[雇用統計を前にして]米国雇用の強弱と従業員の燃え尽き症候群(9/5)
まさに天下分け目といっても良い雇用統計発表がついに明日に迫っています。市場の予測は、時給の伸びが落ち着きつつある中、FRBと市場の関心は、雇用に向かっている一方、過去4ヶ月のうち、2回は、雇用増加が12万人以下にとどまっています。
昨夜発表されたADPの民間データでは、8月の追加雇用はわずか99,000件で、前月の111,000件やコンセンサスの150,000件を下回り、2021年1月以来の低水準となりました。一方、週次の新規失業保険申請件数は227,000件で、予想の236,000件を下回り、継続受給件数は3年ぶりの高水準に近い183万8,000件となっています。この様に全体感として雇用鈍化に向かっている感は拭えない一方で、出て来るデータは、まちまちというが昨今の状況です。
この投稿では、そのような中で行われた、労働市場の現状や従業員の意識、雇用の動向について、Glassdoor社のエコノミスト、ダニエル・ザオ氏とのインタビュー内容をご紹介します。インタビューでは、労働市場の減速傾向や、従業員の間で増加している燃え尽き症候群について触れられており、また、解雇の件数は多くないものの、再就職やキャリアアップが以前よりも難しくなっているという企業現場の課題が指摘されています。
尚、Glassdoor社は、企業ブランドや転職活動やキャリア構築を支援するための情報をサービス提供する調査会社です。一般に知られる調査アウトプットとしては、「働きがいのある企業ランキング(Glassdoor Best Places to Work)」や「給与レポート」(Glassdoor Salary Reports)、また今回のインタビューにもあがっている「雇用者信頼感調査(Glassdoor Employment Confidence Survey)」などが挙げられます。
(1)インタビュー
[ブラッド・スミス](Yahoo finance)
最新の労働市場データを受けて、経済の弱さに対する懸念がさらに高まってきています。投資家たちは、金利引き下げの可能性が固まることを期待して、金曜日の雇用統計に注目しています。こうした状況の中、本日はGlassdoorの主任エコノミスト兼データサイエンスのシニアマネージャーであるダニエル・ジャオさんにお話を伺います。
ダニエルさん、おはようございます。いつも貴重なご意見をありがとうございます。まず最初に、今回のデータ、特にADPの民間雇用者数に関する数値についてお聞かせください。8月には99,000件の雇用が増加しましたが、これは2001年以来の低水準です。まさに2000年代初期を彷彿とさせます。この数字をどう捉えていらっしゃいますか?また、今週発表される雇用関連のデータをFRBはどのように解釈するとお考えですか?
[ダニエル・ザオ](Glassdoor)
労働市場データは全体的に見ることが大切だと思います。確かにデータに変動があり、特にJOLTS求人件数は、やや回復したものの、全体的な傾向としては労働市場が冷え込みが進み、軟化しているように感じます。さらに、一部のデータがより弱いことが示されているのは、FRBがソフトランディングを目指す中で、誤差の余地が非常に限定されていることを示しています。
[マディソン・ミルズ](Yahoo finance)
Glassdoorのデータから見ても、労働市場が減速しているかどうかは非常に微妙なところです。経済のスローダウンなのか、それとも歓迎される冷却のサインなのか、まさに瀬戸際に立っている状況だと思います。求人件数の減少や企業の採用活動の鈍化といった兆候が見られる一方で、完全に停滞しているわけではありません。市場が依然として冷静に調整されているのか、それともより深刻な懸念材料なのかを判断するのは難しい局面です。
[ダニエル・ザオ](Glassdoor)
全体的に見ると、労働市場は冷え込みつつあります。そこで問題となるのは、行き過ぎてしまったのではないかという点です。
従業員の視点から見ると、従業員の意識は依然として非常に弱い状態にあります。例えば、Glassdoorの従業員信頼感指数(Glassdoor Employee Confidence Index)を見ると、年初よりは少し改善していますが、パンデミック前の水準にはまだ遠く及びません。自分の働く企業に対して明るい見通しを持っているのは、従業員の半数未満に留まっており、この厳しい状況にあると言えます。さらに、過去4年間、従業員は次々と危機に直面してきました。データによると、「燃え尽き症候群」は過去最高レベルに達しています。つまり、現場で働く従業員たちが、今大きなストレスを感じていることがよく分かります。
[ブラッド・スミス](Yahoo finance)
全体的な雇用状況を踏まえて、どこに強さや弱さがあるかについてですが、今週のISM製造業指数のデータで、その一部がすでに見え始めています。最近のADP報告でも、製造業で約8,000人の雇用減が見られるなど、製造業の雇用喪失と直接関連していることがわかります。ここで、他の分野にも弱さが現れてくると予想されるかと思いますが、他のどのような分野が挙げられるでしょうか?
[ダニエル・ザオ](Glassdoor)
JOLTSレポートに戻ると、採用率に注目すると面白いことがわかります。例えば、コンサルティングや一部のテック企業などを含む「専門職・ビジネスサービス」部門の採用率は、2008年のリセッション時とほぼ同じ水準にあるんです。これをJOLTSレポートで見たときには本当に驚きましたが、経済全体で見ても、今の採用状況が非常に低調であることを強調していると思います。経済全体では、2010年代半ばの状況と比較できるほどで、これがまさに、現在の従業員や労働者がストレスを感じている理由でもあります。解雇が歴史的に見て極端に多いわけではないものの、一度解雇された人たちが再び職を得るのが難しく、職に就いている人たちも社内外でキャリアアップの機会を見つけにくくなっているんです。
[マディソン・ミルズ](Yahoo finance)
労働市場の雰囲気があまり良くないという印象を受けますが、だからといって、9月にFRBが50ベーシスポイントの利下げを行うほど悪い状況なのでしょうか? 25ベーシスポイントか50ベーシスポイントかの判断について、どのような点に注目していますか?
[ダニエル・ザオ](Glassdoor)
まずは明日の雇用統計の結果を確認したいと思っています。前回の数値よりは多少の回復が見られると予想していますが、全体的な傾向としては依然として弱まりつつあります。もし明日のレポートで労働市場が劇的に悪化しているような結果が出た場合には、50ベーシスポイントの利下げも可能性として考えられると思います。ただ、明日多少の回復が見られる場合、基本的には25ベーシスポイントの利下げが妥当だと思っています。
[ブラッド・スミス](Yahoo finance)
先ほど話していた燃え尽き症候群の比率に関して、何か変化が見られますか? また、その変化は世代間や職種ごとにどのように異なっているのか、データから何がわかりますか?
[ダニエル・ザオ](Glassdoor)
良い質問です。確かに、人や業界、職種によって燃え尽き方の感じ方は大きく異なります。たとえば、2021年や2022年に燃え尽き症候群について話されていた内容と、現在の状況はかなり違います。パンデミック初期には、企業が人手不足で、需要が予想以上に高まり、多くの仕事をこなさなければならないという状況が主な焦点でした。今では、むしろリーダーの決断に対する不満が増えています。例えば、人員削減によって人手不足を感じ、その結果、複数人分の仕事をこなしているように感じるケースが多いです。これはマネージャーやリーダー層の優先順位の決定に関係しています。
世代間の違いももちろんありますが、特に今の時期、中間管理職が強いストレスを感じているように見えます。上層部からは、限られたリソースでさらに多くの成果を求められる一方で、部下からはリーダーシップの決断について説明を求められるなど、両方からのプレッシャーを受けているからです。
[ブラッド・スミス](Yahoo finance)
Glassdoorの主任エコノミスト兼データサイエンス部門シニアマネージャーであるダニエル・ジャオさん。いつも貴重な見解をありがとうございます。本日はご参加いただき、感謝いたします。
(2)オリジナル・コンテンツ
オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご覧になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。
Yahoo Financeより
(Original Published date : 2024/09/05 EST)
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だうじょん
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