
NVIDIA株価の再度下落要因 「蒸留(distillation)は容易に優れたモデル改良を促す」: DeepSeekを超えるAlibaba。すでに賽は投げられている。
昨日29日の米国株式相場ですが、DeepSeekの話に関係した情報が、またまたNVIDIAの株価を下げました。(※相場が明けてからクローズまで4.1%下落。アフターで1.65%程度戻しています)
多く人々が、DeepSeek vs. OpenAIといった単純な比較やDeepSeek の性能論で本件を語っています。また、OpenAIのデータの不正入手の調査が入っている、など、本件については、一定の進展や解決に向かっていると見えなくもありませんが、そうとも言えない現実がテクノロジーの世界では起こるものです。
今回は、「蒸留」(Distillation)という以前より存在している機械学習のテクニックがキーポイントとなります。
CNBCがあらためてザックリ理解のためのコンテンツを共有してくれていますので、以下に紹介します。

「蒸留」一般についての参考情報(IBM)
1. インタビュー&ディスカッション
[ケリー・エヴァンス](CNBC)
NVIDIAが再び話題になっています。今日は「注目の銘柄」となっていますが、現在株価は6%以上下落しています。ついさっきの新しい報道によると、ホワイトハウスが中国向けの販売に対して規制を強化することを検討しているようです。この動きは、AI関連の取引がDeepSeek後の市場で足場を固めようとする中でのことです。また、インターネット大手のアリババが新しいAIモデルを発表し、その性能がDeepSeek V3を上回ると主張しています。
この急速に変化するAI競争について、ディアドラ・ボサさんに詳しく話を聞いてみましょう。しかし、ディアドラ、今日のワシントン発のこのニュースは、結局のところ、政府がNVIDIAの中国での事業をどこまで制限するかが重要なポイントだということを改めて示していますよね。

[ディアドラ・ボサ](CNBC)
そうですね、具体的に何が変わるかの詳細はわかりませんが、前回の輸出規制とは違う形になるべきでしょう。前回の規制は効果があったとはいえ、逆に裏目に出た部分もありました。その結果生まれたのがDeepSeekです。この流れ全体が示すのは、今がまさに「DeepSeek後のAI競争時代」だということです。DeepSeekの登場は非常に大きな転換点であり、これまでの勝者だったOpenAIやマイクロソフトが、敗者のように振る舞っている状況です。OpenAIがDeepSeekに対して「OpenAIのデータを使った」と批判するのは、まさにブーメランです。OpenAIがChatGPTをインターネット上のデータで訓練したように、DeepSeekも同様に、アップデートされた生成AIデータを用いてモデルを訓練したと考えられます。ただし、DeepSeekはその手法をより効率的に行い、オープンソース化し、さらにその上で革新を加えたのです。その証拠に、オープンソースとして公開された研究論文が存在します。OpenAIがDeepSeekを批判するのは、正直皮肉に聞こえますね。

[カール・クインタニラ](CNBC)
NVIDIAの株価下落の原因のひとつとして、Alibabaが新しいAIモデルを発表し、その性能がDeepSeekV3を上回ると主張している件ですが、この急速に変化するAI競争については、解説してもらえますか? 今度は、Alibabaも加わってきましたね。
[ディアドラ・ボサ](CNBC)
AIの競争では、時に大きな転換点が訪れます。DeepSeekの登場は、数年前にOpenAIのChatGPTがもたらした瞬間と似ています。戦略を大きく塗り替えるほどのブレークスルーでした。現在、MicrosoftやOpenAIが不満を表明し、トランプ政権時代のAI担当官であるデイビッド・サックス氏も、DeepSeekがOpenAIの生成物を使用していると非難していますが、これはもはや手遅れと言えるでしょう。なぜなら、OpenAIがインターネットデータを使ってChatGPTを訓練したのと同様に、DeepSeekも最新の生成AIデータでモデルを訓練し、効率よくそのプロセスを踏襲したからです。

AIモデルの蒸留(機械学習技術)
・より大きなモデルから小さく単純なモデルに知識を転送する
・はるかに小さい計算コストで同等の性能を実現する
・OpenAIがDeepSeekに対し、ChatGPTの出力を利用して訓練したと非難している
この新しいAI競争を一言で表すと「蒸留」(Distillation)です。これは、大規模なAIモデルを小さくしつつ、その学習内容を保ったまま高速化する技術のことです。
そして、DeepSeekはそれをオープンソース化しました。ウォール街が注目すべき新しいキーワードはこの言葉、「蒸留(Distillation)」です。これは、大規模なAIモデルをコンパクトで高速なものに縮小しつつ、重要な学習内容を維持する手法です。今週初めに、DatabricksのCEOであるアリ・ゴドシ氏が私にこう語りました。
これから蒸留(distillation)が至るところで見られるようになるでしょう。実際、すでに進行中です。たとえば、ここ1週間だけでもDeepSeekのさまざまなバージョンが再現され、改良が加えられています。この蒸留によって、大規模言語モデルやAIのレイヤーでの競争がさらに激化することになるでしょう。

[ディアドラ・ボサ](CNBC)
アリババが発表した新しいQuenモデルも、このDeepSeek後の競争の一環です。アリババは、このモデルがDeepSeekのバージョン3を上回ると主張しています。また、アメリカのオープンソースのリーダーであるMetaも間違いなくこの流れに取り組んでいます。DeepSeekの登場によってAI業界の勢力図が再編されつつあり、勝者となるのは、より速くモデルを改良し、それをスリム化し、低コストかつ手軽に利用できるようにする企業です。そのため、今後の輸出規制もこれまでとは異なるアプローチが求められるでしょう。競争の構図そのものが大きく変わってしまったからです。
[ケリー・エヴァンス](CNBC)
今後、さらに厳しい規制がかかるのかもしれません。前回の規制では、「しばらくの間だけ高性能なバージョンの製造を許可する」としていましたが、その後すぐに厳しい制限をかけましたよね。もし、NVIDIAの最先端チップを中国へ一切輸出しない、という方向に進むのであれば、それは大きな影響を及ぼすでしょう。
[ディアドラ・ボサ](CNBC)
ただ、その場合に何が起こるかというと、中国の半導体産業が逆にさらに加速して発展する可能性があります。実際、DeepSeekが推論処理にHuawei製のチップを使っているとの報道もありますよね。中国側は非常にしたたかで、よく知られているように「必要は発明の母」です。中国はこれまでも制限をかいくぐる方法を見つけてきましたし、今後もそれを続けると考えるのが自然です。Perplexityの共同創設者であるアーヴィン・ソバス氏が数週間前に話していたように、DeepSeekに勝つための方法は、彼らを上回るイノベーションを起こし続けることです。制限するのではなく、競争によって打ち勝つべきだということですね。
[ディアドラ・ボサ](CNBC)
Alibabaが発表した新しいQwenモデルは、DeepSeekV3を超えると主張されていますが、これはDeepSeek以降に起きたAI開発の狂騒の一部にすぎません。この競争には、アメリカのオープンソースのリーダーであるMetaも間違いなく参戦しています。こちらは数週間前にPerplexityのアーヴィンド・スード氏が語った内容です。
私は今でも、MetaがDeepSeek V3を上回るモデルを構築し、それをオープンソース化するだろうと考えています。それをLLama-4と呼ぶか、3に関連する名称にするかは重要ではありません。もっと重要なのは、彼らを禁止したり阻止しようとするのではなく、競争して勝利することです。

[ディアドラ・ボサ](CNBC)
これは非常に重要なポイントです。彼は、アメリカは禁止ではなく競争で勝つべきだと言っています。DeepSeek以降、成功の鍵は、他者を妨害するのではなく、より速く、より賢いモデルを構築することにあるのです。ウォール街にとっても重要なのは、素早く反復し、モデルを効率化し、コストを削減しながらアクセス可能にできる企業に注目することかもしれません。そのため、今夜から始まる決算報告や決算シーズンで、この点に耳を傾けることが重要になってきます。
[ケリー・エヴァンス](CNBC)
もっとも、どうなるかは見ていく必要がありますね。では、ディアドラ、ありがとうございました。
2. オリジナル・コンテンツ
オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご覧になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。
CNBC
(Original Published date : 2025/01/29 EST)
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