来週のFOMCドットプロット:予測される事態よりも遥かに楽観的なものになるリスクに注意
2024年12月13日、元ニューヨーク連銀総裁のウィリアム・ダドリー氏を迎えてのBloombergのインタビュー内容を紹介します。
来週開催予定のFOMC後に発表される政策金利について、市場では25ベーシスポイントの利下げがほぼ確実視されていますが、このインタビューでは、同時に公表される経済見通し(SEP、Summary of Economic Projections)について、FRBがその策定に際して織り込める要素と織り込めない要素、そしてそれらの影響を踏まえる上での留意事項が示されました。
ダドリー氏は、FRBが政策立案の前提として減税措置の延長を考慮する可能性がある一方で、トランプ政権が掲げる関税や移民政策といった不確実性の高い要素やその経済的影響を予測に組み込むことは困難であると指摘しています。また、ドット・プロットの有用性に関しては、重要な経済要素が十分に反映されていないことから、予測が楽観的に傾きやすいリスクがあると述べました。また「中立金利」についても言及し、現在の想定よりも高くなる可能性があり、過度な金融緩和は必ずしも必要ではないとの見解を示しています。ご参考下さい。
1. インタビュー
[キャロライン・ハイド](Bloomberg)
FRBが2025年までのドットプロットを作成する際、政策の背景について何らかの仮定をしないで進めることは難しいと思われますが、そのことについてお伺いします。
[ウィリアム・ダドリー](前NY連銀総裁)
彼らは2017年の減税措置が延長されると仮定するのではないかと思います。前回の記者会見でパウエル議長が言った「我々はみな、推測し、憶測し、仮定する」という言葉ですが、それは実際には2016年12月の発言と矛盾していると感じます。当時は、最初のトランプ政権によって実施されると予想された財政政策の刺激策を見込んだ予測を立てていたからです。ですので、規模が大きく、可能性が高く、ある程度明確で、金融市場に織り込まれている場合には、それを前提としなければならないのではないでしょうか。そして、それは減税措置の延長には当てはまると思います。しかし、関税や移民政策については、現時点ではその政策が実際にどうなるのか非常に不確実であるため、同じことは言えないと思います。
[キャロライン・ハイド](Bloomberg)
そういった意味では、他の政策よりも税制改革を注視する方が、インフレや経済成長に矛盾する影響を与える可能性のある政策よりも重要だとお考えですか?
[ウィリアム・ダドリー](前NY連銀総裁)
関税に関する本当の問題は、その規模がどれほど大きいのか、どれくらいの期間続くのか、報復措置や追放があるのかどうかがわからない点だと思います。プログラムの規模や進行の速さが不明であるため、その影響を予測に組み込むのは非常に難しいのです。その一方で、減税措置の仮定は予測に含まれるでしょうが、それ以外の要素は含まれないのではないかと思います。
[リサ・アブラモヴィッチ](Bloomberg)
関税に関してですが、2018年9月のオランダ、ティルバーグで行われた会議では、トランプ政権の初期段階において関税を一時的な脅威として捉えていたという話がありました。この評価については同意されますか?そして、現在のFOMCに対してもその見解は妥当だと思われますか?
[ウィリアム・ダドリー](前NY連銀総裁)
関税については、まだ仮定を立てていないのではないかと思います。それは、次政権が何をするのかがまだはっきりとわからないからです。ただ、大きな違いとして挙げられるのは、最初のトランプ政権時代に導入された関税が比較的小規模だったという点です。当時、輸入品に対する総関税率は輸入額の1.5%から3%に増加したに過ぎません。しかし、現在は、より大きな数字が話題に上っています。中国に対して10%、20%、あるいは60%といった規模の関税を検討しているようです。このように大幅に増える可能性はありますが、それが単なる脅しなのか、実際に具体的な政策として実行されるのかは、まだ確信を持つことはできません。
[ダニ・バーガー](Bloomberg)
要するに、税制改革を取り入れた一方で、トランプ政権の今後の重要政策である移民政策や関税政策という2つの柱が抜け落ちているように見えます。不躾だと思われるかもしれませんが、今回のドットプロットは果たして有用と言えるのでしょうか?
[ウィリアム・ダドリー](前NY連銀総裁)
ドットについての問題は、予測が異常に楽観的なものになってしまうことだと思います。それは、成長やインフレ、生産性に大きく影響を与え得る、より議論の余地がある経済政策が加味されないためです。例えば、高関税や違法移民追放政策は経済に混乱をもたらします。それによってインフレが上昇し、成長が低下するでしょう。しかし、こうした要素は予測に反映されていないのです。
[キャロライン・ハイド](Bloomberg)
現時点で、ビルさんの基本的な見立てとしては、2025年の利下げプロセスにおいて、どのように一時停止や調整を伴うことになると考えていますか?
[ウィリアム・ダドリー](前NY連銀総裁)
いくつかの方法で進められると思います。まず1つ目は、2025年に予定されている利下げの回数が前回より減少することです。9月の時点では、2025年に25ベーシスポイントの利下げが4回予定されていましたが、今回は2回か3回になるでしょう。次に、インフレがやや粘り強いことや経済が非常に好調であることについて言及すると思います。その結果、いわゆる中立金利“R-STAR“の見積もりが上方修正される可能性が高いです。これらを総合すると、1月が利下げを一時停止するタイミングとなることがかなり明確になるでしょう。市場でもその見通しが反映されていて、12月の利下げは確実視されており、1月の停止もほぼ確実だと見られています。
[キャロライン・ハイド](Bloomberg)
それでは、ビルさんご自身がもしFOMCのメンバーだった場合、どのようなドットを示されますか?来年に注目するポイントや、インフレと経済の弱さのどちらをより懸念されるかについてお聞かせください。
[ウィリアム・ダドリー](前NY連銀総裁)
私が委員会のコンセンサスと大きく異なる可能性がある点は、R-STARに関する見解だと思います。現在、R-STARの中央値は2.9%とされています。つまり、FRBはFF金利が2025年ではなく2026年から2027年にかけて2.9%になると示しています。しかし、私ならR-STARをもう少し高めに見積もるでしょう。おそらく3.5%程度、あるいはもう少し高い値になるかもしれません。そのため、私の見解では、FRBが想定するほどの累積的な金融緩和は必要ないと考えています。
[キャロライン・ハイド](Bloomberg)
市場の見方としても、現在はその方向に近いのではないかと感じますね。
[ウィリアム・ダドリー](前NY連銀総裁)
おっしゃる通りです。
2. オリジナル・コンテンツ
オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご覧になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。
Bloomberg Televisionより
(Original Published date : 2024/12/13 EST)
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だうじょん
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