAT&Tの合意解体がありましたが、それらが市場での支配力にどれほど効果的だったかについては、今でも疑問が残っています。ですから、投資家が理解すべきなのは、このプロセスに時間がかかる一方で、競争が同時に進行しているということです。Googleは長年にわたって検索分野で支配的な地位にありましたが、ここ最近では人工知能、つまりAIの急速な発展があり、AIの普及によって、人々はGoogleに頼らずにウェブを検索し、情報を得る代替手段を持つことができるようになっています。

[マディソン・ミルズ](Yahoo finance)
 つまり、AIブームがある意味でDOJの役割を果たしていると言えるのでしょうか?

[モーゼル・トンプソン](元FTC委員)
 これは一つのチャンスであり、注目すべき点の一つです。こうした裁判の課題の一つは、すでに起こった事実を扱う一方で、反トラスト法の観点からは将来を見据えた対応が求められることにあります。しかしながら、将来を予測するのは難しいものであり、その間にも市場は進化し、イノベーションは進みます。そのため、裁判所が決定する救済措置が、実際に文書化される時点で時代遅れになっている可能性が常にあるのです。




(5)オリジナル・コンテンツ

 オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご視聴になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。

(1)現状と今後スケジュール

Bloomberg Technologyより
(Original Published date : 2024/10/09 EST)

[出演]
  Bloomberg
    キャロライン・ハイド(Caroline Hyde)
    エド・ラドロー(Ed Ludlow)
    リア・ナイレン(Leah Nylen)

(2)元FTC委員へのインタビュー

Yahoo Financeより
(Original Published date : 2024/10/09 EST)

[出演]
  元連邦取引委員会委員
    モーゼル・トンプソン(Mozelle Thompson)

  Yahoo finance
    シーナ・スミス(Seana Smith)
    マディソン・ミルズ(Mady Mills)



(4)関連コンテンツ>





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だうじょん


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