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FOMC政策金利発表(2024/12):市場に将来の利上げを想起させる内容
FRBは、現地2024年12月18日のFOMCでの検討を踏まえ、市場が事前予想していた通り、25ベーシスポイントの利下げを行うことを発表しました。こにより、FF金利の目標レンジは4.25%~4.50%となり、9月から3回連続の利下げによって、都合100ベーシスポイントの利下げが実施されることとなりました。
FRBは、インフレは2%の目標に向けて進展しているものの、依然としてやや高い状態にあり、労働市場の状況も概ね緩和されていると判断しているとのことです。また経済予測サマリ(SEP)の中で示される今後の金利見通しについては、2025年にさらに2回の利下げが見込んでいることが示されています。
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尚、この発表内容は、概ね市場の事前予想通りでありましたが、それでも株式市場は下落。ダウが2.58%、S&P500が2.95%、ナスダックが3.56%とそれぞれ下落。10年物米国債利回りは4.516%に上昇し、ドルインデックスが上昇して、ドル円も154.81円と150円直前まで上昇しています。
このFOMCの発表を受けた直後の業界関係者の声を以下のCNBCのコンテンツを通じて紹介したいと思います。この発表を受けた各メンバーからは、概ね以下のような見解が示されています。ご参考下さい。
利下げペースのダウンについては、慎重な緩和政策をFRBは採用し、経済の安定を図る意向を示したとし、今回の変更はインフレリスクの上昇や失業率のリスク軽減と関係しているとの見解
FRBの完全雇用と物価安定の使命に基づき、失業率の急上昇を避けることが重要視され、失業率を約4.2%で維持する意図が政策に反映されているとの見解
市場は「タカ派的」と捉えて幾分の失望感が見うけられる。これは、FRBが新政権からの政治的圧力を回避しつつ、経済状況の悪化を防ぐため慎重なアプローチを取っているとの見解
経済と金融市場の中立金利が異なる可能性があるとし、長期的にはインフレは低下傾向にあるが、金融市場の過熱を抑える意図があるとの見解。
FRBの独立性に立脚し、今後の金融政策変更が市場や経済、そして新政権に与える影響を慎重に評価した上で慎重なメッセージが採用されているとの見解
1. ディスカッション
[タイラー・マティセン](CNBC Television)
デイビッドさん、どうやらかなりうまくいったようですね。あなたは、来年は4回から2回の利下げになるとおっしゃっていましたが、それがまさに今回発表された内容のとおりですね。
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[デヴィッド・ケリー](JPMorgan Asset Management)
ええ、まったく驚きませんでした。彼らが目指しているのは、来年、金融緩和をより慎重に進められるような基盤を整えることだと思います。今はちょうど政権交代の狭間で、ある種の停滞期にあるように感じますが、いずれ政権からもっと緩和的な方針を求められる圧力がかかる場面もあるでしょう。そのため、彼らは「これが私たちの方針です」という明確なメッセージを出し、来年や2026年に政権との衝突を避けたり、先延ばししたりしようとしているのだと思います。
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[タイラー・マティセン](CNBC Television)
ステファニーさん、どうお考えですか?
[ステファニー・ロス](Wolfe Research)
そうですね、今回の発表を受けて金利は少し動きましたが、市場が求めていたのは、FRBが利下げペースを緩める方向性を示すことでした。そして、確かにそれが示されました。重要なのは、経済見通しの要約の12ページを見るとわかるのですが、インフレに関するリスクが今回は上振れ方向に傾いている点です。前回のFOMCでは、インフレリスクはもう少し中立的な位置にありました。また、失業率に関するリスクについても、以前はかなり上振れリスクが大きいとされていましたが、今回はよりバランスが取れた状態になっています。このリスクの変化が明確になったことで、今後数年にわたり、利下げペースをさらに緩めていく可能性が高いと考えられます。
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[タイラー・マティセン](CNBC Television)
ジム・キャロンさん、ステファニーさんが言及したように、FRBの2つの使命(Dual Mandate)における両側のリスクについてどうお考えですか?
[ジム・キャロン](Morgan Stanley Investment Management)
そうですね、ポイントとしては、やはり失業率が重要な要素だと思います。FRBの2つの使命は、完全雇用と物価の安定を達成することです。今回、利下げペースを緩めながらも引き続き利下げを進めている背景には、リスク管理の観点があると考えます。特に、金融政策が長期間引き締めすぎると失業率が急上昇するリスクを懸念しているのではないでしょうか。そのため、今回の利下げペースや方向性には、失業率を一定の4.2%程度に維持しようとする意図が見られます。失業率が上昇し始めると、市場に与える悪影響がさらに大きくなる可能性があるため、それを未然に防ぐための措置だと思います。
ただし、ここで重要なのは、市場が常に物事を次のステップとして捉えることです。現在は利下げのペースが遅くなっていますが、その次に停止が来るだろうと予測され、さらには2026年のどこかで利上げを織り込み始める可能性もあります。まだその段階には至っていませんが、そうしたシナリオが市場に与える悪影響も考慮する必要があります。結局のところ、今回の政策は雇用市場を念頭に置いたリスク管理の一環であるというのが私の見解です。
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[ケリー・エヴァンス](CNBC Television)
デイビッドさん、この決定に対する市場の反応を見ると、少し失望が見られるようです。市場はもともとタカ派的な利下げを予想していたとはいえ、今回の内容がそれ以上にタカ派的だった可能性があります。この反応の要因は、予想していた3回の利下げではなく、4回から2回に変更されたことなのでしょうか? 今後注目すべきポイントについて、どうお考えでしょうか?
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[デヴィッド・ケリー](JPMorgan Asset Management)
そうですね、ここでは行間を読む必要があります。FRBとしては、ワシントンの政治サイドと金融政策をめぐって対立することは避けたいと考えていると思います。しかし、経済見通しを見ると、ここから先の利下げについて非常に慎重な姿勢を取るべきだと示されています。
彼らの最大の懸念は、利下げを進めすぎた結果として生まれる経済状況に利上げが必要となる一方で、政権側からは利上げを避けるよう圧力をかけられることだと思います。FRBは独立性を重視しているので、このプロセスを円滑に進めたいと考えているはずです。独立性を守るための戦いを避けたいという意向があるため、必要以上に利下げを進めることに慎重になっているのではないでしょうか。それが、再び利上げを迫られるリスクを懸念している理由だと思います。
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[ケリー・エヴァンス](CNBC Television)
デイビッドさん、実際にどれくらいのメンバーが利上げを本当に望んでいるのかは疑問です。むしろ、制度的に見ても、FRBは利下げの方向に傾いているのではないでしょうか。政策がまだ引き締め的であるというのは、経済学の文献でも示されていますし、その点について多くのメンバーが説得されているように感じます。
[デヴィッド・ケリー](JPMorgan Asset Management)
そうですね、今の世界は「2つの中立金利(Rスター)」の時代だと言えると思います。1つは経済のための中立金利で、もう一つは金融市場のための中立金利です。経済に関して言えば、長期的にはインフレは下がる可能性が高いでしょう。なぜなら、これはインフレを起こしやすい経済ではないからです。しかし、金融市場に目を向けると、現在はバブルや過剰な熱気が多く見られます。その観点からすると、金融市場における金利は決して高すぎるとは言えないかもしれません。
また、FRBとしては、今の時点で市場のさらなる投機を助長するようなことは避けたいと考えていると思います。そのため、単に経済だけでなく、金融市場全体を慎重に見据える必要があるのでしょう。こうしたバランスが、現在の政策判断の背景にあるのだと思います。
2. オリジナル・コンテンツ
オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご覧になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。
CNBC Televisionより
(Original Published date : 2024/12/18 EST)
[出演]
JPMorgan Asset Management
デヴィッド・ケリー(David Kelly)
Wolfe Research
ステファニー・ロス(Stephanie Roth)
Morgan Stanley Investment Management
ジム・キャロン(Jim Caron)
CNBC Television
タイラー・マティセン(Tyler Mathisen)
ケリー・エヴァンス(Kelly Evans)
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だうじょん
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