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明日の雇用統計は、まずまずの内容だが、元々標準誤差は大きいもの。次回FOMCは0.25%の利下げ。

 10月4日にBloombergが行った元ニューヨーク連邦準備銀行総裁のビル・ダドリー氏へのインタビュー・コンテンツの内容を参考訳でお届けします。
明日10/4に雇用統計の発表を控えた状態での現在の米国経済とFRBの金融政策がディスカッション・テーマとなり、大統領選挙と重なる11月のFOMCに向けてFRBがどのような判断と行動を起こすが焦点となっています。

[主なトピックス]

  • 本当に米国経済は着陸に向かっているのか?

  • パンデミックを経た伝統が通じない経済

  • 金融政策の見通しと大統領選挙の影響


 併せてインタビューの中で参照されているダドリー氏のオピニオン記事も是非ご参照ください。

(10/3付 Bloomberg オピニオン記事:クリックしてアクセス)



(1)インタビュー


[ジョナサン・フェロ](Bloomberg)
 
あなたにとって、これまでの数年間は本当に知的で長いものでしたね。このところ、あなたの考え方が少し変わってきた理由を、いくつかのポイントを挙げながら教えてください。今年の夏ごろには、「考えが変わった。今こそFRBは利下げをすべきだ」とおっしゃっていましたし、その前のFOMCの前には、「今は大きく動くべき時だと思うし、FRBはそうするだろう」とも言われていました。そして実際にFRBはその通りに動きました。今朝に出された記事のタイトルは、「私の経済的ハードランディング予想はいかにして外れたか」でしたが、今の状況をどのように捉えていて、この背景でどのような政策が必要だとお考えなのか、教えていただけますか。

[ビル・ダドリー](元ニューヨーク連邦準備銀行総裁)
 私の当初の見解では、FRBは金融引き締めを開始するのが遅れるだろうというものでしたが、これは当たりました。その結果として、インフレが上昇し、労働市場が非常に逼迫するということも予想通りでした。そして、FRBは大幅に金融引き締めを行う必要があるだろうと考え、それも現実となりました。さらに、失業率が少なくとも0.5ポイント上昇してサーム・ルールが発動されるだろうとも予想しましたが、それも起きました。
 しかし、サーム・ルールが発動されたものの、リセッションには結びついてはいないようです。GDPの数字を見ても、最近は非常に堅調です。第2四半期の成長率は3%、第3四半期も2.5%と予測されています。だから、シナリオ自体は正しかったものの、結論としてリセッションに至るかどうかはまだはっきりしません。確定するにはまだ早すぎる段階です。
 そのため、今は労働市場に多くの注目が集まっているのです。そして、直近最後のFOMCの経済予測サマリが興味深かったのは、労働市場に対する下方リスクが、インフレに対する上方リスクよりも大きいと実際に考えていることです。つまり、FRBも同じことを懸念しているわけで、だからこそ、明日の労働市場についての報告が非常に重要なのです。もし労働市場が本格的に悪化し始めると、ソフトランディングのシナリオが疑問視されることになるでしょう。だからこそ、FRBは数週間前に50ベーシスポイントの利下げを行ったのです。

[リサ・アブラモヴィッチ](Bloomberg)
 多くの人が見解を変えたり、どのモデルが実際に正確なのか理解できない状況にいるという点であなたと同じ道を歩んでいると思います。あなたの分析では、なぜ今回が違うと考え、これまで不況を予測してきたトラディショナルな指標が今回通用しないと判断されたのでしょうか?

[ビル・ダドリー](元ニューヨーク連邦準備銀行総裁)
 私は2つの点がこれまでと異なると考えています。まず1つ目は、パンデミック時に企業や家計にたくさんの財の移転があったことです。そのため、ビジネスや家計のバランスシートが、通常の後期の景気サイクルに比べて良好な状態にあります。例えば、家計部門の債務返済コストを見ても、まだかなり低いです。これは、パンデミック中に非常に低い固定金利の住宅ローンで借り入れをした人が多かったからです。
 2つ目に、金融状況が大幅に緩和されていることです。これは、FRBが利下げを行う前からすでに起こっていました。金融状況が最も引き締まっていたのは約1年前で、その後大きく緩和されました。株価は上昇し、債券利回りは低下し、クレジットスプレッドも縮小しました。ですから、短期金利が高い水準にあるため金融政策自体は依然として引き締め気味に見えますが、全体として金融状況はかなり緩和されており、それが経済活動を支えているのです。

[リサ・アブラモヴィッチ](Bloomberg)
 そもそも、私たちは本当に着陸に向かっているのでしょうか?

[ビル・ダドリー](元ニューヨーク連邦準備銀行総裁)
 いい質問ですね。FRBとしては、経済成長を2%から2.5%程度に維持しつつ、失業率も現在の水準で安定させたいと考えていると思います。そして、第3四半期の状況も、その方向に向かっているようです。しかし、この「ナイフの刃の上を歩く」ようなバランスを保つのは難しいでしょう。成長が強すぎればインフレが再燃する恐れがあり、逆に成長が弱すぎれば労働市場が悪化し、リセッションに至る可能性があります。この微妙なバランスを保つのは、非常に難しい局面だと思います。

[リサ・アブラモヴィッチ](Bloomberg)
 明日の見通しについてどう考えていますか?

[ビル・ダドリー](元ニューヨーク連邦準備銀行総裁)
 雇用統計の報告は、まずまずの内容になると思います。推定はおよそ14万人増というところでしょうか、それは妥当な見積もりだと思います。ただ、雇用統計にはかなり大きな標準誤差があることを忘れてはいけません。たとえば、8万人の結果が出ることもあれば、20万人という数字になることもありますが、それだけで経済が本当に勢いを変えたかどうかを確実に示すわけではないんです。

[ジョナサン・フェロ](Bloomberg)
 11月7日のFOMCは、データが不安定であり、さらに選挙の結果がまだ出ていない可能性がある中で、非常に難しいものになると思います。このような状況に直面した過去の例を思い出せますか?

[ビル・ダドリー](元ニューヨーク連邦準備銀行総裁)
 特にぎこちなくなりそうなのが、次回FOMCの直前のブラックアウト期間中に、もう一度雇用統計の発表があることです。現時点では、25ベーシスポイントの利下げが有力だと思います。パウエル議長のスピーチでもそれがほのめかされていましたし、前回のFOMC後の経済予測サマリを見ても、追加の利上げは1回だけを予想しているメンバーが多かったことから、50ベーシスポイントの利上げは可能性が低いでしょう。ですので、まだ基本的なストーリーは変わっていないと思います。つまり、労働市場へのリスクがインフレへのリスクより大きいこと、金融政策は引き締められていること、そして中立金利にはまだ距離があるということです。したがって、私の見解では、25ベーシスポイントの利下げが最も可能性の高いシナリオだと思います。

[リサ・アブラモヴィッチ](Bloomberg)
 ピーターソン研究所アダム・ポーゼンさんが、先ほど出演されていて、FRBは財政赤字や関税が2025年に向けてインフレの圧力となる可能性について、もっと声を上げるべきだと言っていました。これが利下げを抑える理由になるかもしれないという主張です。その点について、特にFRBがそれを公に発表するかどうかはさておき、来年を見据えて慎重になるべきだという意見についてはどう思いますか?

[ビル・ダドリー](元ニューヨーク連邦準備銀行総裁)
 私の経験では、FRBは将来起こるかもしれないこと、もしくは、起こらないかもしれないことを前提として、今日の政策を決めることはないと思います。彼らは、その出来事が実際に起こるか、起こらないかを確認してから行動を起こします。ですから、選挙の結果によって関税が上がるかもしれない、インフレが高まるかもしれない、という懸念材料によって緩和政策を行うのは、あまり現実的ではないと思います。そうした理由でFRBが政策を見送ることはないでしょう。




(2)オリジナル・コンテンツ

 オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご視聴になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。

Bloomberg Televisionより
(Original Published date : 2024/10/03 EST)

[出演]
  元ニューヨーク連邦準備銀行総裁
    ビル・ダドリー(Bill Dudley)

  Bloomberg
    ジョナサン・フェロ(Jonathan Ferro)
    リサ・アブラモヴィッチ(Lisa Abramowicz)

<関連コンテンツ>



以上です。


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だうじょん


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