収益予想のハードルが下がる中、注目は大型の景気循環銘柄へ
株式市場全体を俯瞰して、マーケットの好転して以来、概ね良好に推移し、様々なセクターの底上げが続いている状況かと思います。
今回の投稿では、モルガン・スタンレーのアナリストとブラックロックのアナリストが、それぞれの市場分析を通じて類似した見解を示していましたので、マーケットの現状認識のひとつのサンプルとして、彼らのコメントを紹介したいと思います。1つはモルガン・スタンレーのポッドキャストから、もう1つはBloombergのコンテンツからの引用です。
両方ともに米国10月14日にリリースされた直近のコンテンツとなります。ご参考下さい。
[両氏見解のサマリ]
モルガンスタンレーのマイク・ウィルソン氏
9月の強い雇用統計と来年に向けたFRBの利下げ予測を背景に、ディフェンシブ銘柄の利益確定、そして景気循環銘柄、特に工業株や金融株、エネルギー銘柄を推奨。特に金融株は資本市場活動の回復や自社株買いの加速により注目すべきとしています。金利上昇がこれら循環株に有利に働く一方で、ディフェンシブ株には逆風が吹くとの見方。市場では、マグニフィセント・セブンのパフォーマンスが低迷しているため、景気循環銘柄が相対的に優位に立っているも、決算シーズンの結果次第で再び大型銘柄がリーダーシップを握る可能性もあり、全体として、今後のマクロ経済データ次第となるが、景気循環銘柄の強気シナリオが続くとの見解を示しています。ブラックロックのガルギ・チャウドゥリー氏
決算シーズンが始まり、その決算結果に注目。特定のセクターに限らず収益の拡大が広がる可能性に着目。特にテクノロジー株を中心とするマグニフィセント・セブンと他の企業の収益差が縮小しつつあることから、医療や公益事業などのセクターの成長に期待。特に大型バリュー株を推奨とする一方で、小型株の成長には、利下げに加え、経済全体の成長加速が必要であるとし、小型株が大型株を上回る可能性は低く、様子見としています。
(1)市場は景気循環セクターへ(Morgan Stanley)
モルガン・スタンレーのCIO(Chief Investment Officer)、米国株式のチーフストラテジストであるマイク・ウィルソン(Mike Wilson)氏のポートフォリオ見直しについての見解です。
[マイク・ウィルソン](モルガン・スタンレー)
先週の月曜日、我々はディフェンシブ銘柄の利益確定を行った後、景気循環銘柄をディフェンシブ銘柄に対して格上げしました。この決定は、9月の強い雇用統計と、来年に向けてFRBが利下げを行うという我々のエコノミストの予測を背景にしています。特に、この強い雇用統計は、夏に見られた労働市場の軟調を覆し、ハードランディングのリスクを再度市場に持ち込んでいた状況を逆転させました。そのため、債券やディフェンシブ銘柄が大きくアウトパフォームしていました。要するに、歴史的に好調なパフォーマンスを見せた後、利益を確定するのに適したタイミングだったのです。
実際、これらの改善されたマクロ経済データを受けて、景気循環銘柄のパフォーマンスは向上しています。重要なのは、金利市場もこの動きを確認している点です。多くの場合、金利市場は株式市場よりも長く成長リスクを織り込む傾向があります。しかし、最近の強いデータを受けた金利上昇は、債券市場が成長に対する懸念を一部弱めていることを示しており、我々の景気循環銘柄の格上げに対する自信を強めることにつながっています。さらに、セクターレベルでの景気循環銘柄、具体的には工業株、金融株、エネルギー株のオーバーウエイトは、いずれも金利との正の相関を示しています。これに対して、ディフェンシブ銘柄は金利との負の相関を示しています。
つまり、良好なマクロ経済データは、多くの大型景気循環銘柄にとっては依然としてプラスであり、ディフェンシブ銘柄にとってはマイナスということです。したがって、経済サプライズ指数のさらなる安定が見られれば、金利が上昇しても、質の高い景気循環銘柄の相対的なパフォーマンスを引き続き支えるでしょう。一方で、当社の機関投資家クライアントの間では、景気循環銘柄へのポジションは依然として軽めです。特に金融株において顕著です。我々の見解では、これはチャンスを生む状況です。先週、金融株をオーバーウエイトに格上げした理由は、資本市場活動の回復、2025年に向けた融資成長の改善、バーゼル最終案提案後の自社株買いの加速、そして魅力的な相対バリュエーションに基づいています。
次に、いくつかの大型銀行株が9月中旬にガイダンスを下方修正し、決算シーズンを前に調整していたことも考慮に入れました。先週から始まった決算シーズンの初期の結果では、大型銀行がその引き下げられたハードルをクリアしていることが示されています。一方、ディフェンシブ銘柄やクオリティグロース株へのポジションは引き続き過剰です。これは、マクロ経済の成長が緩やかになると見込んでいるクライアントとの会話とも一致しています。また、S&P500全体の動向に大きな影響を与えるマグニフィセント・セブン銘柄が年末に向けてどう動くかに、多くの投資家が注目しています。
注目すべき点として、このグループは第2四半期の決算シーズン以降、パフォーマンスが低迷しており、最近さらに相対的なパフォーマンスが悪化しました。この7銘柄の中でも、夏以降、新高値をつけたのは一銘柄(メタ)のみで、絶対的にも相対的にもパフォーマンスの幅が狭い状況です。我々の見解では、これが市場の他の分野でパフォーマンスが向上している理由の一つであり、景気循環銘柄への広がりをさらに後押しする要因となる可能性があります。
もちろん、市場が再びマグニフィセント・セブン銘柄に戻れば、我々の景気循環銘柄への格上げに対するリスクとなります。決算シーズンは、このようなローテーションにおいて重要な要素となります。マグニフィセント・セブンのパフォーマンスが低迷している根本的な理由は、昨年の非常に強いペースからの利益成長の減速にあるかもしれません。この低迷が続けば、質の高い景気循環銘柄が引き続き好調を維持するためのさらなる材料となるでしょう。しかし、もしマグニフィセント・セブンの決算見通しが強さを示せば、これらの株は再びアウトパフォームし、第2四半期や2023年全体のように市場のリーダーシップが再び狭まる可能性があります。
(2)大型バリューを推奨。小型株は様子見(BlackRock)
ブラックロックの米州チーフ・インベストメント・アンド・ポートフォリオ・ストラテジストであるガルギ・チャウドゥリー(Gargi Chaudhuri)氏の今後の注目セクターについての見解です。
[ロメイン・ボスティック](Bloomberg)
やはり一番気になるのは、決算シーズンの始まりだと思います。先週、いくつかの大手銀行が比較的好調な数字やコメントを出していましたが、これから他のCEOやCFOからも同じような楽観的な見解が聞けると思いますか?
[ガルギ・チャウドゥリー](ブラックロック)
その質問はまさにタイムリーだと思います。今回の決算シーズンに入るにあたって、まず注目すべき点は、当初の市場の収益成長予想が大幅に引き下げられていたことです。ですので、私がまず注目しているのは、売上や利益の両方で予想を上回る結果がどれだけ続くか、ということです。
次に、決算シーズンを通して期待しているのは、消費者に対する見方がどの程度楽観的に続くかということです。すでに大手銀行からその兆しが少し見えていましたが、それがどこまで持続するかを確認したいと思っています。
そして3つ目に、マーケット全体にとって重要なのは、企業のCFOやCEOが労働力に関してどのように考えているのかという点です。リストラを検討しているのか、それともまったくそのような動きがないのか。また、低金利が設備投資計画にどの程度影響を与えるのかなども気になるところです。ですので、私が注目しているのは、S&Pの数セクターに限られていた収益の拡大が、今年は8~9のセクターに広がっていくかどうか、ということです。
[ロメイン・ボスティック](Bloomberg)
今シーズンの決算が終わる頃には、マグニフィセント・セブンや大手テック株だけに限らない、もっと幅広い話題が生まれる期待感があるということですか?
[ガルギ・チャウドゥリー](ブラックロック)
そうですね、すでにその兆しが少しずつ見え始めていると思います。少なくとも、マーケットが収益成長をどう織り込んでいるかを見る限りでは、その傾向が見えています。マグニフィセント・セブンとその他の493社との間で、収益成長の差が少しずつ縮まっているのがわかります。これは今期だけでなく、次の決算シーズンに向けても同様です。
医療セクターや公益事業、もちろんテクノロジーや「Tech Plus」と呼ばれる分野でも収益成長が見られます。この傾向が今期の終わりまで続いて、次の四半期のガイダンスにおいても良い方向に向かうことを期待しています。
[アリックス・スティール](Bloomberg)
ただ、インデックス全体を見ると、通信サービスとテクノロジーはS&Pの約40%を占めていますよね。だから、マグニフィセント・セブンが期待通りの結果を出さなければ、インデックス全体が上昇するのは難しいんじゃないでしょうか。18%の利益成長で十分だと思いますか?
[ガルギ・チャウドゥリー](ブラックロック)
ここで少しニュアンスを伝えたいのですが、単にテクノロジーや通信サービス、いわゆる「Tech Plus」が不調だというわけではありません。むしろ、他のセクターが上昇しており、そこが期待しているポイントなのです。
先月末に発表した秋の投資戦略でも強調していますが、単にテクノロジーから離れるべきという話ではありません。そうではなく、私たちはテクノロジーと質の高い銘柄がポートフォリオの基盤であり、中心であるべきだと考えています。しかし同時に、長い間見過ごされていた他のセクターにも目を向けるべき時期だと思います。特に8月、9月に少し活気が見え始めたセクターは、年末に向けてさらに期待ができると考えています。
[アリックス・スティール](Bloomberg)
私はいつも指摘しているんですが、中型株の指数が非常に好調で、S&Pと共に次々と最高値を更新している一方で、ラッセル2000は少し遅れを取っている状況です。中小型株は資産配分の中でどのような位置づけになるのでしょうか?
[ガルギ・チャウドゥリー](ブラックロック)
そうですね、利下げサイクルが始まったにもかかわらず、そして現時点で経済成長が引き続き堅調であるにもかかわらず、小型株が大型株を大幅に上回るという予想は、今のところ持っていません。むしろ、今は大型株、特に大型株のバリュー株へのローテーションが、投資家にとって有利な選択肢になると考えています。
小型株の企業が収益成長を遂げるためには、より低金利がバランスシートの強化につながる必要がありますが、まだその状況には至っていません。そのため、小型株が大型株をアウトパフォームするのは難しいと考えています。繰り返しになりますが、これは絶対的なパフォーマンスではなく、相対的なパフォーマンスの話です。小型株が優位に立つのは、まだ少し先のことになりそうです。
[ロメイン・ボスティック](Bloomberg)
その点は理解していますが、それでもやはり、もし市場が織り込んでいる一連の利下げが本当に実行され、遅れはあるにせよ、その時に企業の収益にはもっと大きな影響が出てくると思いますか?
[ガルギ・チャウドゥリー](ブラックロック)
今後、それらのシフトを見始める必要がありますが、その場合は同時に、経済成長がただ強いだけでなく、加速していく必要があります。単に実質GDPなどの指標でリセッションを回避するレベルに留まるだけでは十分ではありません。ここから先、経済成長が加速し、同時に金利が低下するという要素と期待が必要です。その結果として、小型銘柄の多くがより強い収益性や利益成長を実現できるようになるのです。
現状、小型株指数の約40%が、まだ利益を出せておらず、収益成長がマイナスであることはわかっています。ですので、もしこれらの条件が整えば、もちろんIWMやその投資機会についてぜひお話ししたいと思います。しかし、現時点ではまだその時期ではないと考えています。
(3)オリジナル・コンテンツ
オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご覧になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。
(1)市場は景気循環セクターへ(Morgan Stanley)
Morgan Stanley
(Original Published Data : 2024/10/14 EST)
(2)大型バリューを推奨。小型株は様子見(BlackRock)
Bloomberg Television
(Original Published Data : 2024/10/14 EST)
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だうじょん
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